2024年 4月 19日 (金)

トヨタに迫る3つの試練とは?...東洋経済「独走トヨタ」、ダイヤモンド「激変!大学」、エコノミスト「世界経済総予測」を特集

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   「週刊東洋経済」「週刊ダイヤモンド」「週刊エコノミスト」、毎週月曜日発売のビジネス誌3誌の特集には、ビジネスパースンがフォローしたい記事が詰まっている。そのエッセンスをまとめた「ビジネス誌読み比べ」をお届けする。

  • トヨタを取り上げた(「週刊東洋経済」の特集から)
    トヨタを取り上げた(「週刊東洋経済」の特集から)
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日本経済全体に影響及ぼすトヨタ自動車の動向とは

   「週刊東洋経済」(2022年8月6日号)は、「独走トヨタ 迫る試練」と題し、自動車産業の覇者にして、日本経済を牽引するトヨタ自動車が直面する3つの試練をレポートしている。

◆1つ目の試練

   1つ目はコロナ禍などが引き起こした生産の不安定化だ。7月15日に千葉・幕張メッセで開かれた新型クラウンのワールドプレミアでは、豊田章男社長が壮大なプレゼンテーションがあった。

   ここで披露されたのは、国内専用車だったクラウンを今後はグローバルモデルとして展開。セダンだけでなくSUV(スポーツ用多目的車)など4つの車形をそろえ、米国や中国、中近東など40の国と地域で発売するというものだった。

   ところが、新型クラウンの発売時期は「2022年秋ごろ」である以外、決まっていないというのだ。「品質確保に時間を要する」として、受注を延期したという。5月に発売したばかりの電気自動車(EV)「bZ4X」のリコールと関連づける関係者の声を紹介している。タイヤを取り付けるハブボルトの構造が、新型クラウンとbZ4Xは同じで、不具合の原因が明らかになっていないのも異例だ。

   このように、生産面にさまざまな問題が生じているらしい。当初の生産計画に対し、実績が下ぶれる状況が続いているのが最大の問題だ。

   受注残は世界で約200万台にまで膨れ上がり、早期の解消は難しい、と見られる。にもかかわらず、トヨタでは5月から生産担当の執行役員が不在という状況が続いている。

   21年10月頃、年間1200万台という世界生産計画が浮上したが、従来の過去最高生産台数の908万台に比べると未曾有の数字。半導体不足などを考慮し、1100万台に引き下げられ、仕入れ先に提示された。

   ところが、サプライヤーからは「到底到達できる水準ではない」と戸惑いの声が相次ぎ、その結果、5月に「身の丈」として示した今期の世界生産計画が970万台だという。だが、この数字でさえ達成が難しいと見られ、サプライヤーとの間に隙間風が吹いているとも。

   「われわれとサプライヤーは一心同体」「1100万台は生産能力の確認」という生産・調達の責任者のインタビューを載せているが、生産計画と実績が乖離した状態の解消は難しいようだ。

◆2つ目、3つ目の試練

   2つ目の試練は、パートナー企業で生じる品質問題などアライアンスのリスクへの対応だ。

   具体的には、子会社・日野自動車のエンジン不正問題だ。量産に必要な型式指定を取得するための認証試験で不正行為を働き、エンジンの排出ガスと燃費をよりよい数値が出るように偽った。

   対象車種は出荷停止になり、一部の中型トラックはリコールになった。不正調査の終わりは見えず、トラックユーザーである物流業者からは「日野離れ」も起きているという。

   トヨタとの関係を持つ国内メーカーはほかにも、完全子会社のダイハツ工業をはじめ、スバル、マツダ、スズキがあり、こうした「トヨタグループ」の年間販売台数は国内の6割を超える。トヨタに依存するが、それぞれ課題を抱えており、グループの結束力が問われると指摘している。

   3つ目は販売会社との関係見直しだ。新車の納車が進まず、赤字になる販売店もあるという。展示車も十分に並べることができず、新車の代わりに中古車を並べる店も出てきているそうだ。

   トヨタは20年5月に販売チャンネルを超える全車種併売化に踏み切った。

   だが、一部車種に人気が集中したため、生産が追い付かず、納期が長くなる要因になった。トヨタは需給ひっ迫度やモデルの鮮度に応じてマージンを変動させる制度の導入を検討しているという。しかし、この施策はディーラーの選別にもつながりかねず、販社には警戒感もある。

   トヨタの動向は日本経済全体にも影響するだけに、こうしたトヨタについての分析記事は関心をもって読まれるだろう。

私立大学の入学定員基準は緩和?

   「週刊ダイヤモンド」(2022年8月6日・13日合併号)は、「激変!大学 入試 序列 就職」と題し、様変わりする大学事情をまとめている。

   22年に実施2回目を迎えた大学共通テストが難しかったことが話題になったが、23年入試はどうなるのか? 河合塾など大学受験関係者の声を紹介している。

   確実視されているのが、競争の緩和だ。18歳人口が今年より約2万人減になり、110万人を割り込む。逆に大学・学部新設によって入学定員増が見込まれており、競争緩和が進むと見られる。

   また、大学入試センター試験時代も含めて、7科目で過去最低の平均点となった大学共通テストだが、「数学を中心に、難易度や出題量が易化される可能性が高い」と見られる。

   さらに、23年入試で新たな「変数」になると見られているのが、6月に明らかになった私立大の入学定員基準の緩和だという。

   文科省は定員の厳格化を求め、入学者が定員の1.1倍を超えると補助金をカットする政策を16~18年度続けてきた。その結果、難関私立大を中心に、合格者数を抑える動きが強まり、追加(補欠)合格者を出し、入学者を確保するようになった。

   滑り止めの大学に入学金を納めたあとに、もともとの志望大学から追加合格の通知が届き、あらためて志望大学への手続きをするという「二重払い」問題が浮上し、文科省への批判が高まった。文科省は入学定員基準をこれまでの1学年単位から全学年単位へ変更することしたため、大学側の裁量が大きくなると見られている。

   だが、この方針転換は、各私立大の入試戦略にも影響を及ぼしそうだという。受験生も単純に喜んではいられないようだ。

   早稲田大学では追加合格者比率はわずか6%だが、慶応義塾大学は15%、上智大学は32%と追加合格者の出し方には大きな違いがある。各大学が合格者数をどう見込むか、難易度にも影響が出そうだ。

◆早稲田大学政経学部、慶応義塾大学法学部を逆転

   入試レベルで大学の「序列」には、変化が出ているという。

   早稲田大学の政経学部と慶応義塾大学の法学部。ダブル合格した場合、どちらに入学するか。18~20年のデータでは、早稲田大学が完敗だったが、21年入試で早稲田が逆転し、22年も優勢だった。原因は数学を必須化した早稲田の入試改革と関係者は見ている。

   入試改革のほか、学部新設やキャンパスの移転によっても大学の「序列」は変わる可能性があるとして、東洋大学や東京理科大の動きを紹介している。

   関西では、大阪市立大学と大阪府立大学が統合し、打倒・神戸大学を掲げる大阪公立大学の初入試が行われ、注目された。ところが、志願者数も志願倍率も以前よりダウンした。

   「共通テスト難化の影響を、関西の国公立大の中で最も被ったと分析している」と同大学幹部。共通テストの配点比率が他大学より高いため、共通テストの結果が思わしくないと判断した受験生が一つレベルの低い大学へ逃げたからだ。

   だが、近畿2府4県以外からの出願者の割合が4ポイント近く伸びたため、より全国型となり、知名度は上がったようだ。

   このほか、データサイエンス学部が新設ラッシュで、理系学部の従来の「序列」に変化が出ると予想している。

   近畿大学は22年新設の情報学部で「関西私大のトップになることが、一つのステップ」としており、「関関同立」「産近甲龍」という序列グループの壁を打ち破ることが出来るのか注目している。

意外と底堅い米国経済

   「週刊エコノミスト」(2022年8月9日・16日合併号)の特集は、「世界経済総予測 22年下期」。インフレ、ウクライナ戦争、今秋の米中間選挙など、重要なタイミングを迎える世界・日本経済をさまざまな角度から展望している。

   世界的なインフレ加速にともない、中央銀行が急速な利上げによって金融引き締めを行っている。ロシアによるウクライナ侵攻も先行きが見えず、世界経済の行方が懸念されるが、世界のGDP(国内総生産)の4分の1を占める米国は意外と底堅いと分析している。

   米国のインフレ率は年末にかけて徐々に下がっていく見通しで、景気後退は避けられそうだというのだ。

   背景の一つが、米株価の踏みとどまり。年初からの金融引き締めに伴い、米S&P500株価指数は今年6月、年初から一時、2割以上も下落したが、それでもなお7月下旬時点でコロナ禍前の高値を上回って推移している。

   同誌が国内金融機関・シンクタンク主要16社に米国の景気後退入りの時期についてアンケート調査したところ、7社が23年中の景気後退を見込んでいないと回答した。

   ウクライナ戦争については、「長期戦」か「年内停戦」か、NATO(北大西洋条約機構)内でも見通しが割れる、と佐藤丙午氏(拓殖大学国際学部教授)が寄稿している。

   英米カナダが長期戦を覚悟して、ウクライナ側への武器支援に積極的なのに対し、仏独伊などは年内の停戦を求めているという。

   現時点での停戦のあっせんは、ナチスドイツの主張を容認した「ミュンヘンの宥和」の再来と批判されるため、ウクライナにとっても、戦争の長期化は必然となり、問題はNATOを巻き込む「世界戦争」へと発展する可能性があるかどうかだという。

   エネルギーについて、岩間剛一氏(和光大学経済経営学部教授)は、原油のWTI先物価格は年末に過去最高値となる1バレル150ドル超えも視野に入ると予想。対ロシア制裁は解除されそうもなく、長期的にも原油・LNG(液化天然ガス)価格には強い上昇圧力が続くと見ている。

(渡辺淳悦)

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