2019年 11月 13日 (水)

ホームホスピス、人生の最期に新たな出会いがある「もう一つの家」

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いのちつぐ「みとりびと」第3集(4巻セット)(写真・文 國森康弘、農村漁村文化協会)

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   評者はこれまでに3人の親を看取った。義父は病院のホスピスで、父は救命救急室(ER)で、義母は一般の病床であった。父は自宅で倒れ、その翌日に亡くなったが、義父母はいずれも「がん」だったから、日常生活動作は比較的自立しており、ぎりぎりまで自宅で療養し、最後に入院し、旅立っていった。

   義母とは同居していたので、「願わくは在宅で」という思いはあったが、急激な衰えとせん妄の出現、さらに娘達のダブル受験が重なり、「ひとまず入院して体調回復を」という医師の勧めを天の声とばかりに受け取り入院させた。結果的には、そのまま状態は改善せず、家に戻ることはできなかった。

   入院先は、我が家から自転車で5分のところだったから頻繁に通い、亡くなったときも、家族それぞれに看取ったという感覚があったが、果たして、義母自身がどう思っていたのかはよくわからない。

   誰にでも訪れる「死」であるが、実のところ、評者自身、自分の場合にどうなるのかは全く想像できない。「死」が怖くて考えたくないのか、それとも家族が当てにできないから考えたくないのか、きっと、その両方なのだろうが、いずれにせよ全くの準備(覚悟)不足である。

   現在、1年間で約130万人が死亡しているが、そのうち在宅死は1割強。つまり、自宅で天寿を全うできる者は圧倒的少数である。今後、大都市部では急速な後期高齢者の増加に伴って死亡者の急増が見込まれているが、果たして、看取りの場所をどうするかについて、具体的な目途は立っていない。

   本書は、看取りの現場の取材を続けている写真家が、看取りや死は冷たい終末ではなく、次代への「いのちのバトンリレー」だとして、あたたかな看取りの実際を、写真と平易な文章で綴った写真絵本の第3弾である。

   これまでのシリーズでは、農村地帯や震災地域での看取りが対象であったが、今回は大都市東京のホームホスピスを舞台に、これまで何のつながりもなかった人々が「もう一つの家」で出会い、最期まで生ききる「とも暮らし」の世界を描いている。

ホームホスピス――看取りの一つの選択肢――

   本書の舞台は、ホームホスピス、楪(ゆずりは)。病や障害のために自宅での生活が難しくなった方が、最期まで暮らせる終のすみかである。「ホーム」というだけあって、施設でも病院でもない。人生の最終幕に、家族以外の人々と出会い、人とのつながりの中で看取られていく、「とも暮らし」の場だ。

   このホームホスピス、2004年に宮崎市で産声を上げた「かあさんの家」が先駆けであり、現在では、全国25か所に広がっている。

   東京都小平市にある楪は、主婦だった嶋崎叔子(しまざきよしこ)さんが、母を病院のホスピスで看取った経験と遺族会の活動をきっかけに立ち上げた。住宅地のマンションの1階を改装し、最大5人が入居できるようにした。ヘルパーさんが24時間365日常駐し、訪問診療や訪問看護が受けられる。そして、入居者の家族や遺族、様々なボランティアの方々が頻繁に顔を出し、活動に参加するのが特色である。

   入居者は、それぞれのリズムで自由に生活し、家族も好きなときに好きなだけ会いに来られる。入居者同士が親しくなるのはもちろん、家族同士もひざ突き合わせ、喜びや悲しみを共有していく。本書からは、家族の枠を超えたつながりの豊かさ、そして、にぎやかであたたかい雰囲気が伝わってくる。著者はこの楪を「もうひとつの家」と呼ぶ。

   楪は、新しい葉が出たら、ゆずるように老いた葉が落ちて、いのちをつないでいく。いのちのバトンをつなぐ、このホームホスピスは、この楪の木にちなんで名付けられた。

【霞ヶ関官僚が読む本】現役の霞ヶ関官僚幹部らが交代で「本や資料をどう読むか」「読書を仕事にどう生かすのか」などを綴るひと味変わった書評コラムです。

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