2024年 4月 24日 (水)

ソニーグループ、5年ぶり「社長交代」...十時裕樹副社長が昇格 吉田CEOとの2トップ体制は機能するのか?

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   ソニーグループが社長交代を発表した。2023年2月2日、副社長兼最高財務責任者(CFO)の十時(ととき)裕樹氏(58)が4月1日付で社長兼最高執行責任者(COO)兼CFOに昇格する。社長交代は5年ぶりだ。

   とはいえ、吉田憲一郎会長兼社長(63)は代表権のある会長になり、最高経営責任者(CEO)も引き続き兼務するから、「トップ交代」ではない。新聞各紙も「2トップ」「体制強化」と報じる新体制で、ソニーはなにを目指すのか。

  • ソニーグループ、5年ぶりの「社長交代」(写真はイメージ)
    ソニーグループ、5年ぶりの「社長交代」(写真はイメージ)
  • ソニーグループ、5年ぶりの「社長交代」(写真はイメージ)

期待される事業環境の変化への対応、吉田CEO路線の強化

   社長交代の発表会見で、吉田氏は十時氏について「外部環境を俯瞰した戦略的な視点を持った彼から私も多くの気付きと学びを得てきた」と、次期社長に推した理由を説明した。

   今回の人事が「地政学リスクやテクノロジーの変化」など事業環境の変化に対応するものとの認識を強調した。

   十時氏は「ソニーのDNAでもある事業や人材の多様性を進化させ、成長し続ける会社を目指したい」と意気込みを語るとともに、「まずは中期経営計画をしっかり仕上げる。基本的には今の事業をそれぞれ強くしていく方向で考えている」と述べた。

   両氏の発言は、事業環境の変化を踏まえ、これまでの吉田氏が進めてきた路線をさらに強化し、推進していくということになる。

進めてきた事業の多角化 EVや「メタバース」など新分野への投資も

   では、吉田路線とはなにか。それは、平井一夫前社長からつながる、ここ10年のソニーの構造転換だ。

   売上高構成を見るとはっきりしている。

   2013年3月期は売上高の4割を占めていたエレキ事業(ソニーの祖業である家電など=エンタテインメント・テクノロジー&サービス)は、23年3月期は2割にとどまり、逆に、エンタメ事業(ゲーム&ネットワークサービス、音楽、映画)が売り上げの5割超を占める見込みだ。

   平井社長時代はパソコン「VAIO」の売却、テレビの分社化、電池事業売却など赤字体質からの脱却を図った。

   18年に、副社長として平井氏を支えていた吉田氏が社長に就くと、20年に金融事業のソニーフィナンシャル・ホールディングス(HD)を完全子会社化し、21年には社名を「ソニーグループ」に変更するなど、経営体制を再編してきた。

   事業の多角化も推進し、課金型ビジネスへの転換も進めた。

   新型コロナウイルス禍では「巣ごもり需要」を取り込んで業績を伸ばし、家庭用ゲーム機「プレイステーション5」やアニメ「鬼滅の刃」のヒットも追い風に、22年3月期は本業のもうけを示す営業利益が初めて1兆円を超え過去最高を記録した。

   さらに、次のステップとして、電気自動車(EV)の合弁会社をホンダと設立し、インターネット上の仮想空間「メタバース」で海外のゲーム会社と協業するなど、新分野への投資を強めている。半導体でも、台湾積体電路製造(TSMC)との新工場建設も決めた。

世界的な景気後退懸念、テクノロジー業界の逆風...試される難しいかじ取り

   ただ、順風が続く保証はない。世界的な景気後退懸念が強まる中、「巣ごもり需要」の反動もあって、米GAFAを筆頭にテクノロジー業界には逆風が吹いている。

   ソニーグループという司令塔のもとに、大きく6事業が等距離でぶら下がる形の体制は、事業ごとに自主性を重んじている。だが一方で、統括するソニーGとしては、それぞれ異なる経営環境なかで各事業をコントロールしていくために、難しい経営判断を求められる。

   吉田氏は会見で、「今、外部環境は非常に変化が激しくなっている。テクノロジーの変化、地政学リスクの高まりがある。このタイミングで経営体制を強化する必要があると判断した」と述べた。難しい時期だからこその2トップ体制ということだろう。

   ソニーは似たような体制を過去にもとっている。

   出井伸之会長・安藤国威社長体制(2003~04年)、ハワード・ストリンガー会長・中鉢良治社長体制(05~09年)は、その時々の外部環境に違いはあるが、うまく機能したとは言えない。

   吉田氏と十時氏は、インターネット通信子会社のソネット(現ソニーネットワークコミュニケーションズ)の社長と副社長だった2013年、前年にソニー社長に就いた平井氏の求めでソニー本体に呼び戻され、平井氏を支えた経緯がある。

   そんな、文字通り同じ釜の飯を食い、苦楽を共にしてきた2人のかじ取りで、ソニーは新たな飛躍を目指す。(ジャーナリスト 済田経夫)

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