2020年 10月 1日 (木)

脳性まひの子息を持つ経済学者が障害者問題を徹底分析

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経済学で考えて、気づいたこと

   著者曰く、経済学を活用することの利点は、

1. 誰の肩も持たないこと(有限な資源を効率的に配分することにのみ関心があり、常に中立であること)
2. 人を冷静にすること(善悪論にとらわれず、人間の行動の動機や社会の仕組みに着目すること)
3. 物事を一般化すること(障害者問題を特別視することなく、突き詰めて考え、問題を一般化することによって、他の社会問題との共通性に気づくこと)
4. 経済学の理想形たる「完全競争」との対比から障害者対策の非効率性を発見すること

だという。

   福祉や教育の関係者は、障害者であることの特殊性を一際認識しており、1~4の発想とは極めて縁遠い。したがって、障害児教育や障害者就労に関する本書の指摘は、新鮮であると同時に、手厳しく感じられるのではないだろうか。

   以下、評者が本書において、強く印象に残った指摘を2点、取り上げる。

(1) 障害児教育が果たす使命とは何か――就労支援はミッションなのか?――

   近年、東京都では、特別支援学校の高等部に、就労率100%を目指す課程の設置を進め、就労率9割以上という成果を挙げている。一見、望ましい取り組みにも見えるが、著者は、こうした風潮の中、障害児向けの受験塾が登場している現状を挙げ、公の教育機関として適切な姿なのかと批判する。 むしろ、本来の教育とは、神奈川県の県立高校で実施されているインクルーシブ教育(障害の有無にかかわらず同じ教育を受ける)のような取り組みではないかと指摘する。学校は、就職準備機関ではなく、子どもたちの可能性を引き出し、伸ばすものだという主張だ。

   特に、教員配置が手厚い特別支援学校は、生徒1人当たりの教育費が年額725万円と、普通校の7~8倍にもなっている。これほどのコストをかけている特別支援教育の場で、企業経験のない教員が慣れぬ就職支援を行うことは非効率だというのだ。

   専門高校などの存在を考えると、教育機関のミッションに就労支援は含まれていないと考えるのは早計であろうが、特別支援学校の使命を曖昧にしたまま、就労支援を行うことは、教員配置の在り方をはじめ、資源の効率的な配分という観点からは望ましくないであろう。

   加えて、障害者教育のみならず、高等教育全般において、就職や就労支援が大きなウェートを占めている日本の状況を顧みると、教育とは一体何なのか、どうあるべきなのかが問われているようにも思う。

【霞ヶ関官僚が読む本】現役の霞ヶ関官僚幹部らが交代で「本や資料をどう読むか」「読書を仕事にどう生かすのか」などを綴るひと味変わった書評コラムです。

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