2024年 4月 26日 (金)

中小企業に立ちはだかる「3つの壁」 ディップがDX事業に参入したワケ

建築予定地やご希望の地域の工務店へ一括無料資料請求

   求人情報サイト「バイトル」「はたらこねっと」などを展開するディップは、「ワンストップDX」をコンセプトとした、中小企業向けDX(デジタルトランスフォーメーション)の導入を支援している。

   ディップは、コロナ禍以前の2019年からDX事業を手掛ける。競合他社よりも一日の長がある同社の戦略を、執行役員DX事業本部本部長の三浦日出樹氏に聞いた。

  • ディップ執行役員DX事業本部本部長の三浦日出樹氏
    ディップ執行役員DX事業本部本部長の三浦日出樹氏
  • ディップ執行役員DX事業本部本部長の三浦日出樹氏

「労働力の総合商社」への転換

「本格参入した2年前は、ほとんどの人はDXを『デラックス』と読んでいました」

   そう振り返る三浦氏は、ディップがいち早くDX事業に参入した背景に、主軸である求人業界の変化を指摘する。慢性的な人手不足で活況だった求人サービスが、2018年ごろピークに。そこでディップは「人のマッチング」だけでなく、「労働力の総合商社」へと領域を広げ、新事業の責任者に三浦氏を招いた。

   DXの導入によって、人間がやる必要が少ない、ルーティンワークなどを簡略化できる。人間の仕事をAI(人工知能)が奪うのではないか、との懸念も指摘されるが、三浦氏は「デジタルで労働力を提供することで、人がもっと人らしく、生き生きと働ける社会を作りたい。『人が働きやすい環境をデジタルが作る』ととらえれば、非常に社会的意義がある」と語る。

   一方で、すべてをDXで解決しようとは思っていない。業務がスムーズになるのなら、あえて人力を加えるのも有効な手段だという。たとえば、アポ取りの電話などは、まだまだデジタル化が難しい。

「『電話する人がいない』っていうのが、中小企業の実態です。商談をして、売り上げをあげることが目的だとすれば、うちのインサイドセールスの電話営業部隊に、アポイント1件いくらで丸投げしても構いません。DX化はデジタルだけでは絶対に無理なんです」

全国1600人の営業部隊を活用

   国内企業(約359万社)のうち「中小企業」は99.7%(いずれも経済センサス、2016年)にのぼるが、それらにDXを導入するうえで、(1)人材(2)組織・プロセス(3)予算の「3つの壁」がネックになるという。

   最初のハードルが「人材の壁」。自分自身で各種サービスのウェブサイトを探し、資料をダウンロードして、実際に使いこなす――。そんな人材を持つ中小企業は「ぼくらの感覚で言うと、たぶん10%いない」(三浦氏)と分析する。

親しみのある「コボット」のキャラクター
親しみのある「コボット」のキャラクター

   そこを乗り越えるのが、ディップの強みである全国38拠点、約1600人の営業部隊だ。営業一人ひとりが企業に向けて、業務フローの効率化を提案する。直接のコミュニケーションを通して、「お客さんが本当に困っていることを、ダイレクトに聞いてくる」ため、サービスの改良にも役立っているという。

コロナ禍がDXに与えた影響

   コロナ禍でのテレワーク普及は、中小企業とDXの関係性にも影響を与えた。「『うちには関係ないし』と言っていた中小企業でも、飛び込み営業をしたくても、相手のオフィスに誰もいない」。そんな悩みを抱える企業向けに、ディップはリモートでの営業活動を支援する、セールステック(営業+技術)のサービスも提供している。

   求人サービスに加えて、「DXによる業務効率化」も営業部隊の手札になった。三浦氏は「お客さんが変わったから、うちの営業のマインドが変わった」と振り返る。

コロナ禍で社内にも変化があった
コロナ禍で社内にも変化があった

   ディップが提案するのは、「ワンストップDX」の考え方だ。「バイトル」で人材募集したあと、応募管理や日程調整、ウェブ面接などは「面接コボット」、入社手続きは「人事労務コボット」......と、一つの会社が提供するサービスで完結できる。

   求人情報は「人材が必要な時だけ掲載して、採用が決まったら、またしばらく出さない」フロー型のビジネスだが、DX事業は「景気変動に対して影響を受けにくい」ストック型のモデル。その両輪で、新たなディップが動き出しつつある。

姉妹サイト

注目情報

PR
コラムざんまい
追悼
J-CASTニュースをフォローして
最新情報をチェック
電子書籍 フジ三太郎とサトウサンペイ 好評発売中