2018年 10月 24日 (水)

経営破綻から復活した日本航空 すべては社員の意識改革から始まった

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■「JALの心づかい   グランドスタッフが実践する究極のサービス(上阪徹著、河出書房新社)

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   お選びいただいたからには、乗って良かったと思っていただきたい。そんなスタッフに支えられるJALの接客サービス。以前、他のエアラインに比べて見劣りしたサービスが、なぜあんなに感じがいいのかと驚かれるまでになったのか。

   日本航空は2010年1月19日に経営破綻した。会社更生法の適用を受け、政府から招請された稲盛和夫会長は、社員の意識改革こそ一番大切と考え、働くスタッフのモチベーション向上をなにより優先した。幹部社員と現場で働く職員が、京セラをモデルに、独自に構想した「JALフィロソフィー」を文書化した。すべての部署を念頭に置いた40項目。これを基盤に、すべての部門が画期的にサービスと収益を向上させた。

   本書は、累計40万部のロングセラー「プロ論。」の著者が、日本航空の乗客の顔となるグランドスタッフに的を絞ったドキュメントであり、多くの企業にあてはまる経営論である。

年3回の研修が義務づけられる「JALフィロソフィー」

   破綻当時、日本航空には経営企画室があり、全組織に指示を出す形で会社が運営されていた。稲盛会長は、社員をモチベートする理念や哲学が欠落していると感じた。長期にわたり株主に報いていくためには、まず、社員が本当の幸せを感じなければならない。社員が自分たちの幸せを考えるところからJALフィロソフィーが生まれ、一年後の2011年1月19日に発表された。

   新人教育では「世界で一番お客様に選ばれ、愛される航空会社」と書かれた模造紙に、一人ひとりが具体像を付箋で貼り付け、グループごとに行動指針をまとめる。この新人教育では、グループ会社、配属部署にかかわらず30人のクラスに分かれる。一人ひとりがJALなのである。

   JALフィロソフィーは、機体整備、客室乗務員、営業など異なる部署を念頭に、共通の意識、価値観、考え方を記している。

   「尊い命をお預かりする仕事」「最高のバトンタッチ」のように航空会社に働く社員の誇りと使命感に直結する項目もあれば、「人間として何が正しいかで判断する」「常に明るく前向きに」「美しい心を持つ」のように一人ひとりを信頼する企業文化を高める項目もある。

   すべての従業員は、このフィロソフィーについて年3回の研修が義務づけられている。他方で、接客サービスを含めて決まり切ったマニュアルはない。同社は破綻前、経費削減の中で「人財」投資を削減していた。破綻直後の客室乗務員の笑顔はマニュアル主義で心の伴わない体質に陥っていたのだ。そのときどきにおいて、ふさわしい対応を心がけるのが新しい日本航空なのである。

【霞ヶ関官僚が読む本】現役の霞ヶ関官僚幹部らが交代で「本や資料をどう読むか」「読書を仕事にどう生かすのか」などを綴るひと味変わった書評コラムです。
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