2020年 8月 10日 (月)

小麦粉の包容力 東海林さだおさんが「チームかき揚げ」に銅メダル

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   週刊朝日(4月6日号)の「あれも食いたい これも食いたい」で、この業界の大御所、東海林さだおさんが「かき揚げ」を論じている。間もなく1500回に届く長期連載。天ぷらも何度となく登場しているが、今回は時の話題に寄り添う展開となっている。

「天ぷら、と聞くと緊張するところがある。フライ、と聞くと安心するところがある」

冒頭はおなじみの東海林節。ここから、コースの海老天に代表される天ぷらの高級感、定食屋を思い起こすフライの気安さが語られ、それぞれの店内描写となる。

   天ぷら屋の客→「それを食し、ウム、と大きく頷き、尊敬の視線を店主に送ると、店主はそれを横顔で受けとめながら早くも次のネタを油の中に静かに投入し...」

   定食屋の客→「アジのフライを齧ってはゴハンに熱中し、店主は知らん顔で競馬新聞に熱中している」...このあたり、ファンにはたまらない寄り道だろう。話は天ぷら界における序列に移る。

   「海老は上位だしアナゴやキスの地位は高く、ナスやカボチャの地位は低い。ネタのはっきりしないかき揚げというものもある」...いよいよ本題である。

  • 汁に浸ったかき揚げ。東海林説によれば、サクサク期からモロモロ期への移行中
    汁に浸ったかき揚げ。東海林説によれば、サクサク期からモロモロ期への移行中
  • 汁に浸ったかき揚げ。東海林説によれば、サクサク期からモロモロ期への移行中

心地よい仲良しぶり

「これといった主役はなくて、玉ネギやニンジン、ゴボウ、コーン、小さな海老などの集合体である場合が多い...天ぷらの世界での地位は低いといわねばならない」

   そんなかき揚げも、立ち食いソバ店では大きな顔をしている。実際うまい。だから、かき揚げそばを食べた東海林さんはいつも「本懐を遂げた、という気分になる」という。

   かき揚げを「一つのチーム」に例えた東海林さんは、いつものように「妄想」を膨らませる。

   「本来、縁もゆかりもない者同士を説き伏せ、言い聞かせ、納得させて一つの団体にまとめ上げた...誰がまとめ上げたのか。小麦粉である。決して表に出ることなく、まさに陰の力、裏の努力、そして人と人とを結びつける才能...」。東海林節、もはや疾走状態で誰にも止められない。

「ぼくはまさに、ここでカーリングに話を持っていかざるをえなくなった」

賢明な読者はすでにお気づきであろうという、いささかの照れを含んだ転調である。

   平昌五輪でのカーリング女子の活躍は、ちょっとした社会現象となった。門外漢の食味エッセーとしてもイッチョ絡んでおきたい...そんな気持ちはよくわかる。

「彼女たちの試合を見続けていて、ずっと何だかよくわからぬ心地よさを感じていた...いまになってわかったことなのだが、それは"仲の良さ"ではないだろうか」

バラバラの具材が「小麦粉の説得と包容力」によってニコニコし始める不思議。ショージ君はたまらず日清「どん兵衛」を買いに走り、熱湯を注いで3分待つのだった。

冨永格(とみなが・ただし)
コラムニスト。1956年、静岡生まれ。朝日新聞で経済部デスク、ブリュッセル支局長、パリ支局長などを歴任、2007年から6年間「天声人語」を担当した。欧州駐在の特別編集委員を経て退職。朝日カルチャーセンター「文章教室」の監修講師を務める。趣味は料理と街歩き、スポーツカーの運転。6速MTのやんちゃロータス乗り。

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