2024年 4月 26日 (金)

「1円スマホ」カラクリに公正取引委員会がメス!「携帯大手による販売代理店への過剰ノルマが元凶」...ネット上では「安くてどこが悪いの?」の声も

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   「1円スマホ」などとキャンペーンして、スマートフォンが極端な値引きで売られている実態に公正取引委員会のメスが入った。

   「不当廉売」であり、背景には携帯電話大手4社が販売代理店に「厳しいノルマ」を課していると指摘、独占禁止法に抵触する疑いがあるとする調査結果を公表したのだ。

   ネット上では、「携帯大手が端末販売と通信回線の両方を提供しているシステムに問題がある」という批判が上がる一方、「この物価高の折り、1円スマホ歓迎だ」とする意見もあり、話題になっている。

  • どこに乗り換えようかな?(写真はイメージ)
    どこに乗り換えようかな?(写真はイメージ)
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電気通信事業法の「抜け道」を悪用したカラクリ

   スマートフォンをめぐっては、過去にも「1円」で販売するなど大幅な値引き競争が繰り返されたことから、2019年に電気通信事業法が改正され、通信契約とセットで販売する端末の値引きは、税抜きで2万円(税込み2万2000円)が上限とされた経緯がある。

   しかし、その後も「1円スマホ」を含め、極端な安値で販売されるケースがあとを絶たなかった。背景に、端末のみなら制限なく値引きできる電気通信事業法の「抜け道」があるからだ。

   たとえば、スマホ代金が10万円とすると、通信契約の有無にかかわらず、あらかじめ店側が7万7999円を値引きしておけば、スマホ代金は「2万2001円」となる。そして、通信契約とセットで契約する人に値引きの上限額である「2万2000円」を適用すれば、「2万2001円-2万2000円=1円」になる仕組みだ。

   ただし、この方法だと、いちおう合法的だが、店側は大幅な赤字を覚悟しなくてはならない。それでも後を絶たないことから、「不当廉売」の疑いがあるとして、公正取引委員会はNTTドコモ、KDDI(au)、ソフトバンク、楽天モバイルの携帯大手4社や、その系列の販売代理店、中古端末取扱事業者など307社を対象に書面で実態調査を行っていた。

   2023年2月24日に発表された公正取引委員会の「携帯電話端末の廉価販売に関する緊急実態調査」によると、2022年1月から6月までの間に、「1円」も含めて1000円以下の極端な廉価販売が行われたスマホの台数は、全体の14.9%に上っていることが分かった。

   OS別に見ると、Android端末が19.9%、iPhoneが11.9%で、4万円未満の機種での割合が30.4%と高かった。さらに、新規契約時では13.9%だったのに対して、MNP(番号持ち運び制度)によって他の携帯大手に転入したユーザーでは33.6%と、廉価販売の比率が高くなった。

   つまり、「1円」など極端な低価格のスマホをエサに、他社のユーザーを吊り上げる構図である【図表1】。

(図表1)携帯大手4社によるスマホ値引き販売の仕組み(公正取引委員会公式サイト)
(図表1)携帯大手4社によるスマホ値引き販売の仕組み(公正取引委員会公式サイト)

公取委「一見、消費者によさそうだが、長い目ではメリットにならない」

   カラクリの裏には、販売代理店が1次から3次にまで階層化されたピラミッド型構図がある。大手携帯会社から委託された1次販売店は、自分の店舗で販売する一方、2次販売店にも商品を再委託する。その2次販売店も、自分の店舗で販売する一方、3次販売店にも商品を再委託するといった複雑な仕組みだ【図表2】。

(図表2)携帯大手4社の代理店を使ったスマホ販売システム(公正取引委員会公式サイト)
(図表2)携帯大手4社の代理店を使ったスマホ販売システム(公正取引委員会公式サイト)

   店頭販売価格を代理店が設定する場合もあれば、携帯大手が決めるケースもある。いずれにしろ、公正取引委員会の報告書は「代理店ごとに厳しいノルマが設定され、そのノルマを達成できたかどうかで携帯大手から代理店に支払われる金額が決まるシステムになっている」と指摘する。

   この大幅値下げによって、スマホ端末は原価割れの価格になっていたが、赤字分は、販売代理店と取引関係にある携帯大手が、通信料収入から補填したり、機種を特定した「販売奨励金」などを出したりする方法で補う構図になっていた【再び図表1】。

   公正取引員会は、こうした採算を度外視した価格での販売は、回線契約を伴わない「SIMフリー端末」を扱う家電量販店や、中古端末販売店が「価格面で対抗できず、顧客を獲得できなくなるおそれ」があり、独占禁止法が禁止する不当廉売に該当するおそれがあるとして、携帯大手各社への監視を強化する方針だ。

   報道によると、2月24日に会見した公正取引委員会の天田弘人調整課長は、

「スマホ端末が安いことは、一見すると消費者にとっていいことだが、安く売られる背景に通信料金からお金が出ているとなると、通信料金の下げ止まりや引き上げにつながることが懸念され、消費者にとってもメリットにならない」

と述べた。

「通信と端末を分離すれば、ITリテラシーの低い人たちが困る」

「1円スマホ」、どう思う?(写真はイメージ)
「1円スマホ」、どう思う?(写真はイメージ)

   今回の公正取引員会の調査結果について、ヤフーニュースコメント欄では、さまざまな意見が寄せられている。

「問題の核心は、端末値引きの原資は既存契約者が毎月支払う通信通話料だということ。端末の1円売りをする資金があるなら、本来は毎月の通信通話料を値下げすべきだ。もしくは、既存契約者が機種変更する際にこそ大きな値引きをするべき。キャリアが限られたパイの陣取り合戦をするために代理店に奨励金を支給し、これがなければ代理店経営が成り立たない報酬体系を取っていることが要因になっている」

   このように、新規獲得に血眼になり、長年のユーザーを軽視する大手携帯各社を批判する声が目立った。

   最も多かったのは、通信と端末を分離しようという意見だ。

「回線の提供と端末の提供をはっきり分けたらいい。端末はオーブン価格で安い所で自由に選び、それと同時に回線も値段や安定性や利便性で選べるようにしたら、自ずと大手キャリアのプランも安くなるだろう。さらに言えば、乗り換えの客を奪い合うなら、長く使っている契約者をもっと優遇すべき。それが乗り換え抑止にも繋がると思うが」
「携帯端末は、家電量販店などで自由に購入できるようにすれば、価格競争が起き端末を今より安く購入できると思う。購入者はその端末を持って希望のキャリアと通信契約するようにすべきだと思う。実際のところ、通信費が高いというより、端末が高いので、月々の支払いが高額になっている。だから、端末部分に自由競争を促すべきだと思う。キャリアも端末販売したければ、オリジナル端末を出せばいいのでは? 家電製品にある量販店オリジナルモデルみたいものを」
スマホはどこが使いやすい?(写真はイメージ)
スマホはどこが使いやすい?(写真はイメージ)

   この意見に対しては、反論も多く寄せられた。

「その場合だと、『うちは回線契約のことしか関知しないから、端末の操作方法は買った店やメーカーに問い合わせください』となるし、ショップも『端末の初期不良と故障の修理対応はするが、操作方法はメーカーに聞いてくれ』となるが、店舗でのサポートが必要になるユーザーが果たして対応できるのだろうか?」
「かなり困難だろう。スマホの分からないことはメーカーに聞くことになる。そうなると、端末価格が非常に高くなる。今はキャリアがサポートセンターを兼ねているが、各メーカーになると、複数のサポートセンターが必要になり、その分コストが跳ね上がる」
「端末が完全に別売りになったとして、通信契約と端末をそれぞれ自分だけで購入できる人の割合はどれくらいだろう? 高齢者はもとより、比較的年齢層の若い人たちにもITリテラシーの低い人たちはいっぱいいる」

「1円スマホ」の経験者、「世の中の仕組みが正直わからなくなった」

携帯電話のキャンペーン(写真はイメージ)
携帯電話のキャンペーン(写真はイメージ)

   また、この物価高のご時勢、「1円スマホ、大いに結構ではないか」という意見も少なくなかった。

「物価が上昇しているのに、給与収入は上がるどころか減る場合もある。しかも増税までしようとしている。そんななか、安い価格で端末が売られたら買いたくなるのが心理です。それを法律で規制しようとするのは、厳しすぎる。もちろん法治国家なので法の遵守は当然だが、罰することだけを考えるのではなく、なんらかの緩和策はないのか」
「1円販売の対象になるのは1年とか2年前の型落ち機種。売れ残りの在庫限りとかなので、そんなに数も出ない。1円販売をやめたからって通信料金が下がるわけでもない。消費者からしたら、端末代が高くなるだけで何のメリットもない介入。独禁法云々を言うのなら、各社横並びの通話料金やオプション料金のほうに切り込めよと思う」

   一方、独占禁止法違反を疑われる「1円スマホ」に憧れなくても、スマホを安く使いこなす方法があるとアドバイスする声も。

「大手キャリアで1円スマホ買うよりも、中古端末に格安SIM(シム)入れたほうが安いです」
「1万円代の安いスマホだってあるでしょ。2万円くらいでも2年分割にすれば1か月1000程度でしょ。見栄張って10万円のスマホを1円で買いたいとか、勘違いも甚だしい」

   ところで、「1円スマホ」は実際のところ、どう売られているのか。経験者からはこんな声が寄せられている。

「1年近く前、大型家電量販店でiPhone12(64G)が1円で売られていた。まだiPhone14が出る前だったので、まだ12でも高い認識だったから、『どうせ条件あるのでしょ?』と聞いたら、『「実質1円」と謳っているのとは違って、何も条件はありません。なんなら明日売ってもいいです』と言われた。
本当に1円で買えたが、とりあえずMNP(番号持ち運び制度)でドコモと契約(それすらしなくても構わないそうだ)し、直後にahamoに乗り換えた。今は端末の支払いもなく、3000円程度の通信料だけで済んでいるが、世の中の仕組みが正直よくわからなくなった」
「2年後に返せば、2年間のコスト24円(編集部注:実質的に毎月1円のレンタルという仕組みと思われる)。2年後に乗り換えればいい話。iPhoneを普通に買ったら、4年分割でも月々約2500円。キャリアが宣伝している機種変更すれば、3年目、4年目支払いがなくなるとはいえ、最初の2年間で約6万円は払うことに。2年ごとの乗り換えのほうが断然コストが安い」

   消費者心理で価格が気になるところだが、しかし最後にこんな意見を紹介したい。

「不当廉売がなぜだめなのかを考えれば、この規制は必要。消費者の利益よりも健全な産業の維持のほうが優先される。健全な産業が失われれば、国は産業を失い、労働者は仕事を失い、国民は未来を失うことになる。つまり、スマホで中国に負けた日本のことですよ」

(福田和郎)

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