2024年 4月 26日 (金)

年末に横行する「還付金詐欺」! 甘い口調でコロリと騙す詐欺師の声を警察庁が公開

「医療費や介護保険料の還付金が戻ってきますよ」

   確定申告のシーズンの年末、税務署や市役所職員を名乗る詐欺師からの電話にだまされる「還付金詐欺」が全国で横行している。

   最近多いのが、被害者にATM(現金自動預け払い機)まで行かせ、携帯電話で指示を出しながら、被害者自身に犯人側の口座に自分のカネを振り込ませてしまう手口だ。

   なぜ、コロリとだまされてしまうのか? 警鐘を鳴らすため、警察庁は2021年12月、公式サイトに犯人と被害者の生々しいやりとりを公開した。

  • 詐欺師の甘い口車に乗ってはダメ(写真はイメージ)
    詐欺師の甘い口車に乗ってはダメ(写真はイメージ)
  • 詐欺師の甘い口車に乗ってはダメ(写真はイメージ)

「奥さんのおからだ、大丈夫ですか」と優しい口調の犯人

   警察庁が「還付金詐欺」の犯人からの電話を公開しているのは、「警察庁・SOS47特殊詐欺対策ページ:還付金詐欺」

   還付金詐欺は、市町村や税務署、年金事務所などの職員と名乗り、医療費や保険料の過払い金、一部未払いの年金があるからお金を受け取れるという内容の電話をかけてくる。

   被害者が喜んで話に乗ると、「払い戻しには期限があり、今日中に手続きを済ませないと受け取れない」を慌てさせる。そして、被害者に今すぐ携帯電話を持って近くのATMに向かうように指示をする。ATMを使って被害者自らに「払い戻しの手続き」を指せるように仕向けるのだ。

   ただし、最近は金融機関のATMを使うと、職員の監視が厳しいため、コンビニエンスストアなど監視が緩い場所に行かせるケースが多い。

   いったい、なぜ簡単に引っかかってしまうのか――。警察庁では、北海道と茨城県、静岡県の事例を公開した。

   静岡県のケースは、こんな具合だ。

・洋品店を営む佐々木さん宅では、妻が昨年(2020年)暮れに入院。ようやく回復して自宅に戻ったばかりだった。そこに犯人から電話がかかってきた。

犯人「佐々木さんのお宅ですか。私、スルガ税務署からお電話しています。石田と申します。あの~、佐々木さん、確定申告で医療費の還付金の受け取りを拒否されていますね。どうしてなのかな、と思いましてお電話しました」
佐々木さん「ええっ、どういうことですか?」
犯人「還付金の手続きの書類を送ったのですが、受け取り拒否で戻ってきまして...。どうしてなのか、何か手違いがあったのかと確認のためお電話をしています」
佐々木さん「ええっ、そんな案内来ていたかな? じつは妻が昨年入院しまして、たくさん医療費がかかったから、お金が戻ってくるのならありがたいなあ~」
犯人「奥さん、大変でしたねえ。おからだの具合はいかがですか」
佐々木さん「少しよくなってきました。還付金っていくらですか?」

犯人「あなただけ特別に振り込みましょう」

犯人「全部で5万〇〇〇〇円となっています。しかし、困ったなあ。時間がないなあ。本日中に振り込みの手続きをしないといけないのですよ。もう間に合わないなあ」
佐々木さん「ええっ、間に合わない!?」
犯人「ちょっと上司に相談してきますね。しばらくお待ちください」

と言って犯人はいったん電話を切った。

もちろん、スルガ税務署などいう役所はなく、嘘っぱちである。しかし、佐々木さんは降ってわいた「お金の話」に飛びつき、頭が沸騰してしまった。「上司との話」がどうなるのか、ジリジリと電話を待ち続けた。

数分後、ルルルルルと待ち続けた電話が鳴った。

ATM前で被害者に携帯電話から指示を出し、犯人の口座に振り込ませる(警察庁の公式サイトより)
イラスト:ATM前で被害者に携帯電話から指示を出し、犯人の口座に振り込ませる(警察庁の公式サイトより)
佐々木さん「はい、佐々木です!」
犯人「もしもし、先ほどのスルガ税務署の石田です。上司に相談したところ、今回は特別なことなので、振り込んでもいいということになりました。ただ、口外してもらっては困るのですよ。こちらにも多少、落ち度があったということで、特別に振り込むわけですから」
佐々木さん「はいはい、わかります。それでどうすればいいのですか」
犯人「佐々木さん、携帯電話とキャッシュカード持っていますか?」
佐々木さん「持っていますよ」
犯人「今すぐに近所の小林スーパーに行って、ATMから振り込みの手続きをしてもらえますか。スルガ税務署のフリーダイヤルの電話番号を申し上げますので、メモをして着いたらお電話を下さい。これはあくまで、特別のことなので、他の方に知られるとまずいのですよ。だから銀行のATMは使えないのです」

と、犯人はいったん電話を切ったのだった。

犯人「くれぐれも口外しないように」

佐々木さんは小林スーパーに走り、ATMの前から電話した。

犯人「はい、スルガ税務署です。石田と申します」
佐々木さん「あっ、石田さん? 佐々木です。今、小林スーパーのATMの前にいます。どうすればよいのですか?」

犯人は佐々木さんにキャッシュカードをATMに入れさせて、次々と指示を出した。「画面に何が見えますか?」「はい、『振り込み』を押して」「口座番号を申し上げます。〇〇銀行普通預金〇〇〇」「はい、『確認』を押して」「『戻る』を押して」「『確認』を押して」「はい、これで終了しました。お疲れ様でした」......。

イラスト:還付金詐欺のやりとり(警察庁の公式サイトより)
イラスト:還付金詐欺のやりとり(警察庁の公式サイトより)
佐々木さん「へえ、これで振り込まれるのか!」

佐々木さんは喜んだ。しかし、自分で還付金の振り込みの手続きをしているつもりで、じつは犯人側の口座に自分の預金口座から現金を振り込んでいたのだ。

犯人は最後にこう言った。あくまで「特別のこと」を強調し、佐々木さんに寄り添うかのような親切心の口調だった。

犯人「佐々木さん、間に合ってよかったですね。後日、振り込みの明細書が届きますのでお待ちください。それから、今回のことは特別のことなので、くれぐれも口外しないようにお願いしますよ」
佐々木さん「はい、はい」

佐々木さんは明細書を心待ちにしたが、ついに来なかった。会計事務所に相談してだまされたことがわかった。

   警察庁では、こう警告している。

「ATMで還付金のお金が返ってくることは絶対にありません。公的機関の名前を出されても信用しないで、電話でお金の話が出たらまず家族に相談しましょう。いつも留守番電話機能をオンにしておき、迷惑電話防止機器をつけましょう」

(福田和郎)

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