2024年 4月 19日 (金)

冬の時代終わり、にぎわう暗号資産のいま...週刊東洋経済「暗号資産」 週刊ダイヤモンド「薬剤師・薬局」、週刊エコノミスト「半導体」を特集

   「週刊東洋経済」「週刊ダイヤモンド」「週刊エコノミスト」、毎週月曜日発売のビジネス誌3誌の特集には、ビジネスパースンがフォローしたい記事が詰まっている。そのエッセンスをまとめた「ビジネス誌読み比べ」をお届けする。

  • 活況に沸く暗号資産の現況(「週刊東洋経済」の特集から)
    活況に沸く暗号資産の現況(「週刊東洋経済」の特集から)
  • 活況に沸く暗号資産の現況(「週刊東洋経済」の特集から)

NFTのデジタルアートが話題に

「週刊東洋経済」(2022年1月29日号)
「週刊東洋経済」(2022年1月29日号)

   まず、2022年1月24日発売の「週刊東洋経済」(2022年1月29日号)の特集は、「全解明 暗号資産&NFT」。ビットコインなど暗号資産が活況に沸く現況をリポート。また、NFT(非代替性トークン)、3次元仮想空間のメタバースをわかりやすく解説している。

   いまから3年前の2018年1月、日本の大手交換所コインチェックで、約580億円相当の暗号資産が流出する事件があって以降、暗号資産業界は冬の時代が続いてきた。

   しかし、代表的な暗号資産であるビットコインの価格は、2020年後半から徐々に上昇した。昨年11月には777万円(当時の為替レート)と、事件前ピーク価格の3.5倍になった(22年1月中旬には400万円台に下落)。

   米EV大手のテスラが15億ドル相当のビットコインを購入していることを発表するなど、企業にも浸透し始めている。さらに、NFT、メタバースで使い道が広がっているのも背景にある、と指摘している。

   ところで、NFT、メタバースとは一体何か。NFTとは、ブロックチェーン技術を用いた、偽造や複製が困難な唯一無二の鑑定書や証明書のこと。「Non-Fungible Token(ノン・ファンジブル・トークン)の略で、「非代替性トークン」と訳される。

   なかでも、NFTのデジタルアートは有名だ。デジタルアート自体はコピーし放題だが、NFTは唯一無二なので、1人しか保有できない。高額な取引は、転売目的の投機要素が強いとも言われる。会員権代わりに利用する使い方もあるそうだ。

   もう一つ、メタバースとはネット上の仮想空間のこと。以前、「セカンドライフ」という仮想空間があったが、尻すぼみになっていた。時代が進み、いまでは収益化が期待されている。

   特集では、ビットフライヤー、コインチェックなど、交換所ビジネスの現状、ビットコイン相場を読む裏技などを紹介。暗号資産による資産形成について指南している。

   また、NFTビジネスに沸くスポーツ界の取り組みもまとめている。プロ野球パ・リーグ6球団が出資するパシフィックリーグマーケティングはメルカリと共同で、人気選手の名場面を収めた動画トレーディングカード事業を始めた。サッカー界も手を伸ばし、Jリーグも選手の育成ゲームを展開することを発表した。

   GMOインターネットの熊谷正寿・会長兼社長は「芸術家に創作資金を還元する画期的技術だ」と話し、NFTマーケットプレースを開始した。坂本龍一さんら著名なアーティストが出品している。

   フェイスブックは昨年、社名を「メタ」に変更。メタバースに力を入れることを明らかにした。フェイスブックジャパンの味澤将宏・代表取締役は

「閉じた空間にはせず、相互の往来を可能に。ゲームやエンタメに加え、フィットネスや教育など、今後も多くの事例が生まれるだろう」

と話している。

   2007年をピークに企業が撤退した「セカンドライフ」との違いは3つあるという。1つ目はデバイスやネットワークが進化し、気軽にメタバースを楽しめること。2つ目はSNSが一般化し、バーチャルのアイデンティティーを持つことが当たり前になったこと。3つ目は、ユーザーや企業が「稼げる」機会が増えたことだ。

   すでにゲーム内ではNFTの売買が行われ、仮想の「土地」の売買で3000万円超の含み益を得た男性を紹介している。バーチャルな世界での一攫千金を夢見る人たちが参入しているようだ。リアルな世界の法規制などが及ばない「仮想空間」で、何が行われるのか、注目したい。

多すぎる薬剤師と薬局問題の着地点とは

「週刊ダイヤモンド」(2022年1月29日号)
「週刊ダイヤモンド」(2022年1月29日号)

   次に、「週刊ダイヤモンド」(2022年1月29日号)の特集は、「薬剤師31万人 薬局6万店 大淘汰」というおどろおどろしいタイトルがついている。いま、何が起きているのか。

   厚生労働省は昨年夏、こんな警鐘を鳴らした――薬剤師は2045年には最大12.6万人過剰になる、と。

   そして、増えすぎた薬局を減らす施策も打ち出している。実際、乱立する門前薬局を狙い撃ちした調剤報酬の大幅減額が行われた。2020年度の診療報酬改定で、一般的な薬局の調剤技術料は42点(1点=10円)。

   これが、月に4000枚以上の処方箋を受け付け、集中率が75%を超える薬局などの場合は、26点に減らされる。大手チェーンを念頭に、さらに厳しい減額も実施。

「病院の門前で薬をただ出すだけの薬局は評価しないという姿勢が鮮明になった」

   しかも昨年11月には、コロナ経口薬を供給する薬局をリストアップし、選別を進めた。現在6万店ある薬局だが、淘汰が進みそうだ、と見ている。

   これに関連して、都道府県別の薬剤師の平均年収ランキングを公開している。トップは山口県の780万円。2位は福島県の737.4万円で、3位は宮城県の677.9万円。最下位は沖縄県の461.4万円。300万円以上の差がある。これには理由があって、マリンスポーツを楽しみたいなど、沖縄を希望する薬剤師が多く、給与水準が低くても、人が集まりやすいからだという。

   ほかの九州各県も下位が目立っていた。薬学部のある大学が九州には多く、若手薬剤師が供給されやすい、という地域ならではの事情のようだ。同様に、薬学部が多い東京都もランキング44位。慢性的に薬剤師が供給過剰で、年収相場が下がっている。

   薬剤師が増えた一員は、薬学部が乱立したからだ。

   薬学部6年制が始まる前の2002年度の薬学部の定員は8200人だったが、2020年度は1万1602人と、約1.4倍にまで増加した。あわせて、全国55私立大学薬学部の「淘汰危険度」ランキングを掲載している。

   ワースト1位は、姫路獨協大学。国家試験合格率は35.6%。2位は千葉科学大学だ。加計学園が設置者で、19年4月から4年制の薬学部生命薬科学科の募集を停止し、6年制の薬学科の存続が危ぶまれる。

   成り手が増えれば、収入が下がるのは当たり前だ。だが、この20年間は異様なスピードで、薬剤師が増えたことがわかる。こうしたことが受験生にも伝わると、ますます志願者が減ると思われるが、どうだろう。

   高額な学費を6年間払っても、割に合わないという声がある。そこで、奨学金を肩代わりする手法で人を集めているドラッグストアを紹介している。就職先によって、収入に差があるのも薬剤師の特徴だ。業界に関心がある人に一読を勧めたい。

メタバースが半導体需要増やす

「週刊エコノミスト」(2022年2月1日号)
「週刊エコノミスト」(2022年2月1日号)

   最後に、「週刊エコノミスト」(2022年2月1日号)の特集は、「需要大爆発 半導体」。メタバース(仮想空間)の到来やグリーン投資の必要性から、半導体産業は新しい成長ステージに入ったという。

   これまで半導体市場をけん引してきた個人消費から、社会インフラなどの政府投資も加わり、半導体需要が飛躍的に増大するというのだ。インフォーマインテリジェンス、シニアコンサルティングディレクターの南川明さんは、「データセンターへの投資が増加する背景には、米国の巨大IT企業5社『GAFAM』のビジネスモデル変革がある」と指摘する。

   これまでの広告収入を中心とした稼ぎ方から、インターネット上の仮想空間「メタバース」にAR(拡張現実)、VR(仮想現実)技術とサービスを組み合わせ、新たな収益源とする流れに変わりつつあるという。

   相当のコンピューティング能力が求められ、先端ロジック半導体やメモリーの需要が想定以上に伸びていく可能性が高まった。

   半導体市場でこうした動きが加速しているのは、新型コロナの蔓延でデータ需要が高まったことや、各国政府が進めるグリーン投資も影響を与えている。

   あらゆるものがネットにつながる「IoT」が進むことで、自動車などが効率的に運用され、二酸化炭素の排出が抑えられることになるからだ。

   IoTにはデータセンターが欠かせない。本誌で南川さんは、近い将来、小型のデータセンターが増える、と見ている。また、今後は産業機器で使われるアナログ半導体やパワー半導体、センサーなどの需要が拡大すると予測する。

   台湾TSMCが熊本に工場を設立することが決まった。経産省から多額の補助金も出る。しかし、持ち込まれる製造技術は10年前の技術であり、日本のためにはならない、と服部コンサルティング・インターナショナルの服部毅代表は警告している。

   「メタバース」は、「週刊東洋経済」も特集している。あわせて読むことで、理解が深まった。

(渡辺淳悦)

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