触って選ぶ楽しみ 弘前のブナコ

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   G8北海道洞爺湖サミットのお土産に選ばれたり、昨年末にグッドデザイン賞に新商品が選ばれたりと、青森県弘前市で木工品を作る「ブナコ」が元気だ。ブナの天然木を素材として原材料の加工から製品の仕上げまでブナコは自社内で一貫して生産をしている。とはいえ基本的な技術は1960年代に確立され、今もなお同じ製法を用いている。社内に特別新しいことがあるわけではない。しかし、やはり脚光を浴びている。ショールームが作られたのも、だからこそだ。世界的なブナ林で知られる白神山地が世界遺産になったのもこれに拍車をかけているのだろう。

実際に触って「ブナコ」を確かめる

弘前市にあるブナコショールーム
弘前市にあるブナコショールーム

   僕の会社のスタッフが夏休みをとって、青森に行った。第一の目的がブナコのショールーム。行って選びたかったのだと言う。

   今の東京だったらブナコの商品は基本的に手に入る。さまざまな展示会でもブナコは引く手あまた。デザインにうるさい雑誌にもよく登場している。カッシーナIXC.やBEAMSとコラボレーションをした商品も存在している。東京なら手軽にブナコを手に入れることができるし、購入はそう難しいことではない。しかし彼がこだわっていたのは触って確かめること。そうなったら現地に行くしか方法はない。

   JR弘前駅からブナコのショールームまでは歩いて10分もかからなかったそうだ(その前に6時間かかっている)。ブナコの製品が置かれている六本木の「MITATE」を彼は知っているし、松屋銀座での先日の展示も見ている。何も現地に行かなくてもいいくらい熟知しているはずではあるけれど、そこまでして触って確かめたかったという根性が僕のスタッフにあるのはうれしい。

   実際、入って眺めていると、ショールームの方が「どうぞ、手に取って、触って、確かめてみてください」と話しかけてきたそうだ。彼が喜んでどんどん触ったのは間違いない。彼がいなくなった後、すべての製品をふく作業が店の方に待っていただろう。

「素材」を無駄にしない そこにブナコの価値がある

生産中止になったはまぐり型の小皿
生産中止になったはまぐり型の小皿

ブナコの基本となる生成りの深鉢
ブナコの基本となる生成りの深鉢

   ブナコの製品は工業製品と木工の中間に位置するような手工業だ。ブナの天然木を長さ2メートル、幅1センチ、厚さ1ミリの薄い板にする。底面にあたる部分を用意し、それを薄い板で巻いていく。巻き上げた後、この薄い板を手作業でずらして形を作る。こうしてできた形には段がある。ある時はそれをそのままに、ある時はそれを削って滑らかな面に、そしてその中間の少し段を感じるスタイルもある。最後にウレタン塗装をしてブナコの製品となる。

   ブナコが今、再評価されたのにはまず、素材を無駄にしないという点がある。くり抜いて作る木工と比べると10倍の製品を同じ木材から生み出すことができる。エコ、と今なら簡単に言うけれど、ブナコが生まれたのは1960年代。工業化に対して手作業の木工がどうすれば個人の技を超えることができるかを考えた結果として生まれたものだ。ここは知っておいてほしい。

   そして手触りで選ぶ喜びというのが重要なのではないかと僕も思う。選ぶ喜びがブナコにはある。実際、彼はそのショールームにあるすべての製品を手で触り、購入を決めた形の製品は店のバックヤードにあるものも含め、すべて触って確かめた上で選ばせてもらえたと言う。この体験ひとつで充分に楽しい夏休みになったようだ。


◆坂井 直樹 プロフィル

坂井直樹氏
ウォーターデザインスコープ代表/コンセプター。1947年京都市出身。京都市芸術大学デザイン科入学後、渡米。サンフランシスコでTattoo Companyを設立。ヒッピー達とTattooT-shirtを売り、大当たりする。帰国後、ウォータースタジオを設立し、日産「Be-1」「PAO」のヒット商品を世に送りだし、フューチャーレトロブームを創出した。2004年デザイン会社、ウォーターデザインスコープ社を設立し、ケイタイを初めとした数々のプロダクトを手がける。現在auの外部デザイン・ディレクター。07年9月、新メディアサイト「emo-TV」を立ち上げる。同年12月には、日常の出来事をきっかけにデザインの思想やビジネスコンセプトを書きつづった「デザインの深読み」(トランスワールドジャパン刊)を著した。

>>>emoTV ムービーのココロミ

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