和楽器バンド、21世紀の和洋を生で
伝統守るだけでは本家は超えられない

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   タケ×モリの「誰も知らないJ-POP」

   この曲「雨のち感情論」が彼らにとっての初めてのシングルだというのが意外だった。

   和楽器バンドは2014年にデビュー。一枚目のアルバム「ボカロ三昧」はアルバムチャート5位。翌2015年の二枚目「八奏絵巻」は1位。レコード大賞の企画賞も受賞、去年出た三枚目「四季彩」は2位。すでにアルバムアーティストとして成功を収めている。シングルがそのアーティストの名刺代わりという役割を持っているとしたら、もはや必要もないだろうと思ったからだ。

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詩吟のコンクール優勝がきっかけで

   ヴォーカルの鈴華ゆう子は、筆者が担当するFM NACK5「J-POP TALKIN'」のインタビューで、「今まで敢えて出さなかったんです」と言った。

「和楽器を聴いて貰いたい、目で見て楽しんで貰いたい。それには映像が一番分かりやすいと思ってたんで、DVDシングルなどは出してたんです。CDはアルバムだけ。でも、デビューしてから予想以上のスピード感のある活動の中で、日本の皆さんに、聞く物として改めて知って貰いたい、と思って今出すことにしました」

   和楽器バンドは、2013年に鈴華ゆう子の呼びかけで結成された。彼女は、実家がピアノ教室、3才でピアノを弾き、5才で詩吟と詩舞を始め、音大のピアノ科を卒業、コロムビアレコードが主催する詩吟の全国コンクールに優勝もしている。

「周りで鳴っている音楽はほとんどがクラシックだったんですが、自分の中では、J-POPの女性歌手に憧れがあって。ピアノの先生をやりながら、ライブで歌ったりしてたんですけど、思うようにならない。私に出来る事は何だろうと。詩吟のコンクールで優勝した時に、これを生かしたいと思った。両方とも私なんだから、和の世界を切り離さないでそういう要素を入れてやればいい。おじいちゃんおばあちゃん向けじゃない、魂を揺さぶるカッコイイものとしてやりたい。そこからメンバーを探して出会ったのが今の人達なんです。どんなにハードロックだろうがクラシカルだろうが、どんなジャンルでもこの8人に落とし込めばジャンルが和楽器バンドになると思ってます」

   和楽器バンドは、鈴華ゆう子(ヴォーカル)、いぶくろ清志(箏)、神永大輔(尺八)、蜷川べに(津軽三味線)、黒流(和太鼓)、町屋(G)、亜沙(B)、山葵(D)という8人組。鈴華ゆう子、神永大輔、いぶくろ清志は華風月という和楽器のユニットも組んでいる。神永大輔は尺八奏者として世界十か国以上、いぶくろ清志は高校生の時に文化庁派遣でアジア各国、黒流は3才で和太鼓を始め、9才の時にプロ集団に加わり、世界十五か国以上で公演しているという海外経験豊富な集団。和楽器の世界ではサラブレッドということになる。

   それでいて和楽器バンドは伝統的な音楽をやっているわけではない。箏や尺八、津軽三味線、和太鼓とエレキギター、ベースドラムが激しく絡み合うハードロックが根底にある。和楽器の持つ悲劇性とヘビメタの様式美がミックスされ、どんなロックバンドにもない情景や物語が生まれてくる。やはり、FM NACK5「J-POP TALKIN`」のインタビューで、黒流はこう言った。

「家は和太鼓だったんですけど、親戚がハードロック好きで、ディープパープルやレッドツェッペリンがいつも鳴っていて。ハードロックが身体に入ってるんでしょうね。自分の中で鳴っているヘビーなものと和太鼓をミックスしたものをやろうと思うようになりました。洋服で叩いたりすると海外では受けるんです。日本はカッコイイと言われる。でも、肝心の日本では眉をひそめる人もいる。異端の太鼓打ちと言われて、何が正解なんだろうとずっと悩んでいた時にバンドの話があったんです」

タケ×モリ プロフィール

タケは田家秀樹(たけ・ひでき)。音楽評論家、ノンフィクション作家。「ステージを観てないアーティストの評論はしない」を原則とし、40年以上、J-POPシーンを取材し続けている。69年、タウン誌のはしり「新宿プレイマップ」(新都心新宿PR委員会)創刊に参画。「セイ!ヤング」(文化放送)などの音楽番組、若者番組の放送作家、若者雑誌編集長を経て現職。著書に「読むJ-POP・1945~2004」(朝日文庫)などアーテイスト関連、音楽史など多数。「FM NACK5」「FM COCOLO」「TOKYO FM」などで音楽番組パーソナリテイ。放送作家としては「イムジン河2001」(NACK5)で民間放送連盟賞最優秀賞受賞、受賞作多数。ホームページは、http://takehideki.jimdo.com
モリは友人で同じくJ-POPに詳しい。

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