2024年 4月 26日 (金)

霞ヶ関官僚が読む本
「楽しい昆虫採集」が告発する「生命を大切に」教育の行き過ぎ

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著者の2人の文学者は昆虫の専門家と二足の草鞋

   このように本書の筆致にはある種の熱気と説得力があり、読んでいて引き込まれる。日本における昆虫採集の歴史から、洋の東西における文学や絵画への昆虫の採り上げ方の相違まで話題は広い。趣味への情熱だけではこうはいくまい。そう思ってカバー裏手を見れば、筆者らお二人とも外国文学の研究者という。翻訳も数多く手掛けておられることだろう、道理で読みやすい。そのような方々が何故このような知見をお持ちかと訝れば、昆虫の研究はアマチュアが支えているという話もまたちゃんと書いてある。

   ウィキペディアで見ると、著者の奥本大三郎氏は仏文学者にしてファーブル昆虫館「虫の詩人の館」館長、岡田朝雄氏は独文学者にして日本昆虫協会副会長。二足の草鞋とはまさにこのことだ。

   趣味の世界はどの分野も奥深いが、筆者らの知識と技術には舌を巻く。

   第一章のエッセイ風のイントロと第二章の最初の項までの、本書のおおよそ三分の一は叙上のような話が続き、昆虫採集を趣味としない評者のような人間にも面白く読める。しかし、そこから先が趣味の書たる本書の本領発揮となる。

   採集の方法・場所、標本にする技法等が、図解と、小さな経験談や蘊蓄も交えつつ、次々と紹介されていく。昆虫の名前が延々と羅列され、それらがどういった植物を好むか、植物名がこれまた延々と続く部分もある。むろん、自治体の条例による採集禁止の場所も紹介される。「悪法もまた法なり」などと揶揄することもなく、しっかりとした遵法精神を感じさせる。

   幼少時の虫取りくらいしか経験がない評者には、専門性が高く意味が分からない部分も多々あったし、それぞれの昆虫にどのような魅力があるかは図鑑に譲らざるを得まい。しかし、少しでも虫取りをしよう、あるいは標本を作ろうと思う人にとって、これは完璧なガイドブックだろう。

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