2024年 4月 27日 (土)

「荒川静香」もBGMに使用 女性5人組のアイリッシュ音楽

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『ザ・グレイテスト・ジャーニー~ザ・ベスト・オブ・ケルティック・ウーマン』
ケルティック・ウーマン/10月15日発売/
TOCP-90001  2800円
EMI MUSIC JAPAN  


   アイルランド。大ブリテン島の北西に浮かぶ小さな島国だ。詳しくは省くが、この島の北部アルスター地域の住民は少し前までイギリスの支配を嫌い、俗に北アイルランド紛争と呼ばれる、爆弾テロも辞さない武力闘争をIRA(アイルランド共和国軍)が主体となり繰り広げていた。その背景には宗教的差別があったりするのだが、現在は一応の決着はついているものの、完全な解決をみてはいない。

   爆弾テロ騒動が日常だったアイルランドは、歴史を遡るとケルトに行き着く。ケルトはカエサルの「ガリア戦記」に描かれる屈強勇猛なガリア民族の別称。一時はヨーロッパを席巻するほどの勢力を誇ったが、現在はアイルランドとスペインのバスク地方に残るだけだ。バスクにも解放戦線が存在し武力闘争を展開しているのは、偶然ではない気がする。民族の血が騒ぐのかもしれない。

   それはそれ。一方でアイルランドにはケルトの独自の文化が残されている。渦巻きに象徴されるような輪廻転生を孕(はら)む生命観、死生観は他に類をみない。大地母神・モリガン(戦いの神でもある)、ドルイド僧、ダナー神族……こうした存在は、ケルトの象徴である。そして一方では民俗学的に興味深い妖精や魔女、小人の話も残され、トールキンの「指輪物語」などもケルトの伝承が底本になっているように思う。

   アイルランドはキリスト教圏だが、20世紀後半からケルト的なるものの復権が叫ばれている。その顕れのひとつが音楽だろう。80年代後半に登場したエンヤを代表とするアイルランドのアーティストたちは、アイルランドに息づく独特の音を世界に敷衍(ふえん)した。そのうちの1アーティストが、女性5人組のこのケルティック・ウーマンだ。グループの名前からして、自らの民族的アイデンティティーの表明とも取れる。このアルバムは、彼女たちがこれまで制作した3枚のオリジナルアルバムを主体にしたベスト盤。どちらかといえばトラディショナルな音が多いが、日本でもフィギュアスケートの荒川静香が演技のBGMに使い有名になった「ユー・レイズ・ミー・アップ」、エンヤのカヴァー「オリノコフロウ」なども収録されている。アイリッシュ・サウンドの原郷に佇む思いに浸れる1枚だ。

【ザ・グレイテスト・ジャーニー~ザ・ベスト・オブ・ケルティック・ウーマン  収録曲】
1. ザ・コール
2. ピエ・イエズ
3. ハリーズ・ゲームのテーマ
4. バタフライ
5. ザ・ヴォイス
6. ダニー・ボーイ
7. オリノコ・フロウ
8. ユー・レイズ・ミー・アップ
9. シェナンドア~コントラディクション
10. イニシュフリーの島
11. ドゥラモン
12. グリーン・ザ・ホール・イヤー・ラウンド
13. アヴェ・マリア
14. 空と夜明けと太陽
15. サムウェア
16. ビヨンド・ザ・シー
17. すばやき戦士
18. アット・ザ・ケーリー
19. スパニッシュ・レディ
20. ウォーキング・イン・ジ・エアー



◆加藤 普(かとう・あきら)プロフィール
1949年島根県生まれ。早稲田大学中退。フリーランスのライター・編集者として多くの出版物の創刊・制作に関わる。70~80年代の代表的音楽誌・ロッキンFの創刊メンバー&副編、編集長代行。現在、新星堂フリーペーパー・DROPSのチーフ・ライター&エディター。

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