2022年 8月 10日 (水)

新生銀行のTOBが決着 SBI傘下で「第4のメガバンク」構想の柱に

モータースポーツの世界観を表現した『ECB-2000』

   新生銀行 vs SBIの争いに決着がついた。

   ネット金融大手のSBIホールディングス(HD)が新生銀行に株式の公開買い付け(TOB)を仕掛け、反発する新生銀行が買収防衛策の導入を打ち出し、対立していた問題は、新生銀行が買収防衛を取り下げ、SBI傘下入りすることになった。

   新生銀行の大株主である国も巻き込んだ泥仕合は、ひとまずSBIの勝利で幕を閉じる。

  • SBIによる新生銀行のTOBに金融庁が「ひと役買った」……
    SBIによる新生銀行のTOBに金融庁が「ひと役買った」……
  • SBIによる新生銀行のTOBに金融庁が「ひと役買った」……

SBI、新生銀行の「強み活かす」経営で成長

   J-CASTニュース 会社ウォッチが「SBIの周到なTOBに進退窮まった新生銀行 『ホワイトナイト』は現れるのか!?」(2021年9月19日付)で詳報したように、新生銀行の株式の約2割を握るSBIは2021年9月に新生銀行の同意がないまま、「敵対的TOB」を開始。1株2000円(TOB開始前の1300~1400円程度に約4割上乗せ)で約1100億円を投じて、最大48%まで保有比率を引き上げ、連結子会社化すると打ち上げた。

   ちなみに、最大48%にとどめたのは、50%超の株を取得すると、SBIは法律的に「銀行持ち株会社」になり、金融と関係が薄い事業が制限されるなどの規制を避けるためだ。

   SBIは、自身が提携する地方銀行との相乗効果や、新生銀行が強みを持つ消費者金融事業を活用することで成長できると訴えた。

   これに対し新生銀行は「大きな相乗効果は望めない」と否定的な考えを繰り返し、9月17日の取締役会で、TOBへの対抗措置として、SBI以外の株主に新株を無償で配る「ポイズンピル」(毒薬条項)を導入し、SBIの持ち株比率を下げて買収を阻止する方針を決定した。

   その後、両社は株主に働きかけつつ話し合いも重ねたが、折り合わないまま新生銀行が11月に25日に臨時株主総会を開いて防衛策導入を諮ることになり、SBIはTOB期間を当初の10月25日までから12月8日まで延期し、新生銀行の総会に向けて水面下の攻防が激化していた。

国、新生銀行の買収防衛策に賛成する「大義名分」なし

   新生銀行を考えるとき、最大の問題が前身の日本長期信用銀行時代に資本注入された公的資金だ。大手行で唯一、返済が滞っている。その額は3500億円(国の株式保有比率は約2割)になる。国が損をしないためには株価7450円に高める必要がある。

   国が、この2割の議決権を行使するか否か、するなら防衛策に賛成するか反対するかが新生銀行とSBIの攻防の焦点になった。

   当初、「どちらかに肩入れするようなことは避けるべきだ」との声が金融庁内でも強かったというが、一方で、金融庁は機関投資家に対して経営陣との「なあなあ」ではなく、きちんと議決権を行使して結果を公表するよう促してきた。その手前、安易に棄権することを問題視する意見もあった。

   新生銀行株を直接保有・管理する預金保険機構が、新生銀行とSBIに今後の経営方針について質問状を出し、その回答を検討するという手続きを経て、SBIの計画がまさると判断し、最終的に、新生銀行の買収防衛策に反対することを決めた。公的資金に穴を空けられない以上、現経営陣の計画では株価が7450円に向かって上昇していく見通しはたたず、防衛策に賛成する大義名分は見当たらなかったということだ。

   国の方針が11月22日に明らかになり、新生銀行は24日、SBIのTOBへの意見を「反対」から「中立」に変更し、買収防衛策を諮る臨時株主総会の中止を発表した。この間、期待したSBIに代わる「友好的な買収者(ホワイトナイト)」も現れず、SBIの軍門に下るしかなかった。

   新生銀行の工藤英之社長は25日に記者会見を開き、SBIが新生銀行の事業戦略を尊重し、少数株主に配慮する姿勢を示したとして、「(SBIに)私どもの経営方針を尊重するという譲歩をいただき、不透明感がかなり払拭されたためだ」と説明。しかし、国の防衛策反対方針で「勝ち目」がなくなったことが決定的だったのは明らかだ。

SBIに圧しかかる3500億円の「公的資金」

   今後、SBIのTOBが成立すれば、新生銀行は22年2月初旬に臨時株主総会を開き、SBIが会長候補とする五味広文・元金融庁長官、社長候補とする川島克哉・SBI副社長らを選任する。これに伴い、工藤社長ら現経営陣は退陣することになる。

   SBIはこれまで、地方銀行との資本提携を進めてきた。経営不振の「弱者連合」の趣もあったが、この輪の中心に新生銀行を据えることで、「第4のメガバンク」構想を推進していくことになる。 とはいえ、「国内市場の縮小や日銀の超低金利政策という逆風が強まる中、新生銀を再生させ、公的資金の返済に向けた道筋を描くことができるのか」(毎日新聞2021年11月28日社説)、SBIは厳しく問われることになる。

   国(金融庁)の責任も重大だ。「国が民間の買収案件を左右するのは違和感がある」(日本経済新聞11月26日社説)との批判を承知で国がSBIのTOBに軍配を上げたのは、今の経営を続けるよりも、SBIに委ねるほうが業績改善につながると判断したからだ。

   裏を返せば、SBI傘下入りしても収益が思うように上がらず、公的資金3500億円の返済の道筋が開けなければ、国も責めを免れないということだ。(ジャーナリスト 白井俊郎)

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