2024年 5月 7日 (火)

上手なセールス・プレゼンテーションはどこが違う? うまく話を展開させるには「型」がある(大関暁夫)

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   前回、上手なセールス・プレゼンテーションは説明が目的ではなく、相手の関心を引き付けること。

   そのためのポイントとして、プレゼンテーション資料のビジュアル的な工夫とストーリー展開が重要であるとし、ビジュアル的な工夫は見ただけではストーリーが読めない紙芝居的なモノがよいとしました。

   (以上については、会社ウォッチ「セールスパーソンが誤りがちな『説明』の仕方とは? 間違った『プレゼン資料』も作っていませんか?」をご覧ください。)

   今回はプレゼンテーションのストーリー展開、すなわちシナリオ化の基本について、魅力的なシナリオを作る方法をお話しします。

シナリオのパターンは、注意→関心→欲求→購買行動

   シナリオ化と聞くと、何やら難しそうな印象があるかもしれません。しかし、既存のシナリオパターンを拝借することで、誰にでも簡単に、魅力的なセールス・プレゼンテーションシナリオが作れるようになります。

   一般的に説明型のシナリオは、「起→承→転→結」で運ぶのが論理的でかつ分かりやすくもあるのですが、目的が相手の関心を引き付けることにあるセールスに有効なのは、マーケティングで使われるシナリオパターンです。

   その代表的なものが、AIDA(アイダ)というシナリオパターンです。

   AIDAは1920年代のアメリカ心理学者のE.K.ストロング博士が購買に向かう顧客心理の段階を分析した理論が広告や営業の世界で応用され、その後長らく利用されるようになったものです。

   この理論を元にして、テレビスポット広告シナリオに活用されるAIDMA(アイドマ)やAIDCA(アイドカ)、あるいは日本の大手広告代理店もAISAS(アイサス)という独自のシナリオパターンを発案するなど、派生型のシナリオも多く存在しています。

   AIDAは、人の購買行動がA=「Attention(注意)」→I=「Interest(関心)」→D=「Desire(欲求)」→A=「Action(購買行動)」という流れに乗ることで、スムーズに促されるという理論です。ですから、購買行動を喚起するようなシナリオを作るためには、これに沿ったプレゼンテーションの流れを想定すればいいということになります。

「Desire(欲求)」を喚起するまでの話のもっていき方とは?

   まずA=「Attention(注意)」を引くことから始めます。

   具体的には、提案する製品やサービスのセールスポイントを特徴的な表現で見せるといった手法で、極力印象的に表すことが必要です。故スティーブ・ジョブズ氏がiPhoneの製品発表で、「今日、アップルが電話を再発明します」と言って聞き手を引き付けたように、冒頭で「話を詳しく聞きたい」と思わせることができるか否かが、セールスの成否のカギを握っているともいえるのです。

   「Attention(注意)」がうまくできたら、次はプレゼンテーマに関して、いっそうの「Interest(関心)」を引くような話題に転換します。

   ここが実質的には導入部でもあり、プレゼンテーマに関連してターゲット先の同意やうなずきが得られる、世の中の動きやトレンドなどの話題から入ります。

   たとえば、セールス商材が持つ実現メリットが経費削減であるならば、「コロナ禍での企業経営は、一層の業務効率化や経費圧縮が課題になってはいないでしょうか」というような投げかけをすることで、「経費削減につながることなら聞いてみたい」という関心を引き出すのです。

   こうしてテーマに関する実現メリットに対しての「Interest(関心)」がつかめたら、次はさらに身近な話にすすむことで、「早く提案を聞きたい」という「Desire(欲求)」を喚起します。

   ここで持ち出す身近な話題は、ヒアリングの段階で聞き出した材料を活用してテーマに関するターゲットの「お悩み」です。それを極力正確に復唱して再認識させ、その解決策が欲しいという気持ちに誘導するのです。

   すなわち「Interest(関心)」ステップで意識したコロナ禍で企業の課題となっている業務効率化や削減について、「御社は○○がネックとなって、効率化がすすまず、高コスト体質から抜け出せていないとのことでしたね」といったように、お悩みを確認しつつ解決策への渇望感をあおるのです。

   そのうえで、いよいよ「では弊社から、御社向けのお悩み解決策をご提示します」と提案につなげ、解決策に対する「Action(購買行動)」に至らしめます。以上が、AIDAシナリオでのセールス・プレゼンテーションの流れです。

簡易版電子カルテを、医師に提案するプレゼン例...ぜひ参考に!

   現場での具体的なシナリオ例をひとつあげておきましょう。

   医療機関向けのシステムを扱っているA社が、IT機器対応に自信がなく電子カルテの導入に二の足を踏んでいる50代以上ドクターが運営するクリニック向けに開発した、簡易版電子カルテのセールス・プレゼンシナリオです。

   「Attention(注意)」では、「デジタルとアナログのイイとこ採りシステムです!」という掴みからスタートします。

   そのうえで実質導入部である「Interest(関心)」では、医療機関相互のデジタル情報のやり取りにより、引越し先でも旅行先でも患者自身の診断・治療履歴データを元に医療サービスが受けられる体制確立を目指して、国が医療機関の電子化対応を推奨している事実に再認識を促し、デジタル対応の必要性に共感を得ます。

   次に、ヒアリングで得ている、IT化に不安があるものの要デジタル対応という時流も踏まえて、うまい進め方はないものかと悩んでいるというターゲットの実情を確認。解決策を求める「Desire(欲求)」を喚起して、いよいよ簡易版電子カルテの具体的な概要説明に入ります。

   手書きカルテ作業を残しつつ一部ボタン入力でデジタル化に向けた準備となること、導入コストが電子カルテよりも安いこと、スタッフの事務負担が軽減されること――これらを提示して成約に結び付ける、というシナリオで多くの成果を得ることができました。

   セールス・プレゼンテーションシナリオは、何よりまずは作ってみること、そして繰り返し練習することが大切です。AIDAシナリオを参考に、ぜひトライしてみてください。(大関暁夫)

大関 暁夫(おおぜき・あけお)
株式会社スタジオ02 代表取締役 企業アナリスト
東北大学経済学部(企業戦略論専攻)卒。1984年、横浜銀行に入行。現場業務および現場指導のほか、出向による新聞記者経験を含めプレス、マーケティング畑を歴任。全国銀行協会出向時には対大蔵省(当時)、対自民党のフロントマンも務めた。中央林間支店長に従事した後、2006年に独立。銀行で培った都市銀行に打ち勝つ独自の営業理論を軸に、主に地域金融機関、上場企業、ベンチャー企業のマネジメント支援および現場指導を実践している。
メディアで数多くの執筆を担当。現在、J-CAST 会社ウォッチ、ITメディア、BLOGOS、AllAboutで、マネジメント記事を連載中。
1959年生まれ。
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