ビジネスパーソンの「残業」事情とは?
識学(東京都品川区)が2023年7月11日に発表した「残業に関する調査」によると、「残業は絶対したくない」人は21.3%、「どちらかというと残業したくない」人は56.3%であわせて77.6%に上った。どちらかといえば、家族と過ごす時間の確保やワークライフバランスの向上など、プライベートを大事にする価値観がトレンドのようだ。
なお、一方では「どちらかと言えば残業したい」人が16.7%、「できれば残業したい」人は5.7%であわせて22.4%で、寄せられた意見によると「残業代無しでは生活が苦しいから」、「仕事が多いため」などの切実なコメントも上がっている。
「残業している人の方が実は稼いでいるのでは?」と思うことがある65.7%
この調査は、2023年6月5日にインターネットを通じて行われた。対象は、全国の従業員数10名以上の企業に勤める20歳~59歳の会社員300人。
とかく話題になりやすい「残業」問題。昨今、残業を推奨しない企業も少なくないが、経済的な理由や本人の意欲によって「残業したい」という人もいることだろう。識学では今回、「残業したいか」や「残業するために『ダラダラ仕事をする』人はいるか」、企業側の「残業しない施策はあるか」といった切り口で調査をおこなっている。
はじめに、「残業するために『ダラダラ仕事をする人』がいるかどうか聞いた。すると、「いる」は「49.7%」で、「いない」は「50.3%」とほぼ同数になった。
識学では「実際に仕事を『しっかりしている』か『ダラダラしている』かは、見る人の主観になってしまいますが、『ダラダラしている』と見えている人は、少なくないようです」と指摘する。
続いて、「残業するためにダラダラ仕事する人がいる」と関連して、「『残業している人の方が実は稼いでいるのでは?』と思うことはあるか」と聞いた。これに対しては、「そう思う」が「25.0%」、「まあまあそう思う」は「40.7%」であわせて「65.7%」の人が、残業代を稼いでいる「疑惑」をもっていることがわかる。
話題を変えて、「あなたは残業をしたいですか」と聞くと、最多は「どちらかというと残業はしたくない」が「56.3%」。次いで、「残業は絶対したくない」が「21.3%」、「どちらかと言えば残業したい」は「16.7%」、「できれば残業したい」は「5.7%」という結果になった。
ようするに、「残業したくない派」(「残業は絶対したくない」と「どちらかというと残業はしたくない」の合計)の人は「77.6%」、「残業がしたい派」(「できれば残業がしたい」と「どちらかと言えば残業したい」の合計)の人は「22.4%」となり、5人に1人は残業がしたいことがわかる。
同社の調査で、それぞれの派閥に理由を聞いたところ、
●残業をしたくない理由
・家庭を優先したいから。(29歳女性・カスタマーサポート)
・心身ともに疲弊するから。(54歳男性・人事 労務)
・ワークライフバランスを大事にしたい。(49歳男性・研究 開発)
・家事、育児やることが多い。(29歳女性・事務 総務)
●残業をしたい理由
・残業代無しでは生活が苦しいから。(56歳男性・営業)
・お給料が増えるから。(26歳男性・生産 製造)
・仕事が多いため。(33歳男性・事務 総務)
・仕事が残っていると気持ちが落ち着かないから。(男性44歳、営業)
という意見が上がった。「残業したくない派」の人は生活や家族、「残業したい派」はお金やノルマ達成を大事にしている価値観の違いが垣間見えた。
また、残業と評価の関係を聞くと、最多は「残業の有無では評価されていないと思う」で「66.0%」となった。次いで、「残業している人の方が評価されていると思う」が「21.0%」、「残業しない人の方が評価されていると思う」が「13.0%」という結果が出た。
識学では、「『残業している人』の方が、評価が高いのでは?と感じている会社員が、『残業しない人の方が評価される』を上回る結果となりました」としている。
企業から見た「残業」のイメージ...「仕事を頑張っている」21.7%、「効率が悪い」21.0%、「仕事が遅い」15.7%
一方、「残業に対するイメージ」についても聞いている。それによると、働き側は「残業」について「嫌だ」が最も高く「48.7%」となった。次いで「効率が悪い」が「26.0%」と、ネガティブなイメージが多かったものの、3位には「仕事を頑張っている」が「20.0%」で入った。
ところが、会社側のイメージでは、トップは「嫌だ」で「28.0%」となったが、2位は「仕事を頑張っている」が「21.7%」と、残業する姿勢は、ポジティブに捉えられることが少なからずあることがわかった。
残業についての会社の環境はどうか。そこで、定時に帰ることに対する会社の反応を聞くと、「定時で帰りやすい環境」は「55.0%」で過半数を超えた。逆に「定時では帰りにくい環境」は「17.3%」に留まり、「どちらとも言えない」は「27.7%」となった。
最後に、残業を減らすために職場に求めることでは、1位は「必要のない業務をさせない」(37.3%)、2位は「残業をしない雰囲気づくり」(32.0%)、3位は「人員を増やす」(27.7%)、4位は「仕事の割り振りを的確にする」(26.3%)、5位は「『ノー残業デー』などの残業をしない施策の実施」(18.0%)が挙がっている。
識学では、調査を受けて、社員にムダな残業をさせないために「具体的な解決方法として、評価制度を整えることが挙げられます」として、次のように総括している。
「従来の『積極性』などの定性的な項目を評価制度に入れていた場合、『残業している人の方が仕事を頑張っている』と見られ、高い評価を獲得する可能性があります。最悪の場合、ダラダラ仕事をする方が、残業代も貰え、高い評価も得られる、という状態になってしまいます」
「仕事に対する姿勢などではなく、結果のみを評価するように修正することでこの矛盾を解決することができます。例えば、営業などに対しては売上のみで評価することで、定性的ではなく、定量的な成果を出している人を正しく評価できるようになります。
また、間接部門などに対しては一定時間内にこなせた業務の量で評価することも有効です。時間に制限を設けることで、勤務時間内に集中して業務に取り組ませることが可能となります。
ノー残業デーなどの施策だけではなく、残業せず働く人に対しても正しく評価をするために、評価制度を整えることも重要なのではないでしょうか」