2024年 4月 27日 (土)

知識発展の流れを逆行してみよう

全国の工務店を掲載し、最も多くの地域密着型工務店を紹介しています

まだ人類が知らないアイデアはたくさんあるに違いない

   『判断力批判』は美学的判断力と目的論的判断力について論じており、この道徳論的証明が登場するのは後者においてである。遺伝子が生き残るという「目的」を考えつかないまま、世界を眺めると、この世界があたかもなにかの目的を持って構造化されているようにみえることが、不可思議な謎として浮かび上がる。

   評者はカントをおとしめているわけではない。進化的思考をしないというお約束の下で思考するというゲームとして『判断力批判』を読めば、彼の作品は、いま読んでもとても面白い。

   このような事例をみると、人間の知識の発展というものが、どのように起こるのか洞察を得ることができる。以前にはまったく考えつきもしなかったアイデアを思考に導入することで、焦点が一気に転換することで、世界が装いを一新して立ちあらわれるのである。そのようなアイデアの代表例として、評者のような文系人間でさえ、進化、遺伝子、脳科学、ゲーム理論などを挙げることができる。物理学などのハードサイエンスの世界でも同様のアイデアを挙げることができるだろうし、さらに重要なことは、我々人類が知らないアイデアがまだたくさんあるに違いないことである。

   ところで、『判断力批判』の美学的判断力を論じた箇所も、進化というアイデアを織り込むことで、だいぶ見通しがよくなることを指摘しておきたい。この作業については、興味のある読者に取っておくことにする。このように現代の視点から古典を読み直すことは、本来の読み方ではないのかもしれないが、なかなか愉しい時間の過ごし方である。

経済官庁(課長級) Repugnant Conclusion

【霞ヶ関官僚が読む本】現役の霞ヶ関官僚幹部らが交代で「本や資料をどう読むか」「読書を仕事にどう生かすのか」などを綴るひと味変わった書評コラムです。

姉妹サイト

注目情報

PR
追悼
J-CASTニュースをフォローして
最新情報をチェック
電子書籍 フジ三太郎とサトウサンペイ 好評発売中
カス丸

ジェイキャストのマスコットキャラクター

情報を活かす・問題を解き明かす・読者を動かすの3つの「かす」が由来。企業のPRやニュースの取材・編集を行っている。出張取材依頼、大歓迎!