2024年 4月 25日 (木)

自公の出来レース「18歳以下のこどもに10万円」がいかにマヤカシか! 6人のエコノミストが猛批判する理由

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「子育て世代は将来の増税に備えて貯蓄する」

現金が給付されるのは嬉しいが...(写真はイメージ)
現金が給付されるのは嬉しいが...(写真はイメージ)

   実質的に18歳以下の子どものほぼ全員に「10万円の給付」が決まったが、経済効果はあるのだろうか。「またバラマキに終わり、貯蓄に吸収されそうだ」と指摘するのは、野村総合研究所エグゼクティブ・エコノミストの木内登英氏だ。「子どもへの給付金の経済効果とその課題」(11月8日付)では、まず「個人消費を7680億円押し上げる経済効果がある」としながら、こう指摘している。

「総務省統計局によると、0歳から18歳までの人口は1923万人程度と推定される。仮に18歳以下の子供に1人10万円を支給する場合、予算は1兆9200億円となり、個人消費を7692億円押し上げる計算となる。これは、年間のGDPを0.36%、個人消費を0.67%押し上げる効果を持つ」

   ところが、給付方法に問題があり、「試算」どおりにはいかないというのだ。

「給付金はコロナ対策の一環との位置づけであるが、子どもがいる世帯は、コロナ禍で所得が減少した世帯ばかりではない。新型コロナウイルスが追い風となり、むしろ所得が増えている世帯も少なくない。(バラマキの給付では)大きな打撃を受けている世帯を集中的に救済することにはならず、また、新型コロナで拡大した所得格差を縮小させることにもならない。
子どもがいる世帯は概して生活弱者であるとの認識があるのかもしれないが、それはコロナ対策ではなく、既存の社会保障制度で対応すべき問題だ。そして、セーフティーネットで十分に対応できない分についてのみ、一時的なコロナ対策として給付制度の導入を検討する、というのが本来のあり方ではないか」

と、木内氏は指摘するのだった。

   こうしたことから、給付金が実際の消費に回る割合は低く、貯蓄に回る可能性が高いという。

「給付金の経済効果も、期待したほど大きくはならない可能性が考えられる。給付金のように一時的な所得は、月例給のように経常的な所得と比べて貯蓄に回る比率が高くなる。給付金は、新型コロナで所得が大きく減った個人、世帯に対象を絞ったものとするのが適切だ」

と、やはり「バラマキ」を批判するのだった。

   「子どもを持つ世帯の多くは将来の増税を心配して、給付金は貯蓄に吸収されるから、なんら経済効果はない」と厳しく批判するのは、三井住友DSアセットマネジメントのチーフマーケットストラテジスト市川雅浩氏だ。「岸田首相の経済対策とリカードの中立命題」(11月8日付)で、英国の経済学者、デビッド・リカード(編集部注:1772年~1823年、自由貿易を擁護する理論を唱えた)の「学説」を引用し、こう述べている。

「リカードは、財政政策について、次のような考え方を提唱しました。政府が景気刺激のために減税し、減税分を国債発行で賄うとした場合、家計が将来の国債償還時の増税を予想すれば、家計は現在の減税分を消費に回すことなく将来の増税に備えて貯蓄するので、減税は何ら景気を刺激する効果を持たないというものです。これは一般に『リカードの中立命題』といわれています。

今回は、減税ではなく現金給付ですが、岸田首相は今の非常時には政策の財源として国債を思い切って使うべきだと述べています。一方、財政赤字について、10年程度は消費税率を引き上げることはないが、財政再建の旗は降ろしてはいけないとの立場です。したがって、10年後以降の増税を予想する家計が多いほど現金給付の政策効果は低下する恐れがあります」

   つまり、岸田首相の姿勢を見る限り、10年後以降の増税を予想する人が多く、「リカード理論」によって給付金が貯蓄に回る可能性は高くなるから、政策効果は期待できないというわけだ。市川雅浩氏は、こう結んでいる。

「(2020年の全国民一律10万円の支給も)少なくとも7割が貯蓄に回ったとの調査もみられました。現金給付は、あくまで一時的な生活支援であり、景気全体を持続的に強く押し上げる政策ではありません。 衆院選では与党が勝利しましたが、日経平均株価は依然3万円台を回復しておらず、岸田首相の経済対策について海外投資家など市場の評価は、現時点であまり高くないと考えられます。評価を高めるには、中長期的に日本の経済や企業業績を展望した際、十分な成長と拡大が期待できるような、具体的で分かりやすい構造改革や規制緩和の提示が必要と思われます」
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