2024年 4月 24日 (水)

SDGsの先駆者、福澤桃介のルーツを訪ねて 「水力をもって国是とすべし」の信念で完成した日本初のダム式発電所

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   電力消費地のすぐ近くに簡便に設置することができる火力発電と、勾配のある川の上流、つまり山奥での大がかりな土木工事を必要とする水力発電とではどちらが大変か――。それは小学生でもわかるだろう。

   火力は化石燃料を買い続けなければならないが、水力発電となると莫大な初期投資が要る。明治・大正の日本といえば近代文明に目覚めたばかりの発展途上国であり、資本の蓄積が薄く、いくら日本は水資源が豊富といっても、水力発電などは「絵に描いた餅」も同然であった。特に人工湖を出現させるダム式となると、先進国の欧米並みの巨大資本がなければ実現不可能だったのである。

  • 大正時代、福澤桃介はすでに火力発電を環境問題の視点から見ていた(写真は、岐阜県恵那市の大井ダム)
    大正時代、福澤桃介はすでに火力発電を環境問題の視点から見ていた(写真は、岐阜県恵那市の大井ダム)
  • 大正時代、福澤桃介はすでに火力発電を環境問題の視点から見ていた(写真は、岐阜県恵那市の大井ダム)

水力発電は国・県・市町村のすべてで許認可が必要だった

   技術もなかった。当時の大井ダム(岐阜県恵那市)建設の目撃者証言によると、山を切り崩すような大型機械は日本中どこを見回してもなく、よしんば輸入したとしても工夫たちは、その使い方を知らず、相変わらず手掘りで、その横で高価な輸入機材はいたずらに錆びている、という具合であった。

   しかも、世は石炭の黄金時代であった。俗に石炭党と呼ばれる一大勢力が絶大な政治力を有し、陰に陽に水力認可に抵抗した。電力事業は認可が必要であったが、とりわけ水力発電は国・県・市町村の全段階で官庁の許認可を得なければならなかった。加えて、住民相手の水利権交渉も至難であった。

   そこへもってきて当時の電力消費といえば、照明のための電灯が主力であって、電力を動力として用いる産業はいまだ育っていなかった。そもそも水力発電を必要とするような大型需要がなかったのである。

福澤桃介氏
福澤桃介氏

   当時の国の考えは護送船団方式と呼ばれる保護主義で、需要がないのに認可をおろすと、過当競争に陥って電力事業そのものがつぶれてしまうという見解が大勢を占めた。水力か火力か。そんな論争はいわずもがなであった。必要な分ずつ必要な場所に、臨機応変に火力発電所を作っていけばよいではないか。それが圧倒的な意見であった。

   このような情勢に切り込んでいったのが福澤桃介である。「水力をもって国是とすべし」。それが桃介のゆるがぬ信念であった。実際、すべての困難をクリアして日本初のダム式水力発電「大井ダム」を出現させたのである。

   それだけではない。火力から水力へ。日本中にその機運を巻き起こした。資本はどうしたのか。国中の資金を集めても足りないところを外債というマジックを用いた。裕福なアメリカの民間人に電力会社の社債を買ってもらって資金を作ってみせたのだ。

   桃介が水力発電で安い電力を供給し始めると、化石燃料の高騰もあって火力は競争で太刀打ちできなくなった。日本中の電力会社が桃介に倣うしかなかった。資本の集め方から設計技術、大型機材の使い方に至るまで。こうして桃介は「食べられる餅」を日本中にバラまいたのである。

清水一守(しみず・かずもり)
清水一守(しみず・かずもり)
一般社団法人SDGs大学 代表理事/公益財団法人日本ユネスコ協会連盟・ユネスコクラブ日本ライン 事務局長/英国CMIサスティナビリティ(CSR)プラクティショナー資格/相続診断士
日本大学文理学部を卒業。大学では体育を専攻。卒業後、家業である食品販売店を継ぐも新聞販売店に経営転換。地域のまちづくりとして中山道赤坂宿のブランド化を推進した。その後CSR(企業の社会的責任)の重要性を学び、2018年7月から名城大学で「東海SDGsプラットフォーム」として月2回の勉強会を開催中。SDGsを広めるための学びの場として2019年9月に一般社団法人SDGs大学を開校。現在、SDGs認定資格講座やSDGsイベントなどを開催中。
岐阜県出身、1960年生まれ。
一般社団法人SDGs大学
SDGsを広めるために、誰もが伝道師となるような認定資格講座を3段階で設定。SDGsを学ぶきっかけの資格としてSDGsカタリストから始まり、その上位資格としてのアドバイザー資格、さらにカタリストを育成するカタリストトレーナー資格を設け、2015年9月の国連サミットで採択されたSDGsを他人事ではなく、『ジブンゴト』としてとらえ、実践していけるようにSDGsの研究・周知・教育を行っています。校訓として学び・実践・達成・及人を掲げ、物心両面の幸せを追求し、真の『自分ごと』を探求できる学びの『場』として、誰もが参加ができるインラインによる「SDGs大学プラットフォーム」、「SDGsキャンプ」などのセミナー、イベントを提供しています。
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