2024年 4月 17日 (水)

今春、賃上げする企業が多い?...東洋経済「給料」、ダイヤモンド「クスリ&治療」、エコノミスト「再始動する鉄道」を特集

   「週刊東洋経済」「週刊ダイヤモンド」「週刊エコノミスト」、毎週月曜日発売のビジネス誌3誌の特集には、ビジネスパースンがフォローしたい記事が詰まっている。そのエッセンスをまとめた「ビジネス誌読み比べ」をお届けする。

人口減の日本が経済成長するには、生産性向上しかない

   3月6日発売の「週刊東洋経済」(2023年3月11日号)の特集は、「大解剖! ニッポンの給料」。昨年までと打って変わり、今春は賃上げを表明する企業が相次ぐ。最新の給料事情を追っている。

   なぜ今、賃上げが注目されるのか。

   1つ目は、輸入品の値上がりによる物価上昇だ。物価が上がっているのに給料が上がらなければ、社員の実質賃金はマイナスとなり、就業意欲をそぐことになる。そうした事情が経営者を賃上げに駆り立てている。

   2つ目は、構造的な人手不足時代に突入したことだ。女性と高齢者の労働力参加には、もう頼れない。BNPパリバ証券の河野龍太郎・チーフエコノミストは、「日本の労働供給はいよいよ掘り尽くされ、限界に近づいてきている」と分析している。

   3つ目は、日銀が目指す「2%物価目標の達成」に影響するからだ。物価や賃金のノルム(常識ないし規範)が変化すれば、金融政策の正常化も実現する。2%目標に見合う賃金上昇率を日銀は3%程度に見ているという。

   今年の春闘は、賃金の上昇を好機に変え、生産性向上や消費の拡大につなげていけるのか、大きな転機になると見られる。

   金融アナリストで小西美術工藝社社長のデービッド・アトキンソン氏は、日本経済の浮揚には「最低賃金の引き上げが不可欠」と訴える。人口減の日本が経済成長するには、生産性向上しかない。生産性と最低賃金は強い相関関係があり、それゆえに最低賃金の引上げが必要だ、というのだ。

   また、日本には生産性の低い中小企業が多過ぎるとしたうえで、生産性を高めることをしていない企業、最低賃金で労働者を搾取する企業が淘汰されるのは何ら問題がない、と語っているのは印象的だ。

◆初任給横並びを11年ぶりに破った三井住友銀行

   一方、日本企業の賃金に関する新しいルールを紹介している。

   たとえば、横並びと前例踏襲が多かったメガバンクでは、新入社員の初任給では各行が違いを出そうとしている。

   三井住友銀行は2023年4月に入行する大卒新入社員の初任給を25万5000円にする。みずほファイナンシャルグループは24年4月入社組の初任給を26万円にする方針だという。長らく20万5000円で横並びだったのが一転、3メガバンクの初任給は引き上げ合戦の様相を呈している。

   その一因は銀行人気の低落にあるという。コンサルや商社にどんどん内定者を取られているからだ。三菱UFJ銀行も24年4月入社の新卒から追随するものと見られる。

   「飛び級」で昇進する大和ハウス工業の人事制度も興味深い。

   上司の推薦があれば、6等級(主任・係長格)から4等級(課長格)に一気に昇進できるという。標準で入社13年、最短でも9年かかる管理職への昇進が早まるのだ。この飛び級で、月給は15万円も増えるそうだ。成果を出せないと降格もあるため、信賞必罰の側面があることも忘れてはいけない。

   同誌が独自試算した40歳年収のランキングも載っている。上位1400社を業種別で分けて掲載している。すべての業種でランキングすると、上位10社は以下の通りである。

1位M&Aキャピタルパートナーズ(3031万円)、2位キーエンス(2266万円)、3位ヒューリック(1812万円)、4位地主(1700万円)、5位伊藤忠商事(1527万円)、6位ストライク(1523万円)、7位三井物産(1500万円)、8位三菱商事(1491万円)、9位丸紅(1418万円)、10位レーザーテック(1358万円)

   就活生に人気が高い大手商社が上位に並ぶ。親しい友人といえども、給料の額を尋ねるのははばかられる。このランキングを見ると、おおよそのことがわかるだろう。もっとも、40歳で年収1000万円を超える会社はそう多くはないようだ。

薄毛、肥満の治療薬の今

   「週刊ダイヤモンド」(2023年3月11日号)の特集は、「激変! 選ばれるクスリ&治療」。危ない薬、やめていい薬......薬に関する情報があふれている。でも、結局のところ一番知りたいのは「自分の病気や悩みに本当に効く薬」ではないだろうか。中高年の読者の関心が高い項目に絞って、紹介しよう。

   まずは薄毛。男性型脱毛症(AGA)の主な治療薬にはフィナステリド(製品としては「プロペシア」)、デュタステリド(同「ザガーロ」)、ミノキシジル(同「リアップ」)の3種類ある。

   このうち効果が高いとされるのは、「デュタステリド内服薬0.5ミリグラム/日」という研究結果がカナダ・トロント大学の研究者たちによって2022年発表されたらしい。

   一方、国内で約30年ぶりに肥満症の治療薬が登場すると話題になっている。同誌によると、市販薬の「アライ」も製造販売について承認されたが、医師たちにとっての本命は、糖尿病治療薬から転用するGLP-1受容体作動薬「ウビーゴ」だという。

   アライは、海外では医療用医薬や市販薬として、昔から広く使われてきた薬だ。日本では今回、医療用医薬品での承認を経ないまま市販薬になるということだ。

   GLP-1受容体作動薬は、医療保険適用外の自由診療を行う美容クリニックなどが「ダイエット注射」などとうたい、処方されてきた。

   もっとも、適正使用の注意が喚起されており、適応対象となるのは高血圧、脂質異常症、2型糖尿病のいずれかを伴う肥満症患者で、食事療法・運動療法を行っても十分な効果が得られず、かつ次のどちらかに該当される場合だ。

   1つはBMI27以上で、肥満に関連する健康障害を2つ以上持つ。もう1つはBMIが35以上。「ウビーゴ」は週1回の注射剤で、飲み薬も開発中だそうだ。

   このほか、糖尿病、高血圧、がんなど18疾患に関する「選ばれるクスリ」ランキングも載っている。たとえば、糖尿病での1位はメトホルミン塩酸塩で、製品名は「メトグルコ」(住友ファーマ)、「グリコラン」(日本新薬)。処方患者数トップでも、処方金額は7位で、使いやすい薬であることの証明だという。

   自分に関係のない疾患の薬に対しては、基本的に無関心という人が多いだろう。それでも新しい治療法や治療薬が登場しているということは押さえておきたい。

3月ダイヤ改正で、東西で新路線開通

   「週刊エコノミスト」(2023年3月14日号)の特集は、「再始動する鉄道」。コロナ禍で制限されていた移動の自由が緩和され、鉄道に乗客が戻り始めてきた。3月18日のダイヤ改正で開通する東西の新しい路線を中心に動きをまとめている。

   首都圏では、東急電鉄の東急新横浜線日吉-新横浜間、相模鉄道の相鉄新横浜線羽沢横浜国大-新横浜間が開通する。

   新横浜駅に両社の電車が初めて到達するとともに、相鉄線と東急線、そして東急線を介して東京メトロ副都心線の東武東上線方面、東京メトロ南北線の埼玉高速鉄道線方面、都営三田線方面との間を結ぶ大規模な相互直通運転が開始される。

   東京駅、品川駅で東海道新幹線に乗り換えるよりも、新横浜駅乗り換えが便利になる人が多くなると予想され、人の動きが変わりそうだ。

   関西圏では、新大阪駅と大阪環状線とを結ぶJR西日本東海道線支線の一部区間がルート変更のうえ、地下に移設され、3月18日から大阪駅(うめきたエリア)へ乗り入れる。

   関西国際空港アクセス特急の「はるか」や紀勢線方面の「くろしお」は従来大阪駅を素通りしていたが、今回のルート変更によって関西最大のターミナルを発着することになり、大幅な乗客増が期待される。

   拠点駅のリノベーションも進む。東京都内では京浜急行品川駅のリノベーション工事が本格化する。ほぼ全面的に改築され、現在の高架からJR線と同じ高さの地平へと降ろされ、広くなり乗り換えしやすくなる。

   一方、厳しさを増すのが地方路線だ。

   JR北海道とJR四国の状況は厳しく、地方路線の存続が危ぶまれている。大塚良治・江戸川大学准教授は、他社との経営統合も選択肢の1つだとし、鉄道にとらわれない柔軟で大胆な発想が求められる、と提言している。

   コロナ禍での縛りが解けて、鉄道に人が戻るのは望ましいことだが、地方への波及はあるのか、注視したい。(渡辺淳悦)

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