2024年 5月 19日 (日)

国立大学・大学院への外国人留学生数、5000人以上の増加...コロナ禍前の水準に 「国際化」目標の10%にはまだ届かず(鷲尾香一)

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   国立大学協会の調査結果で2023年2月28日、2022年の国立大学の学部と大学院を合わせた外国人留学生が前年比で5000人以上増加し、総学生数に占める比率が新型コロナウイルス感染拡大前の2019年と同水準の8.0%にまで回復したことが明かになった。

教員数に占める外国人教員の比率は5.6%に上昇

   国立大学では2013年から「国立大学における教育の国際化の更なる推進」を目標に掲げてきた。外国人留学生の受け入れ増加、日本人留学生の派遣増加、外国人教員比率の引き上げ、英語での授業実施科目数の増加などに取り組んでいる。

   その進展状況を把握するため、毎年5月1日現在と11月1日現在の調査を国立大学86大学に実施している。

   今回公表されたのは2022年11月1日現在の結果だ。それによると、外国人留学生数は4万7430人と前年同月比で5158人(0.6%)増加した。人数ではピークだった2019年11月の4万8483人には及ばないものの、総学生数に占める外国人留学生の比率は8.0%となり、ピークと並んだ。

   その内訳は、大学の学部が前年同月比2383人(0.4%)増の1万1507人、大学院が同2775人(0.6%)増の3万5923人となっている。

   国際化の目標としては、2020年までに外国人留学生の比率を10%にすることを掲げていたが、新型コロナの影響で人数では2020年11月に4万835人、比率では2021年5月に6.9%まで減少した。

   ただ、新型コロナでの国を跨ぐ移動の制限が徐々に解除されたことで、外国人留学生の受け入れも回復している。(表1)

   一方、外国人教員は2022年5月時点で前年同月比71人(2.0%)増加して3541人となり、教員数に占める外国人教員の比率は5.6%に上昇した。外国人教員数は2020年、2021年とも新型コロナの影響を大きく受けることなく増加している。

   もっとも、国際化の目標として掲げていたのは、2020年までに外国人教員の比率を倍増させることで、具体的な目標となる比率は6.4%となっていることから、2022年5月時点では達成できていない。(表2)

   英語での授業科目数は、2020年までに大学の学部、大学院とも倍増させることで、学部は7542科目、大学院は1万6136科目となっていた。

   この目標については、学部では2018年度に、大学院では2017年度に達成しており、その後も順調に増加。2022年度では、学部で前年度比865科目(8.5%)増の1万1058科目に、大学院では同863科目(2.7%)減の3万755科目にまでなっている。(表3)

   ちなみに、英語での授業を実施している大学は、国立大学82校中66大学(80.5%)、大学院では86大学中75大学(87.2%)となっている。

日本人学生の海外留学、21年度は0.4%に

   一方で、新型コロナの影響を最も受けたのは、日本人学生の海外留学だ。

   海外留学者数はピークだった2018年度の3万2828人から、2020年度には168人にまで減少した。

   日本人のみの総学生数に対する日本人留学生の比率も、ピークの2018年度の5.9%から2020年度には0.0%となった。2021年度には留学生数で2352人、比率で0.4%まで回復してはいるものの、2018年度のピークには遠く及ばない状況だ。(表4)

   留学生の内訳では、1年以上の長期留学が大学の学部で80人、大学院で90人の計170人、1年未満の短期留学が学部で1479人、大学院で693人の計2172人となっている。長期と短期の合計では、学部が785人、大学院が2352人となっている。

   国際化の目標では2020年に学部と大学院を合わせた日本人のみの総学生数に対する日本人留学生の比率を5%にすることを掲げていた。これについては、2017年度に目標を達成していたものの、2021年度に0.4%に低下したことで、振り出しに戻ったかたちだ。

   世の中的には、国を跨ぐ移動が自由になったことで、外国人訪日客(いわゆるインバウンド)の増加ばかりが取り上げられている。だが、大学の国際化はまだまだ回復途上で、国際化が遅れていると言われる日本の大学にとっては、大きな課題が残った状態だ。

鷲尾香一(わしお・きょういち)
鷲尾香一(わしお・こういち)
経済ジャーナリスト
元ロイター通信編集委員。外国為替、債券、短期金融、株式の各市場を担当後、財務省、経済産業省、国土交通省、金融庁、検察庁、日本銀行、東京証券取引所などを担当。マクロ経済政策から企業ニュース、政治問題から社会問題まで、さまざまな分野で取材。執筆活動を行っている。
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