2020年 1月 19日 (日)

吉田拓郎、もう「つま恋」はないのか
あの夏の日の永遠の主人公

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75年のつま恋は怖かった、と拓郎

   70年代は、そういう時代だった。

   吉田拓郎は、71年の第三回「全日本フォークジャンボリー」に出演している。翌年、「結婚しようよ」が大ヒットした時に、教条的なフォークファンから「裏切り者」呼ばわりされ「帰れ!」と投石されるという経験もしている。アルコールも入った数万人の観客が群集心理に駆られた時にどうなるか。彼が、75年の「つま恋」を、「怖かった」「始まってからのことはほとんど覚えてない」というのも、きっとその通りなのだと思う。

   吉田拓郎は、79年に愛知県篠島でやはりオールナイトコンサートを成功させている。人口約2000人の離島をほぼ借り切り10倍の観客が集まるという野外イベントは、史上初だ。85年には、2回目の「つま恋」を単独で行った。彼が70年代に関わった縁のミュージシャンが総結集した一夜は一つの時代の締めくくりのようだった。

   吉田拓郎と「つま恋」――。

   そんな特別な関係を決定づけたのが、2006年の「吉田拓郎&かぐや姫・Concert in つま恋2006」だった。

   その年の4月、彼は60才になった。

   彼は2003年、57才の時に肺がんの摘出手術もしている。リハビリを終えて復帰して以降続けてきたツアーのファイナルが31年ぶりの「つま恋」だった。

   2000年代に入り、フジロックを筆頭に夏フェスは夏の風物として各地で開催されるようになった。若者のためと思われている野外イベントを60才になって行う。観客も決して若いとは言えない。コンサートからも遠ざかりつつある大人が、決してアクセスが良いとは言えない場所まで足を運んだりするだろうか。彼自身の体調も含め、不安材料には事欠かなかったと言って良いだろう。

   若い頃の自分をどう超えて行くのか。

   ステージを楽しむことも出来ず、ほとんど覚えてないという75年とは違う充実した野外イベント。13時に始まったライブの一曲目はかぐや姫と一緒の「旧友再会フォーエバーヤング」。穏やかな笑顔で客席を見渡し、気持ち良さそうに歌う姿に75年の彼はいなかった。

   客席の平均年齢49才。約3万5千人が集まり、約8時間半に及んだ「大人の祭り」は、日本のコンサート人口動態の変化の先取りでもあった。

   吉田拓郎は、去年、70才を迎えた。

   もう夏の野外コンサートのステージで見ることはないのかもしれない。

   でも、「あの夏の日」の永遠の主役が、彼であることに変わりはないのだと思う。

(タケ)

タケ×モリ プロフィール

タケは田家秀樹(たけ・ひでき)。音楽評論家、ノンフィクション作家。「ステージを観てないアーティストの評論はしない」を原則とし、40年以上、J-POPシーンを取材し続けている。69年、タウン誌のはしり「新宿プレイマップ」(新都心新宿PR委員会)創刊に参画。「セイ!ヤング」(文化放送)などの音楽番組、若者番組の放送作家、若者雑誌編集長を経て現職。著書に「読むJ-POP・1945~2004」(朝日文庫)などアーテイスト関連、音楽史など多数。「FM NACK5」「FM COCOLO」「TOKYO FM」などで音楽番組パーソナリテイ。放送作家としては「イムジン河2001」(NACK5)で民間放送連盟賞最優秀賞受賞、受賞作多数。ホームページは、http://takehideki.jimdo.com
モリは友人で同じくJ-POPに詳しい。

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