2024年 4月 26日 (金)

コロナ禍で加速するデジタル化 2022年大予測【12月は、2022年をのぞき見する一冊】

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   2021年も残り1か月を切った。昨年来のコロナ禍でさまざまな活動が「自粛」され、人々は悶々とした生活を送っている。夏に開かれた東京オリンピック・パラリンピックの代表選手や、米大リーグのロサンゼルス・エンゼルス、大谷翔平選手の大活躍に胸が熱くなり、救われた思いだった。

   さて、来る2022年、干支は寅。2月には北京冬季オリンピック・パラリンピックが開かれる。世界は、日本の経済は? 人々の生活は......。12月は、そんな「2022年」や「寅」にまつわる一冊を取り上げたい。

   12月に入り、書店には来年のトレンドを予測する本が並び始めた。その中で注目したのが、本書「2022年 日本はこうなる」である。シンクタンク・コンサルティングファームの三菱UFJリサーチ&コンサルティングがまとめたものだ。

   コロナ危機でデジタル化とグリーン革命が加速。脱炭素化、米中対立など、今知るべきトレンドと76のキーワードを解説している。「アフターコロナ」が前提となっているが、刊行後に「オミクロン株」が出現した。2022年の予測はさらに難しくなるだろうが、手掛かりとするには十分の内容とボリュームだ。

   「2022年 日本はこうなる」(三菱UFJリサーチ&コンサルティング編)東洋経済新報社

  • 2022年は「グリーン」がキーワードになるかも……
    2022年は「グリーン」がキーワードになるかも……
  • 2022年は「グリーン」がキーワードになるかも……

インバウンドの「復活」はさらに遠のく......

   巻頭言で三菱UFJリサーチ&コンサルティングの理事長、竹森俊平氏が、2022年も国際的な人流の本格的な復活は望めず、非接触型の優位とデジタル化への追い風はそのまま続く、と書いている。年末になり、感染力が強いと見られる「オミクロン株」への警戒が世界的に高まるなか、インバウンドの復活はさらに遠のくのではないだろうか。

   デジタルの地位が高まる中、これを活用できる組織、国民とそうでないものとの「デジタルデバイド」は拡大した。その影響は教育の格差にも及んでいる。本書ではデジタル関連の記述が随所に登場している。

   脱炭素化政策の地政学的背景にもふれている。EU(欧州連合)は23年までに、炭素税の国際版ともいえる「炭素国境調整措置(CBAM)の導入を目指している。炭素排出量に応じた関税を各国の輸出に課すもので、アメリカも追随する可能性がある。貿易に含まれる炭素排出量の多い中国の輸出に対しては世界最大の関税額が課せられることになる。中国を狙い撃ちにした、ルールに基づく多国間の枠組みともいえる。

地方でもデジタル化・脱炭素化

   グリーンエネルギーの拡大には「規模の経済性」が必要だという。資本設備への投資を生み出すには、民間投資の盛り上がりも必要で、サステナブルファイナンスがカギとなる。それには現在の低金利状態が続くことが重要なマクロ条件となる。

   コロナワクチン接種の加速を受けて、消費が再開されインフレの兆候が見え、低金利政策の転換が視野に入っていた。竹森氏は「世界的な金利の動きには今後十分の注意が必要である」と結んでいる。しかし、ここに来て、「オミクロン株」が登場し、金利の行方はさらに不透明になってきた。

   本書の構成は、第1部が総論で「コロナショックを経て、回復と成長への道筋を模索」というタイトルになっている。第2部が「2022年のキートレンドを読む」。ここでも脱炭素化がメインだ。第3部は、国際社会、産業、企業経営、雇用、社会・文化など10章に分けて、76のキーワードごとに解説している。

   キートレンドでは、脱炭素の動きを地方創生の観点から見た、奥野麻衣子氏(持続可能社会部)のレポートに注目した。

   コロナ禍以前は、東京一極集中・地方の人口減少を劇的に食い止めることはできなかった。しかし、ウィズコロナの今、以前よりはデジタル化が進み、働き方やライフスタイルの変化が移住やワーケーションの機会をつくるなど、地方にとってはある意味でチャンスと言える状況になっている。

   政府の取り組みを以下のように紹介している。2021年6月、内閣府に設置された国・地方脱炭素実現会議は、「地域脱炭素ロードマップ」を取りまとめた。30年までに少なくとも100か所の「脱炭素先行地域」を指定するとともに、全国で自家消費型太陽光、省エネ住宅、電動車などの重点対策を実施する。

   内閣府は、今後の地方創生の取り組み推進における新たな重要な視点として、「ヒューマン」「デジタル」「グリーン」を掲げている。

2022年はドローン飛躍の年に!

   経済産業省は2021年6月の産業構造審議会総会で、ポスト・アベノミクスとなる「経済産業政策の新機軸」を打ち出した。大きな方向性(案)として、経済と環境の好循環(グリーン成長戦略)などの方向性を示した。

   金融機関にとって喫緊の課題は、サステナビリティがわかる人材の獲得・育成であり、とくに地域金融機関は、これまで以上に、地域資源の価値を持続可能性の観点で見直してみることが必要である、と指摘している。

   キーワードでは、22年はドローン飛躍の年になるだろうという「ドローン活用」が興味深かった。22年にレベル4(有人地帯での目視外飛行)を実現させるため、飛行環境整備が段階的に進められてきた。

   物流では、食料品・日用品・医薬品のラストマイル配送としてドローンを活用することで、増大する物流ニーズへ対応することが可能になる。また、インフラ分野では送電線などの点検に活用されることが期待されている。

   産業にかかわるキーワードでは、デジタル通貨、シェアリングエコノミー、データセンター、フィンテック、スマートファクトリーなどデジタル関連のものが目立つ。

   このほかの分野でもデジタル関連が登場する。企業経営では、DX(デジタルトランスフォーメーション)戦略、オンラインサロン、雇用ではリスキリング(DXのための職業能力の再開発)、社会・文化ではデータサイエンス教育、eスポーツ、少子・高齢化ではオンライン服薬指導といった具合だ。

   2021年にはデジタル庁が発足。進まないと言われていた日本でもデジタル化の波が押し寄せてきた。本書を通じて、デジタルと無縁の分野はどこにもないことを痛感した。22年の大学入試では、データサイエンス学部・学科が台風の目になりそうだと予想されている。

   一般の人はワクチン接種のデジタル証明書という形でも、デジタル化を意識することになるかもしれない。「紙」で管理されてきた証明書が、「デジタル」を前提に議論され、制度化されることになりそうだ。(渡辺淳悦)

   「2022年 日本はこうなる」
三菱UFJリサーチ&コンサルティング編
1980円(税込)

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