2024年 4月 28日 (日)

霞ヶ関官僚が読む本
医療ビッグデータの持つ潜在力、どう活かすか

安易な使用には大きなリスクも

   ビッグデータは、研究者が「仮説」を立て、「検証」するという知的な営みを大きく変える。研究者にとって、これまで仮説を立てる場所は、「限られた観察の場」と「頭の中」、そして「先行研究(既存の文献)」であった。これがビッグデータの登場に伴い、広大なデータの海の中から、これまで人間が感覚的に認知できた形とは違った過程で、突如として奇想天外な新たな仮説が生まれてくるという。

   確かに、ビッグデータは、ある事象と別の事象の間にある(意外な)相関関係をあぶり出してくれる。しかし、人の命のかかった医学の世界では、何らかの相関関係が明らかになったとしても、その背景に潜む因果関係を見過ごしてしまえば、取り返しの尽かないミスを犯すかもしれない。

「(Amazonのように)商品購買履歴や閲覧履歴のビッグデータを基にクラスター分析を行い、消費者にお勧め商品を提案する場合は、そこに過ちがあったとしても生命に関わるようなリスクとなる可能性はそれほど大きくない。ところが、例えば医学において薬の効果を間違って解釈してしまえば、生死に直結するリスクが出てくる」
「ビッグデータの解析結果、そこから導き出された情報が常に正しいとは限らない。膨大な数の分析を通して、偶然に見つけられた相関ばかりが発表・報告される懸念も少なくない」

   ビッグデータがスポットライトを浴びる中で、今、必要なことは、データを直接解析するスタッフ(データサイエンティスト)として優秀な人材を得るとともに、医療ビッグデータを正しく活用するための方法論を確立することだろう。

【霞ヶ関官僚が読む本】 現役の霞ヶ関官僚幹部らが交代で、「本や資料をどう読むか」、「読書を仕事にどう生かすのか」などを綴るひと味変わった書評コラムです。

姉妹サイト

注目情報

PR
追悼
J-CASTニュースをフォローして
最新情報をチェック
電子書籍 フジ三太郎とサトウサンペイ 好評発売中
カス丸

ジェイキャストのマスコットキャラクター

情報を活かす・問題を解き明かす・読者を動かすの3つの「かす」が由来。企業のPRやニュースの取材・編集を行っている。出張取材依頼、大歓迎!