2024年 6月 18日 (火)

中小企業の7割が「人手不足」...過去最高 「介護・看護業」は、9割近くが「深刻」

   中小企業の「人手不足」が、いよいよ深刻だ。

   日本商工会議所が、人材不足や多様な人材の就業に関する状況などを把握するために調査したところ、中小企業のじつに7割近くが「人手不足」と回答。2015年の調査開始以降、最も高くなったことがわかった。

   また、8割強にのぼる回答者が、「仕事と育児の両立推進が必要と感じている」と答えていた。

中小企業の人手不足 2022年2月の調査以降、6割超えて高止まり

   調査によると、「人手不足」と答えた中小企業は68.0%にのぼり、2015年の調査開始以降、最も高くなった。

   このうち、「非常に深刻(人手不足を理由とした廃業など、今後の事業継続に不安がある)」と答えた中小企業が6.9%、「深刻(事業運営に支障がある)」とする中小企業が57.2%と、合わせて64.1%が「深刻な人手不足の状況にある」と答えた。【図1参照】

   人手不足の中小企業は2022年2月の調査以降、6割を超えて高止まりしている。

図1 中小企業の64.1%が「深刻な人手不足の状況」にある(日本商工会議所調べ)
図1 中小企業の64.1%が「深刻な人手不足の状況」にある(日本商工会議所調べ)

   人手不足の事業への影響については、「現有人員でやりくりしている」との回答が77.2%にのぼる一方で、「事業運営の具体的な支障が生じている」と答えた中小企業が21.6%、「事業の拡大を見送った」が18.7%と、2割程度みられることもわかった。

   人手不足への対策(複数回答)をみると、「正社員の採用活動強化」が68.5%と最も多かった。「業務プロセスの見直し」が33.2%、「社員の能力開発」は28.9%、「IT化等設備投資」の25.2%など、業務の効率化や生産性の向上の取り組みは約2~3割にとどまった。【図2参照】

図2 人手不足への対策、「正社員の採用活動強化」が68.5%で最多(日本商工会議所調べ)
図2 人手不足への対策、「正社員の採用活動強化」が68.5%で最多(日本商工会議所調べ)

   さらに、人材を確保するための取り組み(採用拡大、離職防止)を複数回答で聞いたところ、最も多い72.5%の中小企業が「賃上げの実施、募集賃金の引き上げ」と回答。残業時間の削減など、「ワークライフバランスの推進」という中小企業も38.1%にのぼった。

   「多様で柔軟な時間設定」(15.4%)や「兼業・副業の許可」(14.3%)、「場所にとらわれない柔軟な働き方」(12.0%といった、フレックスタイムや兼業・副業、テレワークなどの多様で柔軟な働き方の推進はいずれも2割に満たなかった。【図3参照】

図3 人材確保の取り組み、「賃上げの実施、募集賃金の引き上げ」が72.5%で最多(日本商工会議所調べ)
図3 人材確保の取り組み、「賃上げの実施、募集賃金の引き上げ」が72.5%で最多(日本商工会議所調べ)

深刻なのは「介護・看護」「宿泊・飲食」「運輸、建設」...

   「人手不足」を業種別にみると、「不足している」と答えた中小企業が最も高かった業種は「介護・看護業」で、86.0%にのぼった。次いで「建設業」が82.3%、「宿泊・飲食業」の79.4%が続いた。最も低い「製造業」でも58.8%と6割近い。【図4参照】

   日本商工会議所は、「人手不足の深刻度が高まり、中小企業の広範囲に広がってきた」と分析している。

図4 人手不足の業種「介護・看護」「宿泊・飲食」「運輸、建設」(日本商工会議所調べ)
図4 人手不足の業種「介護・看護」「宿泊・飲食」「運輸、建設」(日本商工会議所調べ)

   さらに、人手不足の深刻度を業種別でみると、「(人手不足が)非常に深刻」と「深刻」との合計で、88.4%にのぼった「介護・看護業」が最も高く、「宿泊・飲食業」が82.7%で続いた。2024年問題を抱える「運輸業」が75.0% 、「建設業」が65.6%で、6割を超えて高い。【図5参照】

図5 人手不足の深刻度、「介護・看護業」88.4%で最も高く...(日本商工会議所調べ)
図5 人手不足の深刻度、「介護・看護業」88.4%で最も高く...(日本商工会議所調べ)

外国人材の受け入れ、「拡大すべき」は7割

   調査では、女性のキャリアアップ支援や仕事と育児の両立、外国人材の受入れについても聞いている。

   女性のキャリアアップ支援の「必要性を感じている」と回答した中小企業は84.3%に達するものの、そのうち6割弱が「十分に取り組めていない」と答えた。また、最も注力すべき対象・取り組みを聞くと、「若手の正規女性職員の能力・意欲向上」が28.3%で最も多かった。

   仕事と育児の両立では、「(推進の)必要性を感じている」との回答が84.1%に達したが、やはり、このうちの約半数が「十分に取り組めていない」と答えていた。

   「人手不足のため、子育て中の社員の仕事のカバーが難しい」(44.2%)ことや、「専門的・属人的な業務が多く、子育て中の社員の仕事のカバーが難しい」(37.5%)などの課題があるという。

   政府などの子育て支援には、「保育の質・量の拡充」を求める声が47.6%にのぼり、最多。「子育て中の社員の業務をカバーする社内体制整備支援」(40.6%)などの声があがった。

   また、男性の育児休業について、対象者がいる企業だけでみると、取得率「ゼロ割」は63.2%と6割を超える。取得日数は、「1か月未満」が全体の73.8%にのぼった。

   一方、外国人材の受け入れについては、「受け入れを拡大すべき」とする中小企業は53.4%、「人手不足の業種・地域に限って受け入れを拡大すべき」が14.4%と、合わせて67.8%が「外国人材の受入を拡大すべき」と回答した。

   家族帯同・永住でも、「積極的に推進すべき」が25.2%、外国人材の受け入れ拡大に伴い、「一定程度認めることはやむを得ない」の43.9%を合わせると、約7割の69.1%が「推進派」だった。

   もっとも、課題も少なくない。課題に関する調査では「日本語による円滑なコミュニケーションが困難」が65.5%で最多。政府などに求める取り組みとしては、「受け入れ制度に係る手続き・書類の簡素化・迅速化」が53.9%と、5割を超えて最も多かった。「受け入れに係るコスト負担の軽減」の45.5%が続いた。

   なお、調査は全国47都道府県の中小企業6013社を対象に、2023年7月18日~8月10日に各地の商工会議所職員による訪問やメールなどによる調査を実施した。回答は3120社(回答率51.9%)から得た。

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