2024年 4月 27日 (土)

いまだに接触感染に重きを置くコロナ対策は間違っている!【新型コロナウイルスを知る一冊】

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   東京オリンピックの閉幕とともに、新型コロナウイルスの感染拡大がまたクローズアップされてきた。国内の新規感染者は連日1万人を超え、軽症者や一部の中等症の人は、入院できず、自宅療養を余儀なくされている。

   あらためて新型コロナウイルスがもたらした影響や対策について、関連本とともに考えてみたい。

   間違った新型コロナウイルス感染対策に警鐘を鳴らしてきた、西村秀一医師の新刊が出た。「新型コロナ『正しく恐れる』Ⅱ 問題の本質は何か」である。変異株やワクチンについても言及している。新型コロナのリスクの本質を提示している良書だ。

   「新型コロナ『正しく恐れる』Ⅱ 問題の本質は何か」(西村秀一著)藤原書店

  • コロナ禍の感染予防はマスクで問題ないの?
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この1年間のコロナ対策を個別に検証

   著者の西村秀一さんは、国立病院機構仙台医療センターウイルスセンター長。専門は呼吸器系ウイルス感染症。2020年2月、クルーズ船ダイヤモンド・プリンセス号には臨時検疫官として乗船した。「もうだまされない 新型コロナの大誤解」(毎日新聞出版)などのコロナ関連本を出している。

   日本経済新聞編集委員の井上亮さんが聞き手になり、西村さんに答えてもらうという形の構成になっている。

   新型コロナウイルスの実態が見えてきたのに、未だに間違った対策が行われていることにまず憤っている。少し長くなるが引用しよう。

「これまでの知識と経験から学んでいない。この1年余りでコロナは接触感染よりも主に、空中に浮く飛沫であるエアロゾルを空気とともに吸い込む、エアロゾル感染すなわち空気感染だということがわかってきたのに、相も変わらず手洗いだの雑巾がけだのアルコール消毒だの、でしょう。スーパーの感染対策も1年間変わっていませんね。レジにビニールシートを張って、お金を受け取るときは手袋して。はっきり言って感染防止の役には立ちません。これも世の人々を指導する立場の人や組織、すなわち行政やメディアがまったく変わらないからだと思います。ひと言で言って『勉強不足』です」

   変異株についても行政、マスコミは騒ぎ過ぎだという。ウイルスの遺伝子変異はウイルスを追跡するマーカーとしては役立つが、それ以外に変異に注目する意味はない、と断言する。対策は同じなので、変異株の解釈は専門家に任せよ、と答えている。

   この1年間のさまざまなコロナ対策について個別に検証している。

   まず、「マスク会食」を取り上げている。酒を飲んで大声を出すような宴席は別だが、静かに食事をしていれば、たとえ感染者であってもそれほどウイルスを出さないという。食事をしている人たちとの間隔があいていたり、きちんと換気している場所なら、なおさら感染の恐れはそれほどない。一人の人間が単なる呼吸とともに出す、あるいは静かな会話で出す飛沫の量が極めて少ないことが知られている。空気の流れを作って、エアロゾルが滞留しないような環境にしておけば、マスク会食の必要はないそうだ。

マスクをすれば聖火リレー見物も大丈夫だった

   PCR検査についても疑問を呈している。検査を大量に行うため機械で自動化した。そのためウイルスの量的な情報が得られなくなった。

「PCRの陽性者をひとまとめに感染者にしてしまい、個々の感染状況の重み付けが全然できていない。そのデータがないから、感染者と認定された人の、その先のことを考えるときにも、その時の臨床症状以外に本来とれるはずのウイルス量に関するデータがないということになります」

   また、民間業者が行っている唾液による検査の信頼性にも疑問があるという。唾液を採取してからPCRにかけるまでの時間が長ければ長いだけウイルス遺伝子が酵素の働きで分解され、あるいは自然分解され少なくなるからだ。西村さんの立場からすれば、怪しいなという検査がたくさんあるという。

   西村さんは「リスク評価」を踏まえた対策を、と訴えている。もう終わってしまった東京オリンピックの聖火リレー。取りやめになったり無観客になったりしたものも多かったが、屋外での聖火リレー見物は、「みなさん、マスクをして出てきてください」くらいの呼びかけで十分だったという。

   屋外でもあり、マスクをしていれば感染の恐れはほぼない。人がたくさん集まるイベントはすべてダメだと決めつけて思考停止するのではなく、「ここまでのことはやれますよ」と、当事者、責任者がリスク評価をすることが大事だという。

現在の選択肢はワクチンしかない

   現在の選択肢はワクチンしかない、としている。冬までに国民の大半が接種できれば、今度の冬の流行はそれほど大きくならないはずだと見ている。効果についてアメリカやヨーロッパのデータはあるが、本来、国が主導して、このワクチンを打った人たちの抗体価の変動を見るプロジェクトが行われなければならない、と指摘する。

   来年以降のワクチンを考えたとき、国産でやるのか、国産はそれまでに間に合うのか、間に合わなかったらどうするのか。もしも今のワクチンが効かないような変異株が出てきたら、外国は日本に売ってくれるのか。多くの疑問をぶつけている。そうしたことを政府に質問しようとしないメディアへの不満もあるようだ。

   最後に西村さんは、苦しみの中で、どこかで幸せをみつけていくしかない、と書いている。「絶望だけはしないでください」というのが最大のメッセージだと。そして、こう結んでいる。

「近くの公園でもいい、とにかく外に出てマスクをはずして、深呼吸しましょうよ」

(渡辺淳悦)

   「新型コロナ『正しく恐れる』Ⅱ 問題の本質は何か」
西村秀一著
藤原書店
1980円(税込)

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