日本の「イル・ディーボ」 歌謡曲&J-POPを歌う

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The JADE(ざ・じぇいど)
手紙
TOCE-56180
2500円
4月15日発売
EMIミュージック・ジャパン


   音楽の最近の顕著な傾向として、音のジャンルレス化がある。クラシックやジャズ、ポピュラー、ロックもヒップホップもJ-POPも、境界が失われてきている。もちろんジャンル化は、インデックスとしては便利なのだが、なぜこうした傾向が見られるのか、いくつか理由は挙げられる。その最も大きなものは「煮詰まった」ということだろう。音楽という表現形態だけでなくどのような表現も、その方法論は肥大し、いつか煮詰まっていく。深化を目指すこともあるだろうが、それとて肥大化の枝葉だ。ポピュラー畑のアーティストがクラシック的な音場を必要とし始めるのは、成り行きとして分る。それはこれまでにもあらゆるジャンルのアーティストが試みている。

   だが、以前にも書いたが、再現芸術であるクラシック畑のアーティストが、ロックも含めたポピュラーな音場に近づいていくのは、相当の覚悟と理由があるだろう。

   もちろん今始まったことではなく、日本の歌謡史を見れば、藤原義江を筆頭に、戦前戦後の流行歌手のほとんどが、クラシック畑の出身者だった。だが、現在の傾向とはあきらかに異なった理由で、生活のためと言う場合がほとんどだった。

   日本最大最高のオペラ・カンパニー=二期会のトップテノール=高野 二郎、樋口 達哉、トップバリトン=黒田 博、成田 博之の4人が、The JADE(日本古来の宝石=翡翠の意味)というヴォーカルユニットを結成したと聞いて、びっくりした。まず、この4人が、同時にレコーディングすることは無理だろうと思った。そしてオリジナル楽曲「手紙」を携えてのCDデビューと聞いて、さらにびっくり。ポピュラー畑への参入を意味するからだ。

   世界を見れば、イル・ディーヴォのような存在感。

   話を聞く機会があったので、素直にユニットを組んだ理由を聞いてみた。

「オペラ歌手が歌謡曲やJ-POPなど、一般になじみのある音を本物の歌声で歌い上げる新しいジャンルを立ち上げよう、というコンセプトから始まっています。二期会発のパブリックなユニットですが、クラシックの間口、裾野が広がればという思いで始めました」(高野)
「オペラは、敷居が高いと感じている方も多い。高いと思われている敷居を跨いでもらうために、本物は崩さず、自分たちの力をきちんと披露しながら、クラシックやオペラに興味をもって近づいてもらえれば」(黒田)
「オペラのファン層を広げていくための突破口になれば良いなと」(成田)

   クラシックの唱法とのあつれきに関しては、

「初めの頃は、違いを意識して、歌い方をなんとか変えていかないと、と思っていたんですが、クラシックの唱法でポップスを歌うことでまた別の歌として聴いていただけるのではないかと思い、むしろ歌い方を変えないようにしました」(樋口)

と明確な答えが。

   音楽表現としては、やはり一頭地を抜いている。聴けば味わいの深さに頭がさがる。当然最高の歌が聴けるわけで、ちょっと「卑怯」な感じもするが、聴く側としては「あると思います!」

【手紙  収録曲】
1.手紙 *TBS系「徳光和夫の感動再会"逢いたい"」エンディング曲
2.祈り~You Raise Me Up日本語ヴァージョン~
3.夜空ノムコウ
4.悪女(歌唱:高野二郎)
5.PRIDE(歌唱:成田博之)
6.初恋(歌唱:樋口達哉)
7.秋桜(コスモス)(歌唱:黒田博)
8.赤いスイートピー(歌唱:高野二郎)
9.喝采(歌唱:成田博之)
10 One more time,One more chance(歌唱:高野二郎)
11 みんなのものだよ
12 千の風になって

CD発売記念コンサート
横浜公演 4月25日(土) はまぎんホール ヴィアマーレ
東京公演 5月23日(土) 新宿明治安田生命ホール(Sold Out)
~逢いたいよ~コンサート
東京公演 8月29日(土) よみうりホール
EMIミュージック・サイト →  http://emij.jp/jade/

加藤晋


◆加藤 普(かとう・あきら)プロフィール
1949年島根県生まれ。早稲田大学中退。フリーランスのライター・編集者として多くの出版物の創刊・制作に関わる。70〜80年代の代表的音楽誌・ロッキンFの創刊メンバー&副編、編集長代行。現在、新星堂フリーペーパー・DROPSのチーフ・ライター&エディター。

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