2021年 7月 31日 (土)

東芝2兆円買収 CVCキャピタルの提案は「混迷」から脱出するチャンスなのか?

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   東芝が、また揺れている。今度は英投資ファンドのCVCキャピタル・パートナーズからの買収提案で、2兆円超の規模といわれる。

   不正会計が発覚して以降、巨額損失を計上して経営が悪化し、事業売却や大型増資などで立て直しを図る一方、大株主である「物言う株主」(CVCとは別の外資系ファンド)との対立が深まっていた。そんな混迷から抜け出す切り札との見方はあるが、安全保障の観点などからハードルは低くない。

  • 東芝、2兆円買収でどうなるのか……
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「物言う株主」に翻弄される東芝

   買収提案は2021年4月7日の日本経済新聞朝刊が1面トップで報じた。筆頭株主である旧村上ファンド系投資ファンドのエフィッシモ・キャピタル・マネージメント(シンガポール)などとの対立が続く東芝の株式を、公開買い付け(TOB)により非公開化。経営判断をスピードアップし、経営再建を進めようという狙いとされる。

   東芝は同日、「買収の提案を受けており、慎重に検討する」と発表した。

   東芝の経営問題の経緯をおさらいしておくと、まず創業140年の節目だった2015年に利益水増しなど不正経理が発覚した。医療機器事業などの売却で凌ごうとしたが、2016年末には米原子力事業の巨額損失が表面化。17年3月期末に2期連続で債務超過に陥るのが必至となり、東証上場廃止の危機に直面したことから、6000億円という巨額の第三者割当増資を実施して、なんとか上場を維持した。

   この増資を引き受けたのがエフィッシモなど「物言う株主」を含む、海外投資ファンドで、外国人の株主比率は2020年5月時点で計約63%にのぼった。

   この間、経営は改善に向かっているとはいえ、21年3月期の営業利益予想は1100億円(前期比15.7%減)、売上高営業利益率は3.6%というように、業績はなお低迷し、増資を引き受けたファンドは経営方針などをめぐり不満を募らせていた。

   そして、20年7月の定時株主総会の運営に疑義ありとするエフィッシモの要求で開かれた21年3月18日の臨時株主総会では、定時株主総会が公正に運営されていたかを社外の弁護士3人が調べて報告するというエフィッシモの提案が可決されるという異例の事態になっている。

   参考リンク:「東芝経営陣の正念場 『物言う株主』が揺さぶる『不利益な議決権行使』の実態解明のゆくえ」(2021年3月27日付 J-CASTニュース 会社ウォッチ)

「買収で非上場化」で他の株主は納得するのか?

   一般的に、非上場化は株主の求める短期的な利益を追うことなく、長期的戦略は立てやすくなるのがメリットとされる。「物言う株主」と対立が先鋭化してきている東芝にとって、CVCの買収提案は「渡りに船」とも見えるところだ。

   他方、いくつか問題もある。

   まず、CVCと東芝の関係だ。東芝の車谷暢昭社長兼最高経営責任者=CEO(元三井住友銀行副頭取)が、東芝に転じる直前の18年3月までCVC日本法人の会長を務めていた。さらに、東芝社外取締役の藤森義明氏はCVC日本法人の現職の最高顧問。特に、車谷氏の取締役再任議案の賛成率が2020年7月総会で57%余りと選任を求めた12人中最低となり、対立の構図は車谷氏vs物言う株主という様相を見せ、次の定時株主総会での車谷氏の再任の可否が今後の焦点の一つになっていた。それだけに、市場では「車谷氏がCVCを引き込んだとみる関係者が多い」(証券アナリスト)との声が聞こえる。

   もう一つは外資規制の問題だ。2020年施行の改正外国為替法で、日本の安全保障上、重要な国内上場企業の株式を海外投資家が取得する際の審査を、従来より厳格化した。中国などを念頭に、日本の技術の海外流出を防ぐ狙いで、東芝も事前の届け出が原則必要な企業に指定されている。審査は財務省と当該業界を所管する官庁が共同で行う。改正による厳格化以前でも、英投資ファンドによる電力卸大手、Jパワー(電源開発)の株買い増し計画が中止させられた例もあり、今回も慎重な審査が行われる。

   これについてCVCは、「官」の資金と組む道を模索しているとされる。政府系ファンドの「産業革新投資機構(JIC)」や政策投資銀行が候補と目され、ほかに、日本の事業会社にも参加を求めることも想定しているという。

   さらに、外為法をクリアしても、物言う株主はじめ株主が簡単にTOBに応じるとは限らない。CVCは1株5000円程度での買い取りを提示しているとされる。報道前の21年3月6日終値3830円に3割程度上乗せした水準で、報道で急騰した7日終値の4530円をも1割程度上回る。ただ、たとえば今も東芝が40%の株式を保有する非上場の半導体大手「キオクシア(旧東芝メモリー)ホールディングス」の時価をどう見積もるかで、東芝自体の評価も大きく変わりうるだけに、「物言う株主」との価格をめぐる攻防は楽観を許さない。

   東芝は利益相反を考慮して、CVCと関係がある(あった)車谷氏と藤森氏を外し、豊原正恭副社長をトップとするチームでCVCの提案を検討していくが、物言う株主はもちろん、一般株主がCVCの買収者としての妥当性や、いずれ提示される価格をどう評価するか。

   なにより、上場維持にこだわって物言う株主が引き受けるのも構わず、大型増資を実施したうえで、その株主と対立すると、新たなファンドによる買収で非上場化するということになれば、一般株主に、どう説明するのだろうか。釈然としない話ではある。(ジャーナリスト 済田経夫)

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