1月末から2月初めにかけての週、ITニュースを支配した「マイクロソフト、ヤフー買収へ」のほかに、筆者の目を引いたものがふたつあった。まず朝日・読売・日経の有力3紙が共同で立ち上げた「読みくらべ」サイト「あらたにす」のオープン。そして、「アトラス」などの地図を出版してきたアルプス社が4月1日付けでヤフーに吸収合併されるという小さな記事だ。さて、どちらを取り上げようかと考えていて、ふと気づいた。「ヤフー買収」ニュースの影の主役が、このふたつの分野でも、強力なサービスを提供しているということに。「Googleニュース」に「Googleマップ」「GoogleEarth」。これらを愛用している人は少なくないだろう。筆者もその一人だ。そこで、今回はあらためて「グーグル」なるものを取り上げてみたい。グーグルの「買いっぷり」は節操がない!?パソコン地球儀ソフトの「GoogleEarth」は日本でもファンが多いネット上のあらゆる所で、「Google」ブランドの存在感は日々高まる一方だ。ヤフーが(検索サイトでなく)ポータル(総合)サイトであるように、グーグルもまた、今では多サービス・ドット・コム巨大企業だ。ネット上のウェブページを効率よく検索できるサービス――は「グーグル」の一部でしかない。グーグルの製品一覧を見ると、多くの製品・サービスが並んでいる。画像ライブラリ・共有ソフトの「Picasa」、「GoogleEarth」、2006年10月に16億ドルで買収したYoutube(ユーチューブ)など、買収によるものも多い。極めつけは07年4月、ネット広告企業大手のDoubleClick(ダブルクリック)の31億ドル買収がある。一見すると、矢継ぎ早な、節操のないほどの買いっぷり。なんだか成金が手当たり次第買いあさってるようであり、一部で「なんでも欲しがる」と揶揄されているというシアトルの"巨人"や、かつて六本木ヒルズで働いていた社長の全盛期を想起させないでもない。グーグルのサービスは確実に進化している自動的にニュースサイトを収集・表示するGoogleニュース日本版では、グーグルはヒルズから堕ちた某企業のアメリカ版なのか――といえば、筆者の考えではまるで違うのである。まずグーグルの拡張戦略は「ネット」と「検索」という2本の筋が通っていて、これからどこにどう進んでいきたいのかが明確だ。また「基本無料(で、プレミアムは低額有料)」というネット時代の流儀も貫いている。"検索サイト"の時代からブレてないのだ。そして、なにより重要と思えるのは、グーグルの製品はユーザーに驚きと感動をもたらし、利便性に貢献しているということだ――少なくとも今までのところは。かつてヒルズの社長は「カネで買えないものはない」と豪語したが、某社が買ったサービスは途端に進歩がなくなる、むしろ質が低下する、などと一部で囁かれていたものだ。対照的に、グーグルのサービスは確実に進化している。「Google」ではじめて検索したとき、あるいは「GoogleEarth」の地球儀が回ったとき――グーグルはかつてのソニー製品のような気分を味わせてくれる――と言ったら、少し言い過ぎだろうか。
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