2024年 4月 26日 (金)

メーカーの生産拠点、国内回帰広がる...崩れる従来の「常識」 だが、いつまで続くかわからない円安傾向は不安要素

糖の吸収を抑える、腸の環境を整える富士フイルムのサプリ!

   メーカーなどが生産拠点を海外から国内に戻す「国内回帰」や、国内生産態勢を強化する動きが広がっている。

   米中対立の激化などで、既存のサプライチェーン(供給網)を見直す必要が生じているのに加え、為替市場で円安が進んでいることなどが背景にある。今後、国内経済の空洞化の解消につながるとの期待も高いが、課題もありそうだ。

  • 生産拠点の国内回帰広がる(写真はイメージ)
    生産拠点の国内回帰広がる(写真はイメージ)
  • 生産拠点の国内回帰広がる(写真はイメージ)

新工場建設、閉鎖工場再開の動き...アイリスオーヤマ、京セラ、ルネサスエレクトロニクス、ソニーグループ

   生活用品メーカーのアイリスオーヤマは2022年秋、中国で製造していた衣装ケースをはじめとしたプラスチック製品など50種類の生産を、埼玉県など国内3工場に移管することを決めた。

   円安が進んだことなどによって、中国での生産コストや輸送コストが重くなったためだという。同社はまた、岡山県に同社最大級の物流拠点と工場を新設中だ。こちらは25年に稼働し、中国などで行っている家電製品の生産の一部を移管する予定だという。この投資額は約100億円にのぼる。

   一方、京セラは半導体部品の増産を目指し、鹿児島県川内工場に国内最大の建屋となる新工場棟を建設し、23年10月から順次稼働する予定だ。有機パッケージの生産能力は現状の約4.5倍に拡大する見込みで、投資額は625億円となる。

   ルネサスエレクトロニクスは、閉鎖していた山梨県の甲府工場を24年に再稼働し、約900億円を投じて、パワー半導体の増産体制を作る計画だ。

   このほか、新しいニュースとして、J-CASTニュース 会社ウォッチも報じたソニーグループの熊本県内への数千億円を投じたスマートフォン向けの画像センサー工場建設計画(「熊本県、半導体の『新工場』続々...ソニーが検討、魅力は『豊富な水』『安価な土地』『優秀な人材』」12月27日付)も話題になったばかりだ。

米中対立の影響で、進みつつあった中国での生産態勢見直し 課題は人材確保

   日本の製造業はこの20~30年の間に、生産拠点を中国など海外に移してきた。

   少子高齢化によって国内市場が縮小していることに加え、輸出増加による貿易摩擦回避、円高により、国内で生産するより海外で生産した方がコストを抑えられること――などからだ。

   しかし、近年は中国など近隣のアジア諸国が急速に経済成長し、海外だから人件費が安いという常識は崩れてきている。さらに、足元では、新型コロナウイルス禍やロシアによるウクライナ侵攻などの影響でエネルギー価格が急騰し、輸送コストが企業の首を絞め始めた。

「元々、米中対立の影響で、中国での生産態勢を見直そうという動きが進みつつあった。コロナ禍などを経て、円安など為替をはじめとした経済情勢が変化し、国内回帰が始まりつつある」

   メーカー関係者はこう話す。

   ただ、国内回帰や国内の生産体制の強化が今後も一段と加速するかについては疑問の声もある。

   大きな問題の一つは国内の人手不足だ。

   熊本県で新工場を建設している台湾の半導体世界大手「台湾積体電路製造(TSMC)」の動向が注目されているが、「かなり高額な給与を示すなど、人を集めるのに苦労しているようだ」(関係者)との声も聞かれる。

   国内で工場を新設したとしても、特にIT系の技術者をはじめ、人材を確保するのはそう簡単ではない。最近の円安によって、「日本で働いても十分な金がかせげない」として、ベトナム人らが帰国している。

   また、円安傾向がいつまで続くかは分からず、「苦労して国内工場を造っても、何かの要因で円高に戻ったら、巨額の投資が無駄になりかねない」(防メーカー関係者)との声もある。

   特に、経営体力に劣る中小や中堅企業は、簡単に決断できない。今後も国内回帰が一気に進むかには、懐疑的な見方も少なくない。(ジャーナリスト 済田経夫)

姉妹サイト

注目情報

PR
コラムざんまい
追悼
J-CASTニュースをフォローして
最新情報をチェック
電子書籍 フジ三太郎とサトウサンペイ 好評発売中