スクープ連発!「週刊文春」編集長が実践するマネジメント術とは

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■「週刊文春」編集長の仕事術(新谷 学著、ダイヤモンド社)
■ 無意識と対話する方法(前野隆司・保井俊之著 ワニブックス社)

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   役所に就職以来、海外勤務などで一時中断したが、もうほぼ30年近く購読している雑誌は、月刊文藝春秋(文藝春秋)、週刊文春(文藝春秋)、AERA(アエラ)(朝日新聞出版)である。

   そのうち、週刊文春編集長の新谷学氏が、『「週刊文春」編集長の仕事術』をこの3月にダイヤモンド社から刊行した。一般に公務員にとって、週刊誌編集部というと、あまり近寄りたくないところではあるが、これには注目せざるを得ない。

   週刊誌は、言ってみれば毎週毎週の読者との「対話」である。最近は、POSの発達で、発売日の早い段階で、売れ行きが分かってしまうという。それを毎週繰り返すという地道な取り組みに、カリスマ編集長がどのように取り組んでいるのか、興味津々だ。

   ただし、本書は、その編集担当者の言によれば、「一編集長の話」というよりも、「日本を元気にする1冊」であるという。本書の表紙の裏書には、「みなさんがそれぞれのバッターボックスで『フルスイングしてみようか』という気持ちになってくれたら著者として最高にうれしい」とある。

つまるところ、大きな仕事は1人ではできない

   本書は、編集長の仕事術を6章から解説する。

「情報/人脈(全てのビジネスは『人』から始まる)」
「企画/発想(予定調和はおもしろさの敵である)」
「依頼/交渉(難攻不落の相手から『YES』を引き出す)」
「組織/統率(ヒットを生み出すチームはこう作る)」
「決断/覚悟(リスクを恐れず壁を突破する)」
「戦略/本質(『売れない』時代のマーケティング)」

からなる。

   本文中、太いゴシックで強調している「『おもしろがる』気持ちがスキルやノウハウよりも大切だ」という言葉が目を引く。昔「新聞が面白くない理由」(岩瀬達哉著 講談社文庫 2001年 紙媒体は絶版)を読んで考えさせられたが、結局、ジャーナリズムは、特に、ワクワク感・「フルスイング」がないとだめなんだと改めて思った。

   一応管理職の端くれとしては、新谷編集長が、どのように週刊文春編集部をマネージしているかはとても参考になる。「大きな仕事は決して自分1人ではできない」や「職場は明るく楽しくないとダメ」はまさに至言だ。また、長期に購読している身からすると、毎週のコラムも楽しみであり、そのようなところにもやはりきちんと目配りしていることが、老舗週刊誌を成り立たせている基盤であると思う。編集長が具体的な人物について、あえて実名で書いているところをどう解釈するかは、インテリジェンスとして興味深いところだ。

   加えて、「対話」について「無意識研究の第一人者と、在米の社会システム研究者がやさしく解き明かす、新しい時代のコミュニケーション」として説いた『無意識と対話する方法」(前野隆司・保井俊之著 ワニブックス社 2017年2月)が出た。

   著者の1人である保井氏(慶應義塾大学大学院特別招聘教授)は、「対話理論の最新の定義では、対話とは単に言葉を他人と交わすことではなく、自分と向き合って内省すること、並びに友人や環境と平らかに協働・協創することで新たな価値を生成することを指す」という。そして、「対話は、心と社会のイノベーションの大きな源泉の1つとして、大きな注目を近年浴びるようにな」ったとする。保井氏によれば、創刊以来「文藝春秋」も対談という形式がさかんにとられたが、これは、著者1人の論述が本の神髄とする欧米に見られない日本の特色だという。

   いずれの著作もさまざまな形での「対話」、コミュニケーションの重要性が通奏低音として流れる。新年度を迎えるにあたり、心機一転前向きな気持ちになれる本である。

経済官庁 AK

【霞ヶ関官僚が読む本】現役の霞ヶ関官僚幹部らが交代で「本や資料をどう読むか」「読書を仕事にどう生かすのか」などを綴るひと味変わった書評コラムです。

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