2024年 4月 17日 (水)

多様な人材こそイノベーションの原動力! 「なでしこ銘柄」6回選出のLIXIL、早期復職、フレックス...充実サポートで女性活躍後押し/LIXILの小竹茜さん、小林真理さんに聞く

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   株式会社LIXILは2011年、トイレ、お風呂、キッチンなどの水まわり製品や窓、ドア、インテリア、エクステリアなどの建材製品を開発、提供してきた5社が統合されて誕生した業界最大手企業だ。

   その後、海外の世界的ブランドを傘下に収め、世界150か国以上で約5万人の従業員を擁するグローバル企業となった。ダイバーシティ&インクルージョン(D&I)の取り組みが目覚ましい。D&Iの一環となる、日本国内の女性活躍推進の活動では、女性活躍推進に優れた上場企業が選ばれる「なでしこ銘柄」にこれまで6回選出されている。

   今回、LIXIL誕生後どのような活動を進めてきたのか――。D&Iグローバルリーダーの小竹茜さん、D&I国内担当の小林真理さんにうかがった。

  • 2021年の国際女性デーにあわせて行われた社内キャンペーン「#ChooseToChange」(変化を選ぶ)では、このスローガンに関する意気込み、メッセージ、写真を社内SNSで共有した
    2021年の国際女性デーにあわせて行われた社内キャンペーン「#ChooseToChange」(変化を選ぶ)では、このスローガンに関する意気込み、メッセージ、写真を社内SNSで共有した
  • 2021年の国際女性デーにあわせて行われた社内キャンペーン「#ChooseToChange」(変化を選ぶ)では、このスローガンに関する意気込み、メッセージ、写真を社内SNSで共有した

CR戦略では「多様性の尊重」が優先分野のひとつ

LIXIL D&I国内担当の小林真理さん
LIXIL D&I国内担当の小林真理さん

――グローバル企業となり、女性活躍推進をどのように進めてきたのですか。

小林真理さん「女性活躍はLIXILになってから、とくに注目されるようになりました。LIXILになる以前の旧個社もそれぞれの制度はありましたが、女性を含む誰もが働きやすくするためには、どのような制度が必要なのか検討し、新たな制度設計、施策を行いながら現在の制度になっていきました。10年近くが経ち、LIXILになってから入社したメンバーも増えました。現在、制度も整えられ、より多様な人材が働いている環境になっていると感じています」
小竹茜さん「2011年、国内での統合に加え、海外企業との統合を通じてグローバル企業となりました。国内というよりは、海外のスタンダードとも照らし合わせたときに、女性の管理職が少なく、多様な人材をさらに活かしていかなければならないと考え、ダイバーシティに取り組んできました。2015年にコーポレート・レスポンシビリティ(CR)戦略を立て、『多様性の尊重』を優先分野の一つとして掲げました。また、2019年には『グローバルD&I部』を設立し、全世界共通のD&I推進施策の展開に取り組んでいます」

――女性管理職を伸ばすために取り組んできたことを教えてください。

小竹さん「2021年4月にD&I戦略を更新し、2030年までに全世界の管理職の30%を女性とするという目標を設定しました。日本でも、実力を持った女性が昇進し、活躍できるような環境づくりを推進しています。たとえば、日本国内で2020年3月期まで実施していた次世代経営人材育成プログラム『TAP(Talent Acceleration Program)』では、若手クラスの受講者の女性比率を20%以上とする目標を毎年達成してきました。さらに2021年3月期からは、次世代の幹部候補人材を対象とした選抜型の人材育成プログラム『NEXT/NEXT 2nd』を開始し、引き続き女性の活躍推進に取り組んでいます」
小林さん「文化醸成として、日本では2013年に女性にフォーカスした従業員ネットワーク『LIXIL Women's Network』を立ち上げました。その後2017年には女性だけでなく、育児・介護、障がい、性的マイノリティなどテーマを広げ、『LIXIL Diversity Network』に拡大しています。女性にフォーカスした活動では、男性中心である建設業界で直面する悩みや課題を従業員同士が共有し、解決のための行動につなげています。2022年2月には、さらにこの活動を発展させるべく、グローバルでのERG(Employee Resource Group:従業員リソースグループ)を立ち上げ、よりインクルーシブな環境の構築を進めていきます」

コロナをきっかけに在宅勤務が定着...気持ちもラクに、育休復帰しやすい

LIXIL D&Iグローバルリーダーの小竹茜さん
LIXIL D&Iグローバルリーダーの小竹茜さん

――誰もが働きやすい環境づくりの中で、女性活躍を後押しする取り組みをご紹介ください。

小竹さん「日本では産後の休みが長く、キャリアのブランクが長く発生しがちですが、早く帰ってきたい従業員が早く復職できるように『早期復職サポート金制度』を設けました。育児休業からの復職にあたって発生する費用(ベビーシッターや保育所等)のサポートを行うことで、早期復職を促進し、極力キャリアを止めずにモチベーション高く、長く働き続けられる環境作りを行う目的です。当社では育児休業も法定以上に取得できますが、従業員の環境や意向によって、復帰時期を選べるよう制度を整えています。このほかに、『子どもの看護休暇(有給)』や、つわりや不妊治療のために使える『セルフケア休暇』など、ライフステージに合わせて、異なるニーズを持つ従業員をサポートする制度の拡充を図っています」

――さまざまな制度が充実しているのですね。

小竹さん「はい。また、2021年3月期は、コロナ禍における新しい働き方として、在宅勤務をはじめとしたテレワーク制度をより柔軟に活用できるよう変更しました。従来のフレックスタイムのコアタイムを廃止し、これまで以上に、従業員が主体的に働く時間を選択できる『スーパーフレックス制度』を導入しました。もっとも、コロナ禍以前から、フレックスタイムの採用やテレワークをトライアルスタートしていました。在宅で仕事ができる体制をいち早く整えていたことで、スムーズに移行できました。たとえば、子どもの行事や通院があっても途中で仕事を抜けて、また戻ることができるなど、仕事と子育ての両立がしやすくなりました。
テレワーク制度は、『週何回出社しなければならない』などの制限がないため、都内から離れ、自分が住みたい場所に引っ越した人もいます。私自身も2021年に育休から復帰し、この制度のおかげで、仕事と育児の両立ができていると感じています。子育てをしてわかったことは、朝の子どもの世話や病院などでしなくてはならないことが多いこと。また、通常勤務の時間帯に、会社にいられないことも突発的に発生することです。子どもが病気になると日中、子どもの面倒を見る必要がありますが、テレワークとフレックスのおかげで、働く時間と場所に制限が一切なく、自分が働ける時間に家で仕事ができます。時短ではなく、通常の勤務ができてありがたい制度だと思っています」
小林さん「私は、第一子出産後の復帰が2012年でした。当時はテレワーク制度もなく、毎日通勤だったため、時短勤務を利用しての復帰でした。周囲への遠慮から『すみません、お先に失礼します』と言って帰るという状態でした。今、育休復帰した従業員に聞くと、コロナをきっかけに、在宅勤務が誰もが当たり前として受け入れられる体制になったことで、心理的にもラクになっている、との意見が出ています。また、通勤時間が無くなったことで、フルタイムでの復帰がかなったり、子どもとの時間も増やせたり、と、育児との両立の面でプラスになっていることが多いと感じています」

――LIXILの人材育成プログラムにはどんなものがありますか。

小竹さん「次世代の幹部候補人材を対象とした選抜型の人材育成プログラム『NEXT/NEXT 2nd』があります。NEXTは経営幹部候補向け、NEXT 2ndは管理職候補向けのものです。優秀な若手人材の早期育成、抜擢・登用をより一層進めていくことを目的にしています。これができた背景の一つには、日本は海外に比べると昇進が遅い傾向があり、とくに女性は子どもを産み育てる時期と昇進が重なり忙しくなることもあります。
具体的な内容としては、OJTとレクチャー、座学で、各自の育成プランをもとに育成責任者をつけて実施しています。最近は、経営幹部を含め、自身の希望する方にメンターになっていただき支援を受けられる、メンター制度もスタートしました。自身がどのように成長したいかによってメンターを選べる有益なプログラムになっています。当社では入社から退職までの従業員一人ひとりが歩んでいく道のりを『キャリアジャーニー』として、すべての従業員が自身主導で充実したキャリアジャーニーを歩んでいくことができるよう、キャリアオーナーシップの考え方を数年前から全従業員に向けて繰り返し発信しています」

多様化する顧客ニーズに応えるには...D&I推進が原動力

ERG(Employee Resource Group:従業員リソースグループ)のオンラインランチ会
ERG(Employee Resource Group:従業員リソースグループ)のオンラインランチ会

――キャリアオーナーシップが反映されるような取り組み例があれば教えてください。

小林さん「キャリア申告制度において、年1回、必ずマネージャーと1on1で将来のキャリアについて話し合う場を設け、キャリア実現に向けたサポートを実施しています。また、特定の職種を公募する『Job Posting制度』があり、従業員が自身でキャリアを選択できる仕組みを展開しています。2021年3月期は制度を拡充し、年1回の募集から随時募集ができるようになりました。ここでは、どのポストにどんなスキルが必要か提示されているので、キャリアを考えることにもつながっていると思います。時代の変化とともに組織も変革しています」

――女性活躍を含むD&Iの推進の成果と、今後ついてはいかがでしょうか。

小林さん「女性を中心としたチームで企画開発された外付日よけの『スタイルシェード』や、2021年9月に発売されたキャットウォール『猫壁(にゃんぺき)』のプロジェクトリーダーは女性が担当しています。多様化する顧客ニーズに対応したLIXILの製品やサービスを提供するためにも、D&I推進は不可欠なものです。
たとえば、既存のものではなく、未来に向けたものをつくる『スリーボックス』と呼ばれる手法を導入して、今はない商品やサービスでもLIXILとしてできるのではないかというアイデアを募る『ミライBOX』という仕組みがあります。また、社内SNSでは、気軽にアイデアの提案や意見を投稿することができます。このように、アイデアが出やすい、伝えやすい環境をつくるためには、多様な従業員が思った意見を臆することなく共有できる、インクルーシブな環境の構築が重要と考えて取り組んでいます。 今期、全従業員向けにD&Iのeラーニングを行いました。LIXILにおけるD&Iの重要性、インクルージョンを実現するために必要なアンコンシャスバイアス、心理的安全性の基礎知識をコンテンツに取り入れました。今後も、D&Iの認識・理解を促す取り組みを実施していきます」
小竹さん「イノベーションを生み出す組織には多様な人材がいて、人材が自分らしく働けて自分の意見を出せることで起きやすいということがわかっています。LIXLもイノベーションを生むために、そのような企業文化を構築していきます。
2021年にD&I戦略を更新し、2030年までに『取締役および執行役員の50%を女性にする。2030年までに全世界の管理職の30%を女性にする。日本の新卒採用を男女同率とする』ことを掲げており、日本国内でも目標達成に向けて、活動を加速させていきたいと考えています」

(聞き手:水野矩美加)



【プロフィール】
小竹 茜

HR部門 D&I Monitoring&Governance リーダー

大学卒業後、PR企業勤務、英国留学を経て、2014年に入社。コーポレートレスポンシビリティ(CR)を担当し、現在のCR戦略の企画・策定を担当。2019年9月グローバルD&I部新設時に現職に就任し、グローバルの D&I 推進を担当。

小林 真理
HR部門 D&I Monitoring&Governance

2002年新卒入社。サッシ建材工場で現場のものづくり、生産管理業務を経験後、ハウジング事業の生産管理部・エクステリア事業部で、工場の業務改善や、営業~商品開発~生産を連携するスタッフ職に従事。2020年10月より現職、日本国内のD&I推進を担当。

水野 矩美加(みずの・くみか)
水野 矩美加(みずの・くみか)
アパレル、コンサルタント会社を経てキャリアデザインをはじめとする人材教育に携わる。多くの研修を行う中で働き方、外見演出、話し方などの自己表現方法がコミュニケーションに与える影響に関心を持ち探求。2017年から、ライター活動もスタート。個人のキャリア、女性活躍、ダイバーシティに関わる内容をテーマに扱っている。
戸川 明美(とがわ・あけみ)
戸川 明美(とがわ・あけみ)
10数年の金融機関OLの経験を経て、2015年からフリーライター、翻訳業をスタート。企業への取材&ライティングを多く行う中で、女性活躍やダイバーシティの推進、働き方の取り組みに興味をもつ。
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