キャリア思春期「社会人10年目の壁」は、こうして乗り越えろ!

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   社会人10年目は、いろいろな悩みをかかえる「キャリア思春期」かもしれない。そんな人に勧めたいのが、本書「社会人10年目の壁を乗り越える仕事のコツ」(ディスカヴァー・トゥエンティワン)である。あなたの悩みへの答えが見つかるかもしれない。

「社会人10年目の壁を乗り越える仕事のコツ」河野英太郎著(ディスカヴァー・トゥエンティワン)

   著者の河野英太郎さんは、東京大学文学部卒。電通、アクセンチュアを経て、2002年から2019年まで日本アイ・ビー・エムに勤務。2017年に副業として株式会社Eight Arrowsを創業し、代表取締役に。2019年人材育成最大手の株式会社アイデミーに参画。取締役執行役員COOを務める。

   著書に「どうして僕たちは、あんな働き方をしていたんだろう?」などがある。「中堅社員」向けに書いた「99%」シリーズは累計170万部のベストセラーになっている。

成功の秘訣は「目の前の仕事を、着実にやり遂げること」

   河野さんはさまざまなタイプの組織文化に触れ、数千人の人のキャリアを見てきて、共通してぶつかる「社会人10年目の壁」の存在に気がついたという。

   本書では、「スキルの壁」「キャリアの壁」「職場環境の壁」「マネジメント・リーダーの壁」「時代の変化の壁」の5つのジャンルの50の悩みに回答する形でアドバイスしている。

   ぱらぱらと読んでいるうちに、きっと自分が直面している「壁」が見つかるだろう。代表的なものをいくつかピックアップして紹介しよう。

   「10年働いたのに、誇れる仕事が何もない」という人に対しては、「『成し遂げたこと』なんて、キャリアに一度あればいい」と励ましている。

   さまざまな偉業を成し遂げた人に会い、それまでのキャリアについて尋ねると、10年で何かを成し遂げた人はまれで、最初の10年は鳴かず飛ばず、笑い者になっていた人もいるという。

   成功の秘訣を問うと、一様に「目の前の仕事を、着実にやり遂げること」と答えるそうだ。安易に転職したり、仕事を放り投げたりせず、誘惑に流されなかった人が、大成しているというのだ。

仕事に慣れた、飽きてきたのは「退化のサイン」

   「仕事に慣れた、飽きてきた」というのも、ありがちな現象だ。

   社会人になり数年から10年前後となると、仕事が習慣化され、充実感を覚えることもある。河野さんはこれを「コンフォートゾーンにいる状態」と説明し、「退化のサイン」と戒める。

   学びや工夫、成長の幅が狭まり、そのままでは退化してしまうからだ。そうならないように、一歩踏み出してみることを強く勧めている。

   「今やっている仕事の範囲で、役割だけ変わる」のが理想だが、社外との交流を増やしたり、結婚や引っ越しなどライフイベントを加えたりするのも一つの手だという。

   コンフォートゾーンが訪れるタイミングは、10年と言わず3年が目安だといい、「3年間同じ仕事をしたら、4年目は一歩踏み出すタイミング」だと勧めている。

◆「焦るな、くさるな、地に足つけろ」

   社会人10年目ともなると、同期がMBAを取った、花形部門に行ったなど同世代の活躍が目に入ってくるだろう。今はSNS経由で情報がたくさん入ってくる。しかし、「焦るな、くさるな、地に足つけろ」と戒める。

   四半世紀以上社会人を経験してわかることだが、キャリアの駆け出しでトップランナーだった人が、トップランナーであり続けるケースは意外に少ない。雑音にとらわれず、今の自分の仕事に没頭することが、セルフコントロールする上で最適解だという。

   「自分より優秀な後輩に嫉妬心を持ってしまう」という悩みに対して、「先輩でも後輩でも優秀な人は優秀。気負わなくていいんです。むしろお手本にしましょう」とアドバイスする。

   その前提として、「先輩は後輩より優秀でなくてはいけない、という発想はやめにしましょう」と書いている。

   学生時代、競泳をしていた体験から、自分より優秀な後輩はたくさん見てきたそうだ。彼らは嫉妬の対象ではなく観察の対象で、多くのことを学んできた、と振り返っている。

   河野さんの場合、社会人になっても、観察力を生かしてきた。最初の著書「99%の人がしていないたった1%の仕事のコツ」もそうした観察から生まれた本だという。

転職すべきか?...「今が1社目なら、出てみましょう」

   「今の会社に留まるべき? 外に出るべき?」というキャリア相談に対して、少し意外な回答をしている。「今が1社目なら、出てみましょう」というのだ。

   安易な転職を勧めているわけではないが、「1度経験しておけば2度目や3度目の転職の年齢がいくつであっても、経験済みのものは対応へのハードルが一気に下がる」。

   2社目、3社目であれば、「一旦留まるべき」と助言している。河野さん自身も、20代のジョブホッパー経験からの学びがあり、30代はIBM1社で過ごすことを強く決意。そこで培った力やネットワークが今も生きているという。

   もちろん、明らかなパワハラやセクハラ、ブラックな環境下にあると思われる場合、話は別だ。すぐに助けを求めよう。

◆「積極的に休みをとることもおすすめ」

   「いつか起業したいけど、勇気がない」という人には、「その気さえあれば、起業に勇気は必要ない」と答えている。河野さんもサラリーマンをやりながら起業した。会社が認めていれば、会社への説明と必要な手続きを行い、決められたルールを守れば問題ないという。

   「役職が全然上がらない」という現実的な悩みに対しては、「実力があるのに昇進しないなら、『できた余裕』を別のことに使ってみる」とアドバイスしている。

   なかには、マネジャーとかリーダーとか部下を持つ立場の人もいるだろう。そういう人には、「究極的には自分がいなくても回る組織を作ること」と答えている。

   最後に、「走り続けることに疑問を感じたら、むしろ積極的に休みをとることもおすすめします」と書いている。

   河野さん自身、長いキャリアの節目節目で長い休みをとっている。「頑張れ!」というだけの根性論は通用しない時代の働き方を説いた本でもある。

(渡辺淳悦)

「社会人10年目の壁を乗り越える仕事のコツ」
河野英太郎著
ディスカヴァー・トゥエンティワン
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