2024年 4月 25日 (木)

「ダイバーシティ推進企業は建前ですか?」リアリティショックに落胆する新入社員...どう話す?【上司力を鍛えるケーススタディ CASE22(前編)】(前川孝雄)

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   「前川孝雄の『上司力(R)』トレーニング~ケーススタディで考える現場マネジメントのコツ」では、現場で起こるさまざまなケースを取り上げながら、「上司力を鍛える」テクニック、スキルについて解説していきます。

   今回の「CASE22」では、「ダイバーシティ推進企業は建前ですか?」リアリティショックに落胆する新入社員のケースを取り上げます。

「入社前の説明と全然違って、期待外れ!?」

【Aさん(課長)】このところ、少し悩んでるって...いったいどうしたんだ?
【Bさん(同僚の課長)】うん実は...うちに配属された新人のCさんが言うには、いま新人同期の間で、わが社のダイバーシティポリシーのことが話題になってるらしいんだ。
【Aさん】ああ、昨年策定したポリシーね。特に、女性活躍を積極的に支援しようという指針だ。
【Bさん】会社説明会で人事部長が強調したらしく、皆とても感銘した。でも、入社してみたら、全然違うじゃないかって。女性管理職も少ないし、打ち合わせや会議でも女性社員は存在感薄いし、看板倒れだって。同期のメンバー皆で「期待外れだ」って憤慨しているらしいんだ。
【Aさん】まあ、まだ取り組み始めたばかりだし、そう簡単に進まないからこそポリシーを作ったわけだろ。理想と現実にギャップがあるのは当然だし、うちの会社はまだいいほうじゃないのかな。
【Bさん】そうなんだけど、「課長はどう思うんですか! このままでいいんですか!」って言われてしまって...どう話していいか困ってるんだ...。
【Aさん】頭でっかちの新人にありがちな、リアリティショックだな。いちいち、つき合ってたら大変だぞ! 「現実は甘くない! そんだもんだ」って、一度突き放すくらいがちょうどいい。
【Bさん】そうだな...確かになぁ...。(とはいえ、困ったな...。)

新入社員が抱えやすい「リアリティショック」とは?

   リアリティショックとは、新入社員が仕事の現実と自分の理想とのギャップにショックを受けることを意味します。その度合いが大きいと、強い幻滅を覚えるものです。

   Z世代とも呼ばれる今の若手は、核家族・少人数家庭で大切に育てられ、SNS等でのコミュニケーションを中心に、同世代や同質の価値観のコミュニティの中で過ごしてきた傾向が強いもの。

   そのため、とても純粋な感覚を持ち、異質を受け入れることが苦手な半面、一度信じたことには従順だったり、他者からの承認欲求や社会貢献欲求も強いと言われます。

   そこで、就職活動で企業の経営者や人事担当者によるPR情報などで職場や仕事の良いイメージを作り上げている場合、きれいごとだけでない現実に大きなショックを受けやすいのです。

   導入CASEの同僚課長の考えのように、これを放置したり突き放したりすれば、場合によってはモチベーションの減退のみならず、早期離職につながるリスクさえあります。そこで、上司には、新入社員がリアリティショックを柔軟に受け止め、視野を広げて、前向きに対処できる力をつけさせることも必要になるのです。

「働き手に優しく、育成に熱心」「顧客貢献・社会貢献をめざす」...新入社員は理想を持って入社

   では、新入社員が受けがちなリアリティショックは、どのような内容でしょうか。以下に二つの代表例を挙げておきましょう。

   第一に、就活生は募集企業から「ワークライフバランス」「ダイバーシティ・女性活躍推進」「働き方改革」、また「若手世代の成長機会やキャリア形成サポート」など、社員の育成や活躍支援策を聞かされた場合、大いに期待します。

   それが一定の実績についてのPRであっても、拡大解釈する場合もあり得ます。この会社は新入社員を大切に受け入れ育ててくれるものと、期待感を膨らませて入社してくるケースも少なくありません。

   第二に、自然災害が多発する現代、ボランティア活動も盛んになった平成に育った若手は、社会貢献欲求が強い傾向があります。近年世界的に重視されるSDGsやESGについて学び、関心が高い場合もあります。

   したがって、就職先を選ぶにあたり、企業の経営理念やビジョンに共感し入社してくるケースも多いのです。「顧客貢献・社会貢献をめざす」「環境に優しい企業」「世界に安心と安全を届ける」など。自身が仕事を通して、理想を実現したいという純粋な期待を持つのです。

   企業説明会や先輩訪問などで、先駆的取り組みやロールモデルの先輩の活躍ぶりや熱意などに触れ、貢献意欲をより強めている場合もあるでしょう。そのこと自体、本来は歓迎すべきことのはずです。

「期待外れ」への落胆と不信

   しかし、実際の職場では、どうでしょうか。以前からの社内慣行や、旧態依然とした職場風土、また組織内外の環境変化、営業目標に汲々とせざるをえない現状などもあるでしょう。

   上司世代は「給料をもらっている分、あれこれ言わずに働くもの」「企業なのだから利益追求は当たり前」という認識のもとで働いてきた場合が多いもの。悪気はないものの、自らも忙しい中で仕事の指示を飛ばすばかりになりがちです。人材育成の制度や仕組みはあれども、どうしても短期的な業績目標を追いかけることに終始してしまうのです。

   期待を抱き入社した新入社員が、こうした現状に直面すると、「顧客・社会への貢献は謳い文句だけ?」「いったい、誰のため、何のための仕事?」「社員の育成や活躍支援はどこにあるのか?」と落胆し、職場への不信感を抱きかねません。純粋な気持ちで会社の理念・方針に期待していた度合が強いほど、そのギャップへのショックも大きくなるのです。

   以上を踏まえたうえで、リアリティショックに落胆する新入社員をどう受け入れ、育てるか。<「ダイバーシティ推進企業は建前ですか?」リアリティショックに落胆する新入社員...どう話す?【上司力を鍛えるケーススタディ CASE22(後編)】(前川孝雄)>で、解説していきます。

※「上司力」マネジメントの考え方と実践手法についてより詳しく知りたい方は、拙著『本物の上司力~「役割」に徹すればマネジメントはうまくいく』(大和出版、2020年10月発行)をご参照ください。
※「上司力」は株式会社FeelWorksの登録商標です。


【プロフィール】
前川 孝雄(まえかわ・たかお)
株式会社FeelWorks代表取締役
青山学院大学兼任講師、情報経営イノベーション専門職大学客員教授

人を育て活かす「上司力」提唱の第一人者。リクルートを経て、2008年に管理職・リーダー育成・研修企業FeelWorksを創業。「日本の上司を元気にする」をビジョンに掲げ、「上司力研修」「50代からの働き方研修」「eラーニング・上司と部下が一緒に学ぶ パワハラ予防講座」「新入社員のはたらく心得」などで、400社以上を支援。2011年から青山学院大学兼任講師。2017年働きがい創造研究所設立。情報経営イノベーション専門職大学客員教授、一般社団法人 企業研究会 研究協力委員、一般社団法人 ウーマンエンパワー協会 理事なども兼職。連載や講演活動も多数。
著書は『50歳からの逆転キャリア戦略』(PHP研究所)、『「働きがいあふれる」チームのつくり方』(ベストセラーズ)、『コロナ氷河期』(扶桑社)、『50歳からの幸せな独立戦略』(PHP研究所)、『本物の上司力~「役割」に徹すればマネジメントはうまくいく』(大和出版、2020年10月)等30冊以上。近刊は『人を活かす経営の新常識』(FeelWorks、2021年9月)および『50歳からの人生が変わる 痛快! 「学び」戦略』(PHP研究所、2021年11月)。

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