2024年 4月 26日 (金)

2025年、この11社が銀行業界に「破壊」をもたらすのか?

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   「2025年、日本の銀行はこの11社に飲み込まれる!」。刺激的な惹句を本の帯に巻いているのが、本書「銀行を淘汰する破壊的企業」(SBクリエイティブ)である。いったいどういうことなのか。気になって読んでみると、想像を絶する過酷な銀行と銀行員の近未来像が描かれていた。

「銀行を淘汰する破壊的企業」山本康正著(SBクリエイティブ)

   著者の山本康正さんは1981年大阪府生まれ。東京大学で修士号取得後、三菱UFJ銀行のニューヨーク支店勤務という条件で同行に就職。その後、ハーバード大学大学院で理学修士号を得て、グーグルに入社。メガバンク、証券会社などの金融機関幹部にフィンテックの導入やDX(デジタルトランスフォーメーション)を支援してきた。

   現在、ベンチャーキャピタリストとして活動する傍ら、京都大学大学院総合生存学館特任教授も務める。著書に「次のテクノロジーで世界はどう変わるのか」「シリコンバレーのVC=ベンチャーキャピタリストは何を見ているのか」などがある。

口座の概念がないアップルバンクが「銀行」を変える?

   本書はグーグル、フェイスブック、アップル、ペイパル、ストライプ、アント、アファーム、コインベース、キャベッジ、ロビンフッドという、これから銀行業界に大きな影響力を持つ世界最先端の11社を分析することで、2025年の銀行の姿を読み解く「未来予測」書だ。

   書き出しは、現在から2年後の2024年を予測して書かれている。

   ――アップルが開始したアップルバンクが日本に上陸、わずか数カ月後には従来のネットバンキングの口座数を抜き去り、利用者はメガバンクに匹敵する2500万人になった、という記述から始まるのだ。

   アップルバンクは、スマホですべての手続きやサービスが完結する、デジタルバンクだ。最新のiOS、バージョン18のインストール時に、アップルバンクアプリがデフォルトでセットになることで、国内のiPhoneユーザーの約半数が使う、モンスターアプリになるだろう。

   アップルバンクには、もはや従来の口座という概念がない。「Apple ID」と紐づくサービスだからだ。従来の銀行とのやり取りの際には口座が必要だが、特に銀行の窓口に行く必要はない。すべて、ネットで完結する。その最大の特徴は、現金をほぼ使わないことだ。

   そして、アップルバンクに限らず、「2025年の世界」ではデジタル通貨が普及し、これまでの現金に代わり、電子決済が当たり前になっている、と書いている。

   以上が、山本さんの予測だが、夢物語ではない。ほぼそうなるという前提で山本さんは書いている。

   本書のコンセプトは、以下のようになっている。第1部で上述の11社の思惑と銀行業界に起こす3つのトレンドをまず紹介。第2部で銀行が生き残る処方箋を示している。各社の思惑とはこうだ。

・アップルは上述のように、「銀行」の業務を再定義する。
・アマゾンは保険、ローン、手数料などのすべてが破壊的に安く、速い「銀行」を作る。
・フェイスブック(現・メタ)は国際送金に革命を起こす。
・グーグルはグーグルペイですべての金融サービスを意識なく完結させる。
・ペイパルはデジタルバンクをつくり、ネット決済を牛耳る。
・10兆円ベンチャーのストライプは、ネット決済をより簡便にする。
・アントはアマゾンと「二大巨大銀行」になり、世界最速で金融のデジタル化を推進する。
・アファームは「ローン=住宅」の常識を180度変える。
・コインベースはすべての証券取引所と証券会社を淘汰する。
・キャベッジは「低金利」「24時間対応」「10分」のローン審査で銀行のローン事業を破壊する。
・ロビンフッドは堅苦しい金融サービスをゲームのようにする。

すべての銀行手数料がゼロになる時代が到来するのか?

   これらの結果、銀行業界に起きるメガトレンドとは何か。

・すべての銀行手数料がゼロになる
・預金量よりもデータを持つ銀行が未来を制す
・24時間365日開いている銀行が標準

   こうした変化を信じることは、できるだろうか。

   本書では、銀行が生き残る方策も詳しく書いている。ここでは、個々の銀行員が生き残るためのスキルやマインドセットを紹介したい。

   20代は徹底的に金融の基礎知識を身につけること。特に「ポートフォリオ理論」が重要だ。参考書に「フィナンシャルエンジニアリング」(ジョン・ハル著)を勧めている。

   アメリカのトップ10の大学に自費で留学するのもムダではないという。いかに現在の銀行が置かれている状況、特に日本の状況が厳しいかを身に染みて知ることができるという。

   30代、40代にはテクノロジーとの関係性を考えることを勧めている。検討した結果、AIの方が市場から支持されるとの結論に達したら、そのようなAIを開発しているフィンテックベンチャーへの転職を勧めている。

   何もエンジニアになる必要はない。マネジメントが得意であれば、資金や人材を束ね、新たなベンチャーを興してもいい。50代については言及していない。現在でも少数の役員候補を除けば、50代で銀行に残っている人はほぼいない。ほとんど転籍しているからだ。

   必要なのは英語、データサイエンス、プログラミング、ファイナンス、ビジネスモデルが読めるという5つのスキルだ。「これらすべてを20代のうちに終わらせるような気持ちで臨んでもらいたい」と呼び掛けている。

   従来の銀行の営業スタイルを続けているような銀行は淘汰されるだろうし、銀行員も生き残ることは難しいと思った。

   最近ようやくネットバンキングに移行した評者だが、その便利さには驚いている。本書に予測として書かれているアップルバンクなどのアプリが利用できるようになれば、すぐに導入したいと思った。

   数年後には、日本の銀行に口座だけは残るだろうが、ほとんど実態のないものになるのだろうか。「ATM、店舗、窓口の行員 すべてが消える世界」。近未来はそこまで来ている。久しぶりに震撼するビジネス書に出会った。

(渡辺淳悦)

「銀行を淘汰する破壊的企業」
山本康正著
SBクリエイティブ
990円(税込)

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