超円安時代を生き抜く「経済学講義」

超円安時代に求められる「国内投資」

   超円安時代に求められる「国内投資」という視点も、参考になるだろう。日本経済の空洞化の引き金を引いたのが1995年当時の超円高だったが、その空洞化の結果、超円安になってしまったのである。

「実質実効レートで見ると、過去30年で最も円安になった。物価や賃金の安い日本に投資して生産すれば、空洞化が是正され、地域経済の活性化にもつながるだろう」

   投資の対象の1つに挙げているのが、「グリーン投資」だ。社会の姿が変わるときには、技術革新のスピードも速くなる。経済学者はこうした現象を「ダイナミックな規模の経済」と呼ぶそうだ。

   こうした動きが、気候変動対応の世界で起きつつあるという。「第1回気候変動対策推進のための有識者会議」でブルームバーグNEFの黒崎美穂氏が提示したデータを紹介している。

   それによると、太陽光発電モジュール、陸上風力発電タービン、リチウムイオン電池について、この10年で太陽光モジュールは89%、風力タービンは59%、リチウムイオン電池は89%の価格低下が見られるという。

   そして、それぞれで累積需要の急速な拡大があり、「教科書で説明されるダイナミックな規模の経済性がまさに起きている」という。

   かつて、気候変動対策は社会にとって大きな費用負担と言われたものだった。だが、大々的に取り組むほど大規模な費用低下が見られる世界では、気候変動対策は社会的費用ではなく、成長戦略として考えられるべきだという。

   社会全体が脱カーボンを進めていけば、生活は大きく変わることになる。その姿をこう描いている。

「電力は石油や石炭などの化石燃料から太陽光や風力などの再生可能エネルギーにシフトしていく。再生可能エネルギーにシフトするためには、蓄電の機能を最大限に活用すると同時に、送配電のネットワークの強化も必要だ。海外から輸入するエネルギーは石油や天然ガスではなく、海外で再生可能エネルギーや二酸化炭素の地中への貯留によって生産した水素やアンモニアになるかもしれない。自動車はガソリン車ではなく電気自動車に変わる。省エネや省資源を実現するために、所有から利用にシフトするシェアエコノミーが広がるかもしれない」

   これから10年間で150兆円規模の脱炭素分野の官民投資が生まれるようにするため、20兆円の基金を政府が投入する。そのための資金をGX経済移行債によって調達し、その返済を将来の炭素への税金などの収入で還元しようとするものだ。

   社会全体が適切なカーボンプライスを受け入れる必要があるが、まだ周知されているとは言えない。

   風力発電など再生可能エネルギーの導入が、自分たちの暮らしとつながっているという想像力を持つ必要があるだろう。陸上の風力発電に続き、洋上風力発電の風車が林立する、ふるさとの光景を見て、そんなことを考えた。(渡辺淳悦)

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