2019年 12月 11日 (水)

いまだ生まれざる者の声を聞くことの意義 「仮想将来世代」が可視化する未来の人々とは...

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その将来世代とは、どのような「価値観」を持つ人たちであるのか

   第三に、将来世代がどのような「価値観」を持った人たちであるのか、このことが難題をもたらす場合がある。温暖化や経済・財政、原発ならばまだよい。これらは災害など明瞭なリスクや経済資源の多寡という、比較的価値から自由な事柄を問題としている。

   しかしながら、人間そのもののあり方を左右する政策を問う場合、価値観の問題を切り離すのは困難である。ゲノム編集を通じた人間の改造、人工知能の開発といった分野が該当する。ゲノム編集により人体の機能の改善(例:気分障害の因子の排除、認知能力の向上)が可能になる一方、なんらかの損失を伴う、例えば、詩作の能力を損なう場合、我々は自らあるいは未来の子どもたちにその操作を施すべきだろうか。人工知能は生産性の向上という当面の恩恵をもたらしそうだが、世界の仕事のすべてが機械で代替され、人間のやることは機械からの給餌を受けることのみになるとしたらどうか。詩作や仕事の喜びを失うことは、現在の我々(の一部)からみれば重大な損失であろうが、ゲノム編集を受け、人工知能に育まれた将来世代からみれば、それらの損失を損失と感ずることさえ至難である。この場合、仮想すべき将来世代が、詩作や仕事を喜ぶタイプの人間なのか、詩作や仕事を知らぬ人間なのか、自明な答えは存在しない。

   改めて考えてみると、温暖化などの経済的性格の強い問題であっても価値観に関わる面があることがわかる。野放図な化石燃料の消費を続けた先に生まれる未来の人間は、災害リスクに直面しつつも、ゴージャスでスリリングな生活に中毒しており、主観的には満足しているかもしれない(1000年前の人々からみれば、我々現代人が中毒患者のように映ったとしても、評者は驚かない)。

【霞ヶ関官僚が読む本】現役の霞ヶ関官僚幹部らが交代で「本や資料をどう読むか」「読書を仕事にどう生かすのか」などを綴るひと味変わった書評コラムです。

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