『TEMPEIZM』天平/2008年6月18日発売TOCP-70511(CD+DVD) 3000円EMIミュージック・ジャパン青春時代になにをするか? 意外にどうでも良い話かもしれない。親になってしみじみ思うのだが、自分の青春時代を振り返ったところで、大したものでもない。自分を取り巻く時代(環境と言っても良いかもしれない)が、妙にはしゃいでいたり、前向きだったり、革命的だったりはしたが、自分は意外とその中で泳いでいただけのような気もする。気がつけば親になっていて、子供に対して、家族に対して相応の責任を感じながら、不整合性は感じながらもきっちりと生活してきたつもり。青春の只中で、何をしても、それはその後の人生の糧になるということは言えるが、それ以上でもなければそれ以下でもない、と思っていた。天平というクラシック・ピアニストは、それこそピアニストらしからぬ青春を生きてきた。中学から高校まで喧嘩とロックに明け暮れたという。高校を半年で中退し、自分の一縷の可能性を託して音楽の専門学校に入学。専門学校時代も普通の学生だった。だがそんな男をひとりの教師(担任)の一言が奮い立たせる。「期待している」という担任の言葉に、自分への信頼を取り戻した男は、勉強を自分のものにし、大阪芸術大学に進学する。これは普通はありえないことだ。ことに音楽に関してはほとんどありえないことだ。まともに音楽の勉強をしないでいた人間が、専門学校で学んで芸大に進む事など、よほどの努力と運がなければ無理な話だ。その無理が引っ込んで天平のその後の運命を変えた。大学時代の、ジョルジュ・シフラ(ハンガリー人ピアニスト:1921~1994)との出会いも天平を変えた。シフラにはクラシックという境界を超える力と技量、情熱が満ち満ちていた。自分の行く道が開けた瞬間だった。天平のピアノは狂おしいほどのパワーに満ちている。クラシックと言えばクラシック、そうでないと言えばそうではない。まさにTEMPEIZM。青春を生ききった男の音。一度、聴いてみる事をお勧めする。【TEMPEIZM 収録曲】1 フレイム2 一期一会3 エチュードc-moll4 幻想曲5 コンソレーション★6 龍の涙7 鬼神の円舞8 君がくれたもの★9 ディスペア(右手独奏)10 Area51組曲【夏の記憶】11 プロローグ12 空を駆ける13 渓谷14 神社15 Aki★ニッポン放送「上柳昌彦のお早うGoodDay!」テーマ曲
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