SBIの周到なTOBに進退窮まった新生銀行 「ホワイトナイト」は現れるのか!?

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   インターネット金融大手のSBIホールディングスが2021年9月10日、新生銀行の子会社化を目指し、株式公開買い付け(TOB)を始めた。SBIはかねて「第4のメガバンク構想」を掲げており、TOBが成立すれば、新生銀行をその中核に据える。

   新生銀行側は反発しており、17日、買収防衛策の導入方針を打ち出し、両社一歩も引かない全面対立に発展した。

  • SBIホールディングスが新生銀行にTOBを仕掛けてきた
    SBIホールディングスが新生銀行にTOBを仕掛けてきた
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SBI 「第4のメガバンク」に新生銀行は欠かせない

   TOB期間は10月25日まで。SBIホールディングスは開始前の時点ですでに約20%の新生銀行株を保有しており、さらに1株2000円(TOB開始前の9月9日終値に約4割上乗せ)で約1100億円を投じて、最大48%まで引き上げ、連結子会社化を目指す。

   経緯を振り返ると、SBIの周到さが浮かび上がる。SBIはグループでネット証券のSBI証券や、ネット専業銀行の住信SBIネット銀行、ネット向け生損保会社など幅広く展開している。

   その中でも特異なのは、「地銀連合」と称する地方銀行との資本業務提携だ。SBIが培ってきた金融ノウハウやデジタル技術を提供し、地銀の競争力を高める狙いがある。2019年9月の島根銀行を皮切りに今回のTOB開始時までに計8行に及ぶ。それぞれの地盤で苦戦を強いられている地銀が多い。

   一方、SBIは2020年1月に新生銀行株の取得が明らかになり、その後も「純投資」として市場で断続的に追加取得してきた。TOBに合わせてSBIが公表した資料には、株式取得を2019年4月に始めた経緯を明らかにしている。

   その年の9月からは新生銀行に対して、連結子会社化も視野に入れた資本業務提携を数度にわたって打診していた。新生銀行側は首を縦に振らず、SBIは新生銀行株を買い増して圧力を強めていた。

   「弱小」地銀をいくら束ねても、「第4のメガバンク」になりようがないのは明らかだ。地銀連合の拡大と同時に、構想の中核にしようと新生銀行に触手を伸ばしていた。だが、2021年1月に新生銀行がマネックス証券との包括提携を発表して、SBIへの対抗姿勢があらわになると関係が悪化。SBIがTOBに踏み切るきっかけとなった。

   事業会社が銀行の株式を20%以上取得して主要株主になる場合には金融庁の認可が必要となるが、SBIは2021年9月9日に認可を取得して、その日にTOB実施を発表した。

買収への布石? 金融庁に接近

   新生銀行側も付け入られる隙があった。1998年に経営破たんして一時国有化された日本長期信用銀行(長銀)をルーツとする新生銀行は、米リップルウッド・ホールディングスを中心とする投資組合に買収された。2008年には米投資ファンドのJCフラワーズが筆頭株主になったが、19年に売却。SBIが株式を取得しやすい環境にあった。

   新生銀行は外資の傘下で消費者金融や法人融資を強みにしようとしたが、ビジネスモデルは中途半端となり株価も伸び悩んでいた。

   SBIはTOB成立後に新生銀行役員の「全部または一部を変更」する構えで、SBIは元金融庁長官の五味広文氏を会長に送り込む意向を示している。SBIの動きは金融庁にとっても好ましいはず、と受け止められている。旧長銀破たん・一時国有化の際に投入された公的資金の未返済分は3500億円あり、現在の株価2000円レベルでは投入資金を回収できず、金融庁が、株価アップのシナリオを描けない経営の現状に不満を抱いているのは間違いない。

   SBI傘下に入り、新たなビジネスモデルを打ち立て、株価を上げて公的資金回収の道筋がつけば、金融庁としても御の字なのだ。

   SBIは五味氏ら金融庁幹部経験者を受け入れてきており、こうして金融庁とのパイプを築いてきたもの、公的資金を抱える新生銀行の買収への布石との見方もできる。

新生銀行「ポイズンピル」で買収阻止を狙うが......

   追い込まれた新生銀行は9月17日の取締役会で、TOBへの対抗措置を打ち出した。事実上、SBI以外の株主に新株を無償で配る「ポイズンピル」(毒薬条項)という手法の一種で、SBIの持ち株比率を下げて買収を阻止する狙いだ。11月に臨時株主総会を開いて防衛策導入を正式に決定するとしている。

   取締役会では、SBIの説明が不十分だとして取締役会としてのTOBへの賛否の表明を留保し、事前協議なく始まったTOBの意図や今後の成長戦略などをSBI問う質問状を送るとともに、TOB期間を12月8日まで延長するよう求めることも決めた。新生銀としては、株主にTOB反対の正当性を説明するとともに、SBIに代わる「友好的な買収者(ホワイトナイト)」を探す時間を稼ぐ狙いもあるとの見方が出ている。

   ただ、TOB開始前の新生銀の株価水準は1400円前後で、足元ではTOB価格の2000円に接近しているが、新生銀としては、今後の経営でTOB価格水準に株価を高める道筋を株主に示すことが不可欠になる。

   今回の新生銀の決定に対しSBIは裁判所への差し止め請求を検討する見通しだ。TOB期間の延長にも応じない方針とみられるが、株主総会の結果が出るまでTOB期間を延長せざるを得なくなる可能性もあり、法廷闘争を含め、激しいつばぜり合いが続く。(ジャーナリスト 白井俊郎)

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