2018年 7月 18日 (水)

若手研究者による沖縄政治史、復帰以降の記述にあらわれる"誤解"の意味

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■「沖縄現代史」(櫻澤誠著)

   若手研究者が書き下ろした沖縄政治史である。近現代史の一項としてマクロ的に観察されがちな沖縄について、いわばミクロ的な政治過程が新書としてコンパクトにまとめられる意義は、今さら述べるまでもあるまい。本書あとがきに執筆経緯が記されているが、意欲ある学究に、こうした大きなテーマの取りまとめを敢えて求めた中公新書編集部に敬意を表したい。

  • 沖縄現代史
    沖縄現代史

「政治部」史観の限界

   本書には、米軍統治からの自治の獲得、本土復帰と沖縄独立論の相克など、いまの沖縄をより深く理解するに資する事実が目白押しだ。現代沖縄の問題に関心がある方には一読の価値がある。

   表現は学者らしく全体に淡々としており、政治の大きな動きも数行で整理される。だがそれら数行の背後に、多くの利害得失や思惑が絡んでいることは容易に想像される。その意味で読み応えもある。

   敢えて苦言を呈すれば、政治の動きのフォローに忙しすぎ、経済の流れがほとんど語られないことだ。例えばB円軍票に言及しても、そのレートが、米軍の駐留を有利にするべく日本円3円=1B円と設定されたため沖縄経済が大打撃を蒙ったことは記されない。「鉄の暴風」といわれる苛烈な沖縄戦後、たくましく稼働を始めた多くの鉄工所の殆どが存続不能となったのは、このレート設定によると評者は聞いている。

   歴史書にままあることだが、本書は、報道機関で喩えれば「政治部」史観に傾斜している。だが政治は全ての人間活動を包摂して動く。「経済部」史観や「社会部」史観をも併せ複眼的に見なければ、表層をなぞるナイーブな歴史観となろう。

【霞ヶ関官僚が読む本】現役の霞ヶ関官僚幹部らが交代で「本や資料をどう読むか」「読書を仕事にどう生かすのか」などを綴るひと味変わった書評コラムです。

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