残暑の折、筆者は喉の渇きを癒してくれるご当地ジュースを探し求めて、東京・銀座のアンテナショップ街を当てもなく歩き回っていた。しかし「これぞ」という品にはなかなか出会えず、渇き骨髄に入ろうかという頃、足を止めたのは、山形県のアンテナショップ「おいしい山形プラザ」であった。果物が豊富な山形県ならでは濃厚だが甘すぎない独特の味わい山形県といえば、日本の米どころ、農作物どころで、果物の栽培も盛んだ。山形プラザにはそんな果物のジュースが麗しく棚に並んでいるのである。りんご、さくらんぼ、山ぶどう――。どれも食指が動き、喉が鳴りそうになるが、なかでも山形名物の果物である西洋梨のラ・フランスを絞った珍しい「ラ・フランス ジュース」(720ミリリットル、1260円)が目に留まった。蔵王山麓の上山市の果樹園「果物楽園うばふところ」で生産されたもので、某紙の取り寄せたいジュースランキングで高評価を得たとの触れ込みである。ちなみに「うばふところ」とは、漢字で「姥懐」と書くところの地名のことらしい。ワインボトルのような瓶には、ラ・フランスが描かれた白いシンプルなラベル。なかに入っているのは、山形県産のラ・フランスと酸化防止剤(ビタミンC)のみである。桃のネクターを思わせるグラスにそそぐと、黄緑色でとろみがある液体が桃のネクターなどを思わせる。飲み口は濃厚でありながら、品がよく、甘すぎず、イヤ味がまったくない。果実をじかに食べているとき以上に、果実の真髄を味わっているような気分である。しばらく飲んでいるうちに、このジュースに、喉の渇きを癒すという実用性を求めていたのは大きな間違いだったと思うようになった。すぐれたワインを味わうときと同じような敬虔さで接するべきであった。商品名:ラ・フランス ジュース販売:果物楽園うばふところサイズ:720ミリリットル価格:1260円
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