2021年 7月 31日 (土)

ソニーが純利益1兆円「複合企業」で稼ぐ力アップ 今後の主力は「娯楽」M&Aにも前のめり

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   ソニーが純利益1兆円企業の仲間入りを果たした。1946年の創業以来初めてで、「1兆円」は過去1年(2020年3月~21年2月決算期)では世界で28社、日本企業では他にトヨタ自動車だけ。さらに過去にさかのぼっても、日本勢では6社目というから「偉業」といえる。

   祖業の家電(電機)の影が薄くなって久しいが、ゲーム、音楽配信、金融など「複合企業」の強みを発揮した。

  • ソニー、巣ごもり需要でゲームが好調だった(写真はイメージ)
    ソニー、巣ごもり需要でゲームが好調だった(写真はイメージ)
  • ソニー、巣ごもり需要でゲームが好調だった(写真はイメージ)

ゲーム好調、「巣ごもり需要」取り込む

   2021年3月期連結決算(2021年4月28日の発表)は、売上高が前期比9.0%増の8兆9993億円、本業のもうけを示す営業利益は同15.0%増の9718億円。そして純利益が前期のほぼ2倍の1兆1717億円と、いずれも過去最高になった。

   純利益については、新型コロナウイルスの感染拡大を受け、当初は5100億円(前期比12%減)を見込んだが、上半期を終えて2020年10月末に8000億円(同37%増)と増益予想に転じ、年が明けて21年2月初めには1兆円を超えるとの見通しを示す――というように上方修正を繰り返した。

   好業績の要因は、まずコロナ禍の「巣ごもり需要」。なかでも、ゲーム事業は売上高が34.3%増の2兆6562億円、全社の営業利益の3分の1を稼ぎ出し、全体をけん引した。PS4(プレイステーション4)から約7年ぶりの新型機として20年11月に売り出したPS5は販売台数がから21年3月末までに780万台と、目標を20万台上回り、ゲームソフトの販売も好調。PSで定額料金を支払ってくれる会員は、3月末時点までの1年間で610万人増えて4760万人になった。

   音楽事業もストリーミング配信の好調などで売上高は10.6%増の9398億円に伸び、映画事業は子会社が制作や配信に関わった「鬼滅の刃」の大ヒットによる関連収入という追い風も吹いた。

   電機事業では、テレビやデジタルカメラなどの高級品がよく売れた。65%の株式を保有していたソニーフィナンシャルホールディングスを2020年夏に4000億円を投じたTOB(株式公開買い付け)で非上場化、100%子会社化したことにより、金融事業の利益貢献もアップした。

   カメラに使う画像センサーが世界で5割のシェアを握る半導体事業だけは、大口納入先の中国通信機器大手・華為技術(ファーウェイ)のスマートフォン向けが、米中対立のあおりで停滞し、営業減益になった。

成長のカギはハードとソフトの相乗効果

   ソニーといえば、ひと昔前までは「お荷物」の電機の構造改革に四苦八苦していた。2014年3月期に「VAIO」ブランドのパソコン事業を売却するなど1800億円の損失を出し、2015年3月期にも携帯事業などで2800億円の損失を計上した。こうした不採算事業からの撤退とともに、テレビの大型液晶や有機EL、デジタルカメラのミラーレス商品など高価格帯への集中を進め、稼ぐ力を高めてきたことが、ようやく花開いてきた。

   ゲームや映画、音楽などの娯楽関連事業では、ヒット作の有無で大きく業績が左右されることが多かったが、PSのオンライン会員制による課金、楽曲のストリーミング再生など、継続的な課金による収入を増やし、収益が安定してきている。

   こうした多角化の一つの集大成として、21年4月1日に旧ソニーをソニーグループに社名変更し、グループの司令塔となる持ち株会社とし、各事業会社がそこにぶら下がる形に整理した。電機事業の「ソニーエレクトロニクス」を「ソニー」に社名変更して残すが、軸足はやはりゲームなど娯楽関連事業になる。20年12月には米アニメ配信大手「クランチロール」を約1200億円で買収するなど、この年から始まった中期経営計画(2023年3月期までの3年間)で戦略投資枠2兆円を設け、娯楽関連を中心にM&Aにも一段と力を入れる考えだ。

   ただ、そうした分野は成長産業であり、競争も激しい。映画大手の米ウォルト・ディズニーや米AT&T傘下のワーナーメディア、ネットフリックス、アマゾンなど新旧入り乱れて映像配信の激烈な競争を展開している。

   前述のクランチロール買収についても、ネットフリックスへの作品供給を止めて自社配信に集中するディズニーとは違い、今のところ、ソニーが持つ映画などのコンテンツの自前での配信には必ずしもこだわっていないようだ。他社の配信で収益を上げられるということだが、他社に頼りすぎると採算性は落ちる。そのバランスをどうとっていくか、今後の課題だ。

   そこでは、映画、音楽、ゲーム、電機などハードとソフトの幅広い事業をグループ内に抱えている強みをいかに発揮していくかがカギになる。たとえば「鬼滅の刃」のゲーム化を計画しているというが、そうした多面的展開、さらに自社のデジタル放送機器を遠隔の音楽ライブに活用するなど、相乗効果を生み出していけるかが、今後の成長を左右するだろう。(ジャーナリスト 岸井雄作)

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