2020年 11月 29日 (日)

【書評ウォッチ】難産から見えてくるものとは 人類学的お産のあり方

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   お産が女性の大事業だとは、男性でも知っているか、知っているつもりではある。実は哺乳類の中でも人間の難産が際立っていることを解説した『ヒトはなぜ難産なのか』(奈良貴史著、岩波科学ライブラリー)を、天文学の海部宣男さんが毎日新聞で。ヒトが進化の競争にうち勝った理由をはじめ「何やら、いろいろなことが一度に見えてくるような気がしてきた」と評価は高い。【2012年10月7日(日)の各紙からI】

赤ちゃんの「努力」と女性のがまん

 『ヒトはなぜ難産なのか』(奈良貴史著、岩波科学ライブラリー)
『ヒトはなぜ難産なのか』(奈良貴史著、岩波科学ライブラリー)

   まずヒトの大きな頭について、評者はわかりやすく語る。何枚もの頭骨が複雑な縫合線で付着して脳をしっかり守っているが、生まれて間もない赤ちゃんは柔らかい「ふにゃふにゃの頭」だ。それが生後一年で三倍になり、二歳でようやく固まるという。こんなに頼りない頭で生まれるのがヒトの一大特徴。新生児は生まれるとき、頭の直径を三分の二近くに縮め、身体の位置や方向を何度も変えながら、やっと出てくるのだそうだ。

   難産は、直立歩行とも関係する。直立すると骨や内臓の配置を複雑にできる一方で、お産には不向き。直立の猿人や原人も、難産だったかも。ネアンデルタール人の研究者でもある著者は、彼らは難産でもやや有利だった現代人に負けたのかもしれないと想像する。

   とすると、赤ちゃんの生まれ出るときの「努力」と女性のがまんのおかげで、ヒトは今日あるわけだ。「ヒトは、文明を持てる知能を、子孫を残せるギリギリのところで獲得したのだろうか?」と評者。人類学からお産を考えた一冊だ。

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