米国の大手パソコンメーカー、Dell(デル)社がついにミニノートPC市場に参入した。「InspironMini9」の名称で現地時間の2008年9月4日に発表。5日現在、米国のほか、国内の同社サイトでも注文を受け付けている。SSDの搭載でEeePCと真っ向勝負の形にデルの初ミニノート「InspironMini9」がついに発売。EeePCの強敵になる!?この製品、概略はすでにアナウンス済みで、ミニノートPCの先駆者で大ヒット定番モデルのASUSの「EeePC」の強敵になるのでは、と噂されてきた。実際にベールを脱いでみると、機器の構成と本国の価格設定はEeePC(の現在のメインモデルである901-X)を強く意識したモデルに思える。とりわけ注目なのは、メインの保存装置にEeePCと同じフラッシュメモリ(SSD)を採用したこと。これによってEeePCと真っ向から対決する形になっている。他のミニノートは容量比で価格の高いSSD採用に二の足を踏み、代わりに見栄えのする大容量100GB級のHDDを搭載。最大で10GB程度しか保存できないEeePCとの差別化を図っていた。大は小を兼ねるというし、HDD容量が多くて悪いことはない。しかし筆者の考えでは、インターネット利用を主目的とし、省能力で画面も小さく、その代わり小型で価格が安い「ネットブック」において、HDDだけが高級モバイルパソコン並みに肥大化していても、たいして意味はない。そして、持ち運びの機会が多く、使用する場所も不安定なモバイル環境では、容量があろうとなかろうと、HDDはつねに大きなウィークポイントである。なにしろHDDは一見すると頑丈そうな箱だが、中身は高速回転するアナログレコードに似た精密機械だ。とくに電源を入れてる間は、振動や衝撃が生じないよう全神経を集中して注意しないといけない。ちょうどレコードを聞くときのように――。パソコンのなかでも壊れやすいパーツとされており、いざ故障すればダメージは大きい。いくら振動・衝撃対策がされていて、そう滅多に壊れないと言われても潜在的な不安はぬぐえない。そもそも駆動パーツがないフラッシュのSSDならば、そうした心配から相当、自由になれる。消費電力、発熱、騒音、速度(これは製品差が大きいとされる)の面でもメリットがあるのだから、SSDミニノートの選択肢が増えたことは歓迎したい。「違い」はどこか…カスタマイズ性、バッテリー、そして価格注文を受け付けるデルのサイト。米国にくらべて割高な価格設定になっているSSDのほかにも両者の共通点は多い。ディスプレーサイズ、CPU、本体カラーは黒と白で、最小構成時で1.035kgの重量、サイズもほぼ同じ。米国モデルでは、補助的な保存手段としてオンラインストレージ(2GB)を無料で提供するとしており、これもEeePCと同じアイデアだ。まるで、EeePCの完全なるコピー商品、クローンのようにも見えるInspironMini9だが、今のところ、仕様上での違いはどこになるだろうか。まずデル製品全般の特徴でもあるカスタマイズの多様性が挙げられる。SSDの容量やOS、1.3MピクセルのWebカメラと内蔵Bluetooth機能もオプションとなっている。SSDは4GB、8GB、16GBの3種類から、OSはWindowsXPとLinux系のUbuntuから選べる。明らかなマイナス点は、最大3時間40分駆動とされる4セルのバッテリ。これは6セルで約8.3時間駆動(JEITA測定法)のEeePC901-Xに大きく劣るはずだ。それでも、5日現在、米国ではXPのフルオプション・モデル(黒)が約479ドル(期間限定の割引適用後)で売られているから、2セル分の差は容認できるかもしれない。EeePC901-X(XPモデル/SSD12GB)の実勢価格550~600ドルにくらべて10~20%、約100ドルも割安なのだ。ただし、同じスペックのモデルが国内では約70000円。日米間でかなりの「違い」が目立つ、強気の売り出し価格になってしまった。米国モデルの価格を先に知った筆者は、破竹のEeePCの前にようやく本物の挑戦者が登場か――と一瞬色めき立ったのだが、どうやら海の向こう限定の話になってしまったらしい。今後の国内販売価格が米国基準に是正される可能性に期待したいところだ。
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