2024年 4月 28日 (日)

口コミ装う「ステマ」商法、その実態は? インフルエンサーの4割、広告主から依頼ありの調査結果 「フォロワー騙したくない」と抵抗する人もいるが...

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   「ほら、こんなにキレイになっちゃった。私のイチ押し、ぜひ使ってみてね」......。こんなふうに、広告であることを隠し、芸能人やインフルエンサーらを使って商品を勧める「ステマ」(ステルスマーケティング)が後を絶たないため、消費者庁が規制に乗り出した。

   2022年9月16日、神戸大学の中川丈久教授(消費者行政)を座長とする第1回検討会議を開き「ステルスマーケティングに関する実態調査」を発表した。

   なかでも注目されるのは、情報発信の影響力が大きいインフルエンサーに「アンケート調査」を行い、「ステマ」の実態に迫ったこと。広告主から「ステマ」を依頼された人が4割もいたのだ。

  • SNSなどで影響力を持つインフルエンサー(写真はイメージ)
    SNSなどで影響力を持つインフルエンサー(写真はイメージ)
  • SNSなどで影響力を持つインフルエンサー(写真はイメージ)

主要9か国で「ステマ」規制ないのは日本だけ

   ステルスマーケティングの「ステルス」(stealth)とは、英語で「隠密」「こっそり行う」の意味。ステマは消費者に広告であることを悟られないよう、商品を売りつけるマーケティング手法だ。

   芸能人やインフルエンサーら著名人に商品を紹介させる方法もその1つ。「よかったよ」「おススメです」といった感想のカタチを取ってSNSに投稿する。「さくら」「やらせ」と呼ばれ、とくにInstagramでは横行しているといわれる。

   電通が今年3月に発表した調査リポートによると、2021年のインタ-ネット広告費は約2兆7000億円に達し、ついにマスコミ4媒体(新聞・テレビ・ラジオ・雑誌)の合計(2兆4500億円)を超えた。企業もインタ-ネット広告を重視している。

   だが、サイトでのクチコミ操作や、ソーシャルメディア上で影響力を持つ者に依頼し、広告であることを隠しながら好意的な記事を書いてもらうようなケースは「ステマ」にあたる。

   消費者庁の公式サイトによると、河野太郎・消費者庁担当大臣は9月9日の記者会見で「ステマ対策」の必要性をこう述べた。

「『ステルスマーケティング』が消費者の自主的かつ合理的な商品選択を困難にしている。広告でないと思って飛びついたら、実はそれが広告だったというのは、消費行動にとってどうなのよ、ということだ。景品表示法の観点からこの問題に対応し、今年12月末までに結論を出したい」

   検討会議が公開した「実態調査」によると、現行法では広告であることを隠すこと自体は違法ではないため、「ステマ」を規制できない。ただ、「ステマ」によって消費者に「誤認」させる誇大広告の場合は、景品表示法による措置命令の対象になる。たとえば2021年9月、「豊胸効果」がないのに、インフルエンサーがサプリを飲んで、「効果があるのは当然ですよね」と写真を投稿したケースがそれだ=下の画像参照

ステマで「豊胸効果」をうたい、措置命令を受けたケース(消費者庁公式サイトより)
ステマで「豊胸効果」をうたい、措置命令を受けたケース(消費者庁公式サイトより)

   「ステマ」に対する法規制がないのはOECD(経済協力開発機構)主要9か国、米国・日本・ドイツ・英国・フランス・イタリア・カナダ・韓国・オーストラリアのなかで日本だけなのだ。

華やかに見える割に、厳しいインフルエンサーの収入

「ステマ」問題に波紋
「ステマ」問題に波紋

   消費者庁では、広告主がインフルエンサーにどのように「ステマ」の指示を行っているのか、広告代理店などに聞き取り調査を行った。こんな意見が返ってきた。

「インフルエンサーがステルスマーケティングを行うのは、単純に儲かるからであり、法律についてもよく分かっていないのが現状。インフルエンサーに問題のある行為であることを知ってもらうことが重要」(広告代理店)
「インフルエンサーは金銭を得る目的があるので、自らの考えで表示を作成することはなく、広告主から指示のあった表現・表示を行うに過ぎず、表現・表示に問題があるとすれば、広告主の指示に問題がある」(PR会社)
「商品を提供しつつ、感想をSNSに投稿することは任意とする一方、感想を投稿する場合はPRと書かないでほしいというようなケースも増えてきている。インフルエンサーとしては『(商品の)提供を受けたことを隠して、良い感想を投稿したら次も商品をもらえるのではないか』と考えて、暗黙の了解でPRと書かず、ステルスマーケティングを行ってしまうケースもある」(PR会社)

   報酬のために広告主の指示に従うケースがある一方、インフルエンサーとしてのプライドがあるので、商品の感想を投稿する場合は逆に「広告」と書かないで、結果的に「ステマ」になってしまうケースもあるようだ。

   では、実際にインフルエンサーたちは「ステマ」を行うことについて、どう思っているのか。消費者庁は、広告主とインフルエンサーをマッチングさせるプラットフォームを運営している「リデル」(東京都港区)に委託し、リデルに登録する300人のインフルエンサーを対象にアンケート調査した。その調査結果を見てみよう。

   まず、インフルエンサーとして得る1か月の収入を聞くと、「50万円以上」が1.3%だけで、「30万円以上~50万円未満」が2.4%、「20万円以上~30万円未満」が3.3%、「10万円以上~20万円未満」が11.7%、「5万円以上~10万円未満」が20.7%、そして一番多いのが「1万円以上~5万円未満」で40.0%となった=図表1参照。華やかに見える割には、厳しい業界のようだ。

(図表1)インフルエンサーとして得る1か月の収入(消費者庁公式サイトより)
(図表1)インフルエンサーとして得る1か月の収入(消費者庁公式サイトより)

   インフルエンサーは企業の広告塔として収入を得る場合、フォロワー数で単価が決まるといわれる。相場は、1フォロワー=1円~数円、といったところらしい。

   そこでフォロワー数を聞くと、50万人以上がゼロで、「10万人以上~50万人未満」が4.0%、「5万人以上~10万人未満」が5.7%、「1万人以上~5万人未満」が66.3%と圧倒的に多かった。さらに、「5000人以上~1万人未満」が13.3%、「1000人以上~5000人未満」が10.3%と、やはり厳しい世界を表している=図表2参照

(図表2)SNSのフォロワー数(消費者庁公式サイトより)
(図表2)SNSのフォロワー数(消費者庁公式サイトより)

ステマの理由...63.6%「理解が低かった」、30.9%「広告だと隠すことを条件に報酬」

   そして、「ステマを広告主から依頼された経験があるか」、また「その依頼を受けたか」を聞いた結果が図表3だ。これを見ると、「依頼された経験がある」が41.0%、さらにそのうち(=123人)の44.7%が「ステマの依頼を受けた」ことがわかる(「全て受けた」「一部受けた」の合計)。インフルエンサー全体でみたら、約2割(18.3%)が「ステマ」をした経験があるわけだ。

(図表3)広告主からステマの依頼を受けたか? またその依頼をどうしたか?(消費者庁公式サイトより)
(図表3)広告主からステマの依頼を受けたか? またその依頼をどうしたか?(消費者庁公式サイトより)

   ではなぜ「ステマ」を受けたのか。複数回答で聞くと、「ステマに対する理解が低かった」(63.6%)が最も多い。次いで、「広告であることを隠すことを条件に報酬がもらえる」(30.9%)、「広告であることを記載すると、フォロワーの信頼を失う」(18.2%)と続いた=図表4参照。いずれも、インフルエンサーとしてのプライドを持ちつつも、「報酬」に目がくらんだことがうかがえる。

(図表4)なぜステマの依頼を受けたのか?(消費者庁公式サイトより)
(図表4)なぜステマの依頼を受けたのか?(消費者庁公式サイトより)

   一方、「ステマ」の依頼を拒否した理由はこうだ(複数回答)。「ステマを行うとフォロワーの信頼を失う」(77.0%)が最も多い。次いで、「ステマが悪いものだと思っている」(68.9%)、「ステマを行うと、インフルエンサーとしての自分のブランドを傷つける」(60.7%)、「フォロワーを騙しているようで申し訳ない」(57.4%)と続いた=図表5参照

(図表5)なぜステマの依頼を拒否したのか?(消費者庁公式サイトより)
(図表5)なぜステマの依頼を拒否したのか?(消費者庁公式サイトより)

   「ステマ」の依頼を受けることは、インフルエンサーとしての誇りが許さなかったのだ。そんな人が8割強いたわけだが、気になるのは最後に「あなた以外のインフルエンサーがステマを行うことについてどう思うか」と聞いた質問の回答だ。

(図表6)なぜステマを悪いことだと思わないのか?(消費者庁公式サイトより)
(図表6)なぜステマを悪いことだと思わないのか?(消費者庁公式サイトより)

   「ステマは悪いことだと思う」と答えたのは56.0%、「わからない」が29.0%、「悪いとは思わない」が9.0%いた。そして、「悪いとは思わない」という人(=26人)に「なぜそう思うのか」を聞くと、「広告であっても、嘘の投稿をしているわけでない」が74.1%もいて=図表6参照、懸念される事態が浮き彫りになった。

(福田和郎)

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