人も企業もすそ野拡大、まだまだ足りない「食品ロス」への取り組み(鷲尾香一)

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   農林水産省と環境省は2018年度の食品ロス量を発表が、前年度比12万トン減の600万トンと、食品ロス量の推計を開始した2012年度以降、最少となったと発表した。

   ただ、世界的にSDGs(持続可能な開発目標)が注目されるなか、食品ロスの削減が十分に進んでいるとは言えない状況だ。

  • 「食品ロス問題」若者ほど知らない……(写真はイメージ)
    「食品ロス問題」若者ほど知らない……(写真はイメージ)
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削減ペース遅く......

   2018年度の食品ロスの量600万トンを国民1人あたりに直すと、1日約130g(茶碗約1杯分のごはん量)に相当する。年間では47kgと年間の1人あたりの米の消費量(約54kg)に近い量のロスが発生している。

   確かに食品ロスの量は、推計を始めた12年度の643万トンから減少した。しかし、7年間で43万トン(年度平均で6万トン程度)の削減でしかなく、大きく削減できているとは言い難い状況だ=表1参照。

   食品ロスの状況を事業別にみると、外食産業が116万トンと最も多い。前年度と比べて11万トンの減少となっているものの、2012年度の119万トンから15年度には133万トンに増加しており、恒常的に減少しているわけではない。

   同様に食品小売業は18年度に66万トンと、前年度比2万トン増加しており、12年度以降の動向でも高止まりが続いている。食品卸業も15年度の18万トンから16年度には16万トンに減少したが、その後は横バイが続いている。

   食品製造業は2012年度の141万トンから18年度には126万トンと15万トン減少したが、前年(17年)度からは5万トンも増えている=表2参照。

   一方、家庭などによる食品ロス量も、2012年度の312万トンから18年度には276万トンと36万トン減少し、年々減少してはいるものの、引き続き高い水準で食品ロスが発生している。

食品ロス問題、若者ほど「知らない」

   2015年には国際連合でSDGsの「持続可能な開発のための2030アジェンダ」が採択された。その一つとして、30年までに小売・消費レベルにおける世界全体の一人当たりの食品廃棄物を半減させることが盛り込まれている。

   国内でも19年に食品ロス削減推進法が施行され、同年7月には「食品循環資源の再生利用等の促進に関する法律」(食品リサイクル法)により、食品関連事業者から発生する事業系食品ロスを、30年度に273万トンに削減する目標を設定している。

   しかし、事業系食品ロスは2012年度の331万トンから18年度でも324万トンとわずか7万トンしか減少していない。30年度の目標273万トンには、遠く及ばない。

   家庭から発生する食品ロスについても、2018年に閣議決定された「第4次循環型社会形成推進基本計画」あるいは、20年3月に閣議決定された「食品ロスの削減に関する基本的な方針」に基づき、30年度に216万トンまで削減する目標を設定しているが、18年度時点で276万トン。あと60万トンと、まだまだ大幅な削減が必要だ。

   消費者庁が18歳以上の男女5000人を対象にした2020年度の「消費者の意識に関する調査」によると、食品ロス問題を「知らない」と回答した人は20.6%(「あまり知らない」13.1%、まったく知らない7.5%)にのぼる。特に20歳代で34.1%、30歳代で33.1%、18~19歳で29.8%と若い世代で知識が乏しいことが明らかになっている。

   食品ロスを減らすための取り組み(複数回答)としては、「残さずに食べる」が69.5%、「冷凍保存を活用する」46.4%、「賞味期限を過ぎてもすぐに捨てるのではなく、自分で食べられるか判断する」44.1%が多かった半面、「取り組んでいることはない」も10.3%にのぼった。

   食品ロスの削減に取り組んでいるとの回答は、2018年度71.0%、19年度76.5%、20年度76.6%と増加基調にはあるものの、増加率は頭打ちとなっている。

   2030年の目標達成に向けては、まだまだ食品ロス問題の周知徹底とともに、取り組む企業と人の拡大が重要になりそうだ。(鷲尾香一)

鷲尾香一(わしお・きょういち)
鷲尾香一(わしお・こういち)
経済ジャーナリスト
元ロイター通信編集委員。外国為替、債券、短期金融、株式の各市場を担当後、財務省、経済産業省、国土交通省、金融庁、検察庁、日本銀行、東京証券取引所などを担当。マクロ経済政策から企業ニュース、政治問題から社会問題まで、さまざまな分野で取材。執筆活動を行っている。
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