2024年 4月 19日 (金)

起業を志す人よ、「外」へ出よう! ビジネスの「タネ」は豊富にある ベネフィット・ワンの白石徳生社長に聞く【後編】

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   人財サービスのパソナの社内ベンチャー第1号で、2004年に株式の店頭公開を果たしたベネフィット・ワン。企業の福利厚生をアウトソーシングしてもらい、請け負う会社として知られ、成長著しい。いまや、ピカピカの東証1部上場(2004年にJASDAQに上場。18年から)の企業だ。

   そんなベネフィット・ワンの白石徳生社長が、起業を目指す若者らに事業化のアイデアの実現に向けて、人脈づくり、ビジネスの「タネ」の見つけ方や起業までに成すべきことなど、スタートアップの「極意」を伝授する。

  • 人脈づくりは「同世代、やる気のある人」を探していくといいのでは……(写真は、ベネフィット・ワンの白石徳生社長)
    人脈づくりは「同世代、やる気のある人」を探していくといいのでは……(写真は、ベネフィット・ワンの白石徳生社長)
  • 人脈づくりは「同世代、やる気のある人」を探していくといいのでは……(写真は、ベネフィット・ワンの白石徳生社長)

「同じ志向の人は同じ空間の場所に集まる」

   ――起業に限らず、ビジネスを進めるうえで人との出会いは大切です。白石社長はどのように人脈を広げられてきたのでしょうか。

白石徳生社長「人脈を作ろうと思って、今すでに経営のトップに就いている偉い人に会おうとしても、それは相手にされないと思います。もちろん、講演会やセミナーなどに参加して直接話を聞く機会を設けることはいいことだと思います。しかしそれよりも、たとえば同世代、あるいは少し年上の人たちの中で、やる気のある人たち、いずれ偉くなっていくであろうと思われる人を見つけていくことがいいと思います。
30歳代の人がいきなり50歳代の人たちと人脈を作ろうと思っても無理であって、私の場合は、30歳代の同世代で上昇志向の強い人たちとの人脈を作っていったことで、自分が40歳、50歳になった時にその人たちが偉くなっていった。それだけのこと。いろんな人とお付き合いがありますが、その人が社長や副社長になってからではないのです。当時は、みなが課長だったりしたのです。大企業の社長とのお付き合いも、当時の上昇志向の強い人たちが20年ぐらい経って、社長になっていたのです。
人脈づくりは今どうこうというよりも、長い目で考えたほうがいいと思います。むしろ、同世代で、これから共に成長していくような人たちを探すのをオススメします」

   ――なるほど。では、上昇志向の強い人と出会うきっかけはどう作られたのでしょうか。

白石社長「私の経営者の友人も学生時代からの友人だったりします。当時、一緒に遊んだ同じ志向の友人たちが起業したのです。今は成功していますが、昔からの知り合いですから、繋がりは強いです。成功したから急に人脈が広がったわけでもありません。
考え方として、会社の中でもしがらみのない、フラットな関係で人間関係が作れれば同じ志向の人との繋がりができると思います。学生時代は一番しがらみのない時代ですから、友人関係も一番続きますね。『同じ志向の人は同じ空間の場所に集まる』これは間違いないです」

企業の存続は自然界の仕組みと同じ

   ――起業するときに大事なことはなんでしょう。白石社長の考える「事業の掟」を教えてください。

白石社長「誰かの役に立っていない事業は、短期的には儲けることができたとしても、淘汰されていきます。誰かの役に立っているから存在が許されているのです。これは自然界の仕組みと同じですね。たとえば、バクテリアは、なにかに必要だから、その種の存続があるのです。必要ないものが淘汰されていくプログラムが、自然界にはあります。ダーウィンの進化論です。人間も自然界の一部であって、その人間が企業に勤めて働いているのですから、その中で価値の提供できない企業は潰れていくのです。逆に『潰れたら困る』と思われる会社は絶対潰れません」

   ――白石社長の言う「役立つ企業」とは、どのような企業でしょうか。

白石社長「役に立つというのは時代によって違ってきます。たとえば20年前に作った会社はその時代においては役割が与えられたので成長したとします。ところが20年のあいだに社会環境が変わって、存続していられなくなるような立ち位置になると、その会社は潰れていくのだと思います。
自分の会社が役に立っているかどうかは、会社をやっていればわかります。だから、新商品を開発したり業態転換をしたりするのです。
たとえば今、自動車部品メーカーの人と話をすると面白いですよ。EV(電気自動車)化で、自動車部品メーカーはこのままではエンジンがなくなっていくのでマズイということがわかっています。そのため、電気の世界に行ったりとか、宇宙だったりとか、死に物狂いでさまざまなものを設計して開発しています。これから、ありとあらゆるところで、そのような現象が起きてきます。時代に応じて、ニーズを汲み取っていける会社だけが存続が許されるのです」
「優秀な学生はサラリーマンにはならない」と、白石徳生社長は話す
「優秀な学生はサラリーマンにはならない」と、白石徳生社長は話す

   ――まだまだ、日本では起業をリスクと捉えている人が少なくありません。

白石社長「崩れつつありますが終身雇用制は、昭和時代の、しかも戦後からのことです。高度成長期になり、終身雇用で定年退職まで会社で働いていればそれなりの見返りがあったのです。半面、人余りの時でもあり、もし会社を辞めてしまうと働き口も失ってしまうと考える人も多かったと思います。さらに起業ともなると、リスクを先に考えるようになってしまった。しかし、日本でも戦前は普通に起業されていましたし、起業をリスクとして考えるのは世界的に見ても日本だけなのです。アメリカでは人が足りない状態なので、失敗してもまた就職すればよいと考えています。日本だけが新卒採用、終身雇用制、人余りの中で、『起業リスク=失業リスク』となってしまったのです。
では、今はどうでしょう。空前の人手不足です。コロナ禍による混乱はあったとしても、そのような状況の中で、優秀な学生であればあるほど時代認識ができますから、サラリーマンにはなりません。一番賢い優秀な学生たちは会社を創っています。その次の層はそういった起業家が創った会社に入っています。そして、さらにその次の層は大企業に所属します。あるいは外資系企業のエンジニアなどの、次のステップへ上がれる、起業しやすい企業に就職しています。いずれにしても、そもそも大企業志望でなかったり、大企業に入っても、すぐ辞めてしまうのは特別なことではないのです。つまり、終身雇用で定年まで過ごすのが『成功のモデル』だった時代は終わっているのです。終身雇用世代の人と若者とでは時代に対する認識が、まったく違うのです」

「変革の時代」ビジネスのルールが変わる!

   ――ところで、ビジネスのタネを見つけるヒントはどのあたりにあるのでしょうか。

白石社長「ビジネスの種はその辺にゴロゴロありますよ。今、ネット社会やデジタル化だとか日本だけでなく世界中が凄まじい勢いで変化しています。変化している時は、歴史があったり、規模が大きかったりする会社は、ハンディキャップを背負ってしまうことが多いのです。たとえば大きな会社ですと、設備だったり何万人もの社員だったり、すでに多くを持ってしまっているので、舵を切るのも大変です。ベンチャー企業ですと、何も持っていないので環境が変わっても対応できます。
アメリカの現在のトップ30社は、30年以内にできた企業がほとんどです。Google、Apple 、Facebook、Amazonなどの会社がアメリカ経済を完全に押さえています。日本も間違いなくそうなります。これからアフターコロナなどで『ルールがいろいろ変わってくる』ので、起業するには絶妙なタイミングではないのでしょうか」
白石徳生社長は「インフラ産業のようなビジネスが求められる」と言う
白石徳生社長は「インフラ産業のようなビジネスが求められる」と言う

   ――プラットフォームによる「集約ビジネス」がカギになるということでしょうか。

白石社長「今後は、ますますサブスクリプションが流行すると思います。サブスクリプショは巨大なプラットフォームに全部乗せるとムダがなくなるという考え方です。たとえば物流も、まとめて共同で配送できれば、ムダがなくなると思います。各社がトラックを走らせてCO2排出するのは、SDGsを考えてもそうですよね。自由競争は時代遅れで、ナンセンス。寡占化できるビジネスを考えれば、一番いいと思います。少し前はニッチとか言われていましたが、もうニッチの時代ではないと思います。これから時代は、ニッチは淘汰されていきます。そうするとインフラ産業のようなビジネスが求められるように思います」

   ――ビジネスのルールが変わるということでしょうか。

白石社長「まさに強みが弱みになることが起きようとしています。トランプのゲーム、大貧民(大富豪)のように、ルールでは2が一番強くて3が一番弱いですが、3が一番強くて2が一番弱くなる革命が起こりうるのです。たとえば、今は東京や大阪の会社が強いと思いますが、アフターコロナの時代には、地方に本社を置く会社のほうが強くなるかもしれません。あるいは従業員をたくさん抱えた、規模の大きな会社よりも、従業員の意識改革などで中小企業のほうが動きやすかったりします。
また、強いといわれる「販路」を持っている会社は、ネット時代には販路はコストになりますから、持ってない会社のほうが強くなり得ます。たとえば自動車業界は、ディーラー(販路)を持っている会社よりも、米テスラのような販路のない会社が有利というわけです。
このように、業界ごとにゲームのルールが変わっているのです。ルールが変わるからこそ、ダイナミックに入れ替わりが起きるのだと思います」

   ――事業を成功に導くために必要な視点は、どのようなことなのでしょう。

白石社長「会社や業種業態も変化しています。何か強い会社が出てくると集約されてく傾向があります。たとえば近年、日本でグローバルに急成長した会社に『ニトリ』と『ユニクロ』があります。この2社は、もともと家具屋と洋服屋です。特殊な分野でも新しい商品でもありません。昔からやってることを、ちょっと工夫しただけです。それは消費者からすると、街の家具屋がニトリに変わり、洋服屋がユニクロに変わっただけのこと。つまり、歴史のある産業で少し工夫をして集約すると、すごい企業になっていくということです。
時代とともになくなり、変わっていく企業もそうです。業態転換などの動きは、常にどこかで起きているのです。今の時代はインターネット。ネットが普及することによって、いらなくなるビジネスを考えると、凄くあるのだと思います。たとえば、BtoBもネット金融などで劇的に変わると思いますし、営業担当のビジネスパーソンも10分の1ぐらいに減るのではないでしょうか。人材紹介もまたビジネスチャンスの宝庫といえそうです」

(聞き手 牛田肇)

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