2024年 4月 23日 (火)

破天荒ピアニスト「天平」 青春を生ききった男の音

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『TEMPEIZM』
天平/2008年6月18日発売
TOCP-70511(CD+DVD) 3000円
EMIミュージック・ジャパン


   青春時代になにをするか? 意外にどうでも良い話かもしれない。親になってしみじみ思うのだが、自分の青春時代を振り返ったところで、大したものでもない。自分を取り巻く時代(環境と言っても良いかもしれない)が、妙にはしゃいでいたり、前向きだったり、革命的だったりはしたが、自分は意外とその中で泳いでいただけのような気もする。

   気がつけば親になっていて、子供に対して、家族に対して相応の責任を感じながら、不整合性は感じながらもきっちりと生活してきたつもり。青春の只中で、何をしても、それはその後の人生の糧になるということは言えるが、それ以上でもなければそれ以下でもない、と思っていた。

   天平というクラシック・ピアニストは、それこそピアニストらしからぬ青春を生きてきた。中学から高校まで喧嘩とロックに明け暮れたという。高校を半年で中退し、自分の一縷の可能性を託して音楽の専門学校に入学。専門学校時代も普通の学生だった。だがそんな男をひとりの教師(担任)の一言が奮い立たせる。「期待している」という担任の言葉に、自分への信頼を取り戻した男は、勉強を自分のものにし、大阪芸術大学に進学する。

   これは普通はありえないことだ。ことに音楽に関してはほとんどありえないことだ。まともに音楽の勉強をしないでいた人間が、専門学校で学んで芸大に進む事など、よほどの努力と運がなければ無理な話だ。その無理が引っ込んで天平のその後の運命を変えた。

   大学時代の、ジョルジュ・シフラ(ハンガリー人ピアニスト:1921~1994)との出会いも天平を変えた。シフラにはクラシックという境界を超える力と技量、情熱が満ち満ちていた。自分の行く道が開けた瞬間だった。

   天平のピアノは狂おしいほどのパワーに満ちている。クラシックと言えばクラシック、そうでないと言えばそうではない。まさにTEMPEIZM。青春を生ききった男の音。一度、聴いてみる事をお勧めする。


【TEMPEIZM 収録曲】

1 フレイム
2 一期一会
3 エチュード c-moll
4 幻想曲
5 コンソレーション ★
6 龍の涙
7 鬼神の円舞
8 君がくれたもの ★
9 ディスペア(右手独奏)
10 Area51
組曲【夏の記憶】
11 プロローグ
12 空を駆ける
13 渓谷
14 神社
15 Aki

★ニッポン放送「上柳昌彦のお早うGoodDay!」テーマ曲

加藤普



◆加藤 普(かとう・あきら)プロフィール
1949年島根県生まれ。早稲田大学中退。フリーランスのライター・編集者として多くの出版物の創刊・制作に関わる。70〜80年代の代表的音楽誌・ロッキンFの創刊メンバー&副編、編集長代行。現在、新星堂フリーペーパー・DROPSのチーフ・ライター&エディター。


天平 「Fantasy」

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