2024年 4月 23日 (火)

過去最悪のクレカ不正利用被害...330億円 手口も変化「番号盗用被害」拡大、未成年や新成人「後払い決済」も懸念(鷲尾香一)

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   日本クレジット協会が2022年3月31日に発表した2021年のクレジットカードの不正利用被害額は330億円と2000年以来の300億円台乗せとなり、過去最高額を更新した。

  • クレジットカードの不正利用被害額が大幅増加(写真はイメージ)
    クレジットカードの不正利用被害額が大幅増加(写真はイメージ)
  • クレジットカードの不正利用被害額が大幅増加(写真はイメージ)

偽造カード被害は減少も、それ以上に拡大する「番号盗用被害」

   クレジットカードの不正利用被害額は2000年の308.7億円をピークに減少を続け、2012年には68.1億円まで減少した。しかし、2013年からは再び増加に転じ、2021年に330.1億円(前年比30.5%増)と大幅に増加した=表1

   2021年の不正利用被害額の内訳は、偽造または変造されたクレジットカードによる不正利用額が1.5億円(同81.3%減)、クレジットカード番号などの情報を抜き出して不正に決済された番号盗用被害額は311.7億円(同39.4%増)、紛失・盗難カードなどによるその他不正利用被害額は16.9億円(同21.0%減)だった。 クレジットカードの不正利用はここ20年間で大きく変化している。2003年の被害額271.8億円のうち164.4億円が偽造カードによるもので、被害額の60.5%を占めていた。

   だが、偽造防止技術の進歩などにより、偽造カードによる被害は減少の一途を辿った。半面、不正利用の手口として大きく増加したのが番号盗用で、2021年の被害額の割合を見ると、偽造カードが0.5%だったのに対して、番号盗用が94.4%を占めている=表2

   クレジットカードの偽造による被害は、これまで60~70%が海外での被害であったが、2021年には国内被害額が0.8億円(53.3%)、海外被害額が0.7億円(46.7%)と、わずかながら逆転し、国内被害額が多くなった。

   番号盗用による被害もこれまで60%台だった国内被害額が2020年に初めて70%台となり、2021年には311.7億円の被害額のうち、国内が235.2億円と75.5%を占めた。

   とくに番号盗用による国内被害額が増加した背景には、新型コロナウイルスの感染拡大により、海外旅行など海外への渡航が大幅に減少したことも関係していそうだ。さらに、外出自粛などにより、通販やネットショッピングでの物品購入が増加したことも関係している可能性がありそうだ。

未成年の3割近くが後払い決済「利用経験ある」

   クレジットカードに限ったものではないが、関西大学の研究チームが3月24日に発表した「未成年者の金融行動調査」によると、15歳から19歳の未成年者を対象として、後払い決済の利用に関して行った調査では、回答者数2000人のうち570人が「利用経験がある」と回答している。

   年齢別では、18・19歳で35%、15-17歳で24%を占めている。男女別では一般的に男性の方が金融活動に活発な傾向が強いが、こと後払い決済の利用に関しては18・19歳では男性29%、女性40%、15-17歳では男性20%、女性28%と、女性の利用経験者が高い傾向が現れた。

   注目すべきは、今年4月から成人年齢が引き下げられ、新成人となったばかりの18・19歳で利用経験がある人のうち約26%が「手持ちの現金や預金などを合わせても払えない金額の買い物」を後払い決済した経験があった。この比率は、新成人男性利用者に限れば35%、15-17歳男性では39%のぼった。

   さらに、「期日までにお金を払えなかったことがある」との回答が、利用経験者570人のうち188人(33%)もいた。この割合は、18・19歳では30%(男性37%・女性26%)、15-17歳では36%(男性49%・女性27%)で女性よりも男性の方が髙かった。

   利用にあたって保護者の事前許可を得ず利用した人の割合は、利用経験者のうち224人(41%)にものぼった。18・19歳では51%(男性 44%・女性 56%)、15-17歳では30%(男性29%・女性32%)だった。

   18・19歳は4月に新成人となったことで、クレジットカードを始め、こうした金融取引を親の承諾なしに行えることになる。

   学校教育を通じて、未成年者の金融教育を十分に行っていかないと、成人した途端に自己破産しなければならない若者が出てくる危険性がある。

鷲尾香一(わしお・きょういち)
鷲尾香一(わしお・こういち)
経済ジャーナリスト
元ロイター通信編集委員。外国為替、債券、短期金融、株式の各市場を担当後、財務省、経済産業省、国土交通省、金融庁、検察庁、日本銀行、東京証券取引所などを担当。マクロ経済政策から企業ニュース、政治問題から社会問題まで、さまざまな分野で取材。執筆活動を行っている。
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